
2025.07.30
申請方法(DIPS)
2025.07.30
ドローンを飛行させるには、航空法に基づくリスク区分に応じた許可や承認が必要となる場合があります。
国土交通省のオンラインシステム「DIPS2.0」では、リスクを簡単に確認できる「簡易カテゴリー判定」機能が用意されており、飛行計画の段階において手続きの要否を判断するうえで非常に有効です。
本記事では、カテゴリーⅠ・Ⅱ・Ⅲの区分の違い、特定飛行や立入管理措置の考え方、係留飛行や補助者配置などのリスク緩和措置についても詳しく解説します。
さらに、簡易カテゴリー判定の実際の手順もまとめました。
ドローンの飛行前に必ず確認し、安全運用の基本をしっかり押さえましょう。
目次
DIPS2.0の簡易カテゴリー判定は、ドローンの飛行が航空法上どのリスク区分(カテゴリーⅠ・Ⅱ・Ⅲ)に該当するかを自動で判定する機能です。
ここでは、カテゴリー区分や特定飛行、立入管理措置について詳しく解説します。
ドローンの飛行リスクに応じて、航空法上で区分されるのは「カテゴリーI」「カテゴリーII」「カテゴリーIII」の3段階です。
カテゴリー区分は、許可・承認の要否や、講じるべき安全措置を判断する際の基準となります。
カテゴリーⅠは最もリスクが低く、飛行に許可や承認は不要です。たとえばDID(人口集中地区)外で日中に目視内飛行を行い、第三者や物件から十分な距離(30m以上)を確保している場合が該当します。
カテゴリーⅡは中程度のリスクをともないます。原則「特定飛行」に該当しますが、立入管理措置を講じることでリスクを低減して飛行させる点が特徴です。
カテゴリーⅡは細分化されており、リスクに応じて、ⅡAまたはⅡBに分類されます。
ⅡAの場合は個別審査が必要ですが、ⅡBは手続きが簡略化されています。
ただ、共に添付資料の具備は申請者自身で行わなければならないため、注意が必要です。
カテゴリーⅢは最もリスクが高く、該当するのは立入管理措置を講じないまま第三者の上空を飛行するようなケースです。
この場合は、第一種機体認証と一等無人航空機操縦士の技能証明が必要で、国の厳格な審査を受けなければなりません。
特定飛行とは、航空法第132条の85で定められた、高リスクと判断される飛行です。飛行する「空域」と「方法」により分類され、いずれかに該当すれば、原則として国の許可や承認が必要になります。
上記の空域を飛行する場合は、必ず飛行許可申請を行いましょう。
また、夜間飛行、視外飛行を行う場合、人や物件との距離が30m未満になる場合、イベント会場の上空を飛行する場合、危険物輸送や物件投下も特定飛行に該当します。
特定飛行の該当有無は、DIPS2.0の簡易判定機能で確認できますが、実際には飛行場所の地理的条件や詳細な運用方法に基づいた確認が必要です。
立入管理措置とは、特定飛行のうちカテゴリーⅡに分類される飛行において、地上にいる第三者がドローンの飛行経路下に立ち入らないよう管理するための安全対策です。
人命や財産を保護し、リスクを軽減するために特定飛行を行う際には必須の措置とされています。
立入管理措置には、柵やコーンで立ち入り禁止区画を設けたり、補助者を配置して周囲を警戒・誘導したりする方法などがあります。「立入管理区画」を設定すれば、一定の安全性を確保できるでしょう。
なお「土地がすでにフェンスで囲まれている」「第三者の立ち入りが常時制限されている」といった場合には、それ自体が立入管理措置となり、別途対策が不要となるケースもあります。
また、機体認証機や技能証明保有者による飛行では、一定条件下で立入管理措置を部分的に緩和できる「レベル3.5飛行」も認められています。
このように、立入管理措置の有無は、カテゴリーⅡとⅢの分岐点であり、飛行リスクに直結する非常に重要な要素といえるでしょう。
DIPS2.0では、簡単な質問に答えるだけで飛行のカテゴリーを判定できます。
ここでは簡易カテゴリー判定のやり方について、詳しく見ていきましょう。
DIPS2.0を利用するには、アカウントを作成し、ログインしたうえで、内容に応じて本人確認を行い、様々な手続きを行います。
個人と法人や団体では、アカウント作成に必要な情報が異なります。
ログインは、「DIPS ID・パスワードの入力」で行います。
ログイン後、DIPS2.0の飛行許可・承認メインメニューから簡易カテゴリー判定を開始します。
この判定はあくまでシミュレーション機能で、判定するだけでは申請にはなりません。
DIPS2.0にログイン後、ポータルメニューの中央にある「飛行許可・承認申請」枠内から「簡易カテゴリー判定」ボタンを選択しましょう。
クリックすると「簡易カテゴリー判定を開始します」といったガイダンスが表示され、質問フォームへと進みます。
この時点では正式な申請は行われておらず、内容も保存されません。
許可申請に進む前の、リスク区分の把握と事前準備のための確認手段です。
判定ではまず、飛行場所や方法が、航空法で定める特定飛行に該当するかどうかを確認します。
「はい」「いいえ」で答える形式です。
質問の前半では、空港周辺・DID(人口集中地区)や高度150m以上の空域など、飛行場所の確認が行われます。
続いて「夜間飛行や目視外飛行への該当」「人や物件との距離」といった飛行方法に関する質問が表示されるため、回答を進めましょう。
回答内容によって特定飛行に該当する場合は、カテゴリーⅡ以上と判定されます。
すべて「いいえ」と回答した場合のみ、カテゴリーⅠと判定されるため手続きは不要です。
特定飛行に該当した場合は、リスクを低減するための安全措置について確認されます。中でも「立入管理措置」を講じるかが最重要ポイントです。
DIPS2.0では「立入管理措置を講じるか?」といった質問が表示されます。
ここで「はい」と答えるとカテゴリーⅡ、それ以外はカテゴリーⅢと判定されるため、正確に回答しましょう。
加えて「機体認証」や「技能証明」の有無など、さらなる安全対策の有無により、ⅡA・ⅡBに分類されます。
補助者の配置は、第三者が飛行範囲に立ち入らないよう監視や誘導を行う人的措置です。
たとえば飛行エリアの周辺に補助者を立たせ、無線などで操縦者と連携しながら、歩行者の接近を警告、誘導することが該当します。
特にイベント会場や公園など、不特定多数が通行する場所での飛行において