2024.06.28
飛行ルール・法律
2024.10.09
「飛行レベル」は官民協議会が定めた、ドローンを社会実装するためのステップをレベル分けしたものになります。
官民協議会は「空の産業革命」の実現に向けて、小型無人機の利活用の促進や安全な飛行の施策を進めるため、幅広い関係者の知見を結集、官民の専門家・関係者が協議を行う場として2015年に設立されました。
年2〜3回実施され、その年ごとにドローン運用のためのロードマップの作成を行っています。2017年にこの飛行レベルを実現目標として取り入れた「空の産業革命に向けたロードマップ」が策定され、以後更新されています。
ロードマップ2021においてはレベル4を2022年度を目途に実現する目標が掲げられ、昨年2022年12月5日にレベル4飛行を可能にする「無人航空機操縦士技能証明」が誕生しました。
飛行レベル1とは「目視内での操縦飛行 」の形態をあらわします。
ドローンを操縦者自身の目から見える範囲内で手動操作を行う、一般的に普及しているドローンの飛行形態といえます。
主に映像コンテンツに使用される空撮、橋梁や送電線などのインフラ点検、農薬散布など比較的近距離内でドローンを飛ばすシーンがこのレベルに該当します。
飛行レベル2とは「目視内での自動飛行」の形態をあらわします。
ドローンを操縦者自身が目視でドローンの機体をとらえながら自動操縦する形態のことで、同じ飛行ルートで何度も操縦するなど、一定の規則に従って飛行する必要があるときに使用されます。
例えば、土木測量やソーラーパネルの設備点検などのシーンでレベル2の飛行が活用されます。
飛行レベル3とは「無人地帯における目視外飛行」の形態をあらわします。
住民や歩行者がいないエリアで、操縦者自身の目で見えない(目視外の)範囲まで操縦することで、基本的に補助者は配置しないことが前提となります。
ここでいう無人地帯とは、山、森林、離島など人や建物が少ないエリアが含まれます。飛行レベル3は、主に離島や山間部への荷物配送、大規模河川測量、被災地での救助などで活用されます。
飛行レベル4とは「有人地帯における目視外飛行」の形態をあらわします。
人口が集中し建物が多いエリアの上空を、補助者の配置をせずに自動操縦し、かつ目視外で飛行することを指します。今後は、都市の物流や警備、災害時の救助支援、都市部のインフラ点検などで活用できることが期待されています。
2015年4月に首相官邸上空で放射性物質を積んだドローンが発見される事件が発生し、この事件を機にドローンを普及させる上での安全策や有効活用の議論が本格化しました。
安全な運用ルールの策定とともに、空の産業革命の実現に向けた環境整備が進められていくことになります。
そして空の産業革命の実現に向けて、2016年に開催された官民協議会の中で「無人航空機の利活用と技術開発のロードマップ」案が示されました。
この中で、小型無人機の将来的な利用形態の本格化に必要となる技術開発や環境整備に向け、飛行技術に応じてレベル分けした分類が示されることになりました。
これらの「飛行レベル」は、どのようにして分類されているのかを解説していきます。まず、飛行レベルは大きく分けて、3つの項目によって分類されます。
危険度が低い順にレベル分けがされています。
2022年12月5日に航空法が改正され、これまで禁止とされていたレベル4飛行が解禁されました。
この改正では、レベル4飛行の実現に向けて機体認証制度と無人航空機操縦者技能証明等(国家ライセンス)が導入されました。
機体認証には「第一種機体認証」「第二種機体認証」の2種類があります。
第一種機体認証とは、立入管理措置を講ずることなく行う特定飛行を目的とした機体のことで、有効期限は1年です。
これは機体の安全性を認証する制度(自動車でいう車検に通った状態)です。
仮に国が定めた安全基準に達しない場合は国から整備命令があります。
第二種機体認証制度とは、立入管理措置を講じた上で行う特定飛行を目的とした機体のことで、有効期限は3年です。
国が試験(学科&実技)を実施し操縦者の技術を証明する制度「一等無人航空機操縦士」(以下、一等ライセンス)と「二等無人航空機操縦士」(以下、二等ライセンス)の2種類に区分されます。
試験内容は学科試験・実技試験・身体検査の3つに合格する必要があります。
ただし、国の登録を受けた登録講習機関が実施する講習を修了した場合は、実技試験の一部または全部が免除される優遇処置はあります。
レベル4を推進していく背景としては、ドローンの利活用、業界の発展のためとされています。
今後、さまざまな業界でドローンの新たな産業・サービスの創出や生活の質向上に期待がかかっているため、さらなる発展のためレベル4は解禁となりました。
また、民間資格を所持していても、操縦者の技術や知識が一定ではないことが課題としてありました。
国土交通省に掲載されているドローンスクールは1500校を越えていますが、実はそれ以外にも多くのドローンスクールが存在します。
それぞれのドローンスクールでのサービスや料金は異なるのにも関わらず、取得できる資格は「民間資格」と一括りにされてしまうことが多く、操縦者のスキルや知識量に差が出ているのが現状です。
そこで国は一定の基準を設けてそれをクリアした操縦者に対してライセンスを付与する方針にしました。
これらが操縦ライセンス制度開始の背景です。
レベル4飛行が解禁されたことによって、今まで禁止されていた有人地帯での補助者無しの自律操縦が可能となりました。
・都市部の物流
レベル4解禁により、一番大きく変化するといわれているのが物流です。
物流業界でのドローンの活用が進むことで配達時間の短縮や燃料費削減などの課題解決に貢献することができます。
ただ、ルール上は可能となりましたが、安全面などを考えると私たちの頭上をドローンが飛びかうのはまだ難しいのが現状です。
・インフラ点検
建設分野における労働力不足や建物やインフラの老朽化という課題に対してドローンを活用した点検作業が進んでおり、高所や橋梁点検などはドローンで短時間で点検が行えるということで注目を集めています。
第三者の立ち入り制限など、必要な対策を講じなければ人口集中区域でのドローン点検は行えませんでしたが、レベル4飛行によって工程が簡略化され、よりドローン点検が普及していくと思われます。
・災害時の救助活動
災害時に起こる問題の1つとして、交通の遮断や二次災害、あらゆるリスクによって被災者に必要な支援物資や医療の提供ができない点が挙げられます。
ただレベル4飛行であれば、無人操縦を行うドローンによって安全を確保しながら被災地の状況を確認したり、支援物資を届けることができます。
また、官民協議会は現在、空の移動革命に向けた「人の移動も可能にする」空飛ぶクルマを見据えた協議も進めています。
空飛ぶクルマの実用化に向けた「空の移動革命に向けたロードマップ」では、山間部など人の少ない地方におけるモノの移動から2023年を目標に事業化し、2030年代には地方における人の移動、都市における人の移動へと拡大していく方針を掲げています。
もしかすると近い将来、宅配サービスがドローンによって届けられたり、空飛ぶクルマが当たり前になる日が近いかもしれませんね。
それでは実際にレベル4飛行をするには何が必要なのでしょうか?
結論、「一等ライセンス(一等無人航空機操縦士)」と「型式認証」が必要です。
一等ライセンスは先ほども紹介した通り、国家資格の1つで、登録講習機関と呼ばれる国が認定したドローンスクールに行き、学科試験・実技試験・身体検査に合格することで取得できます。
型式認証はメーカーが国土交通省に申請する事になっています。
国土交通省が設計・製造過程の二つの観点からドローンの安全基準を判断し、その基準をクリアすると認証書が交付される流れです。
つまりレベル4飛行を行う最低限の条件として、一等ライセンスを取得して型式認証を完了させたドローンを飛行させる必要があります。
飛行レベルとは、ドローンを社会実装するためのステップをレベル分けしたもので、2022年12月5日にはレベル4飛行が解禁され、「機体認証制度」「技能証明制度(操縦ライセンス)」の導入が決定しました。
・レベル4導入の背景
ドローンを利活用した業界の発展と操縦者のスキルに基準を設けるためとされています。
・レベル4の可能性
物流、災害時、スポーツやエンタメなど様々な業界で今後ドローンが活用されることが予想されます
レベル4飛行解禁によってルール上は私たちの頭上をドローンが飛ぶこともできるようになりました。安全面などのハードルを乗り越えれば、ドローンが私たちの日常生活に溶け込むのもそう遠くはないかもしれませんね。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。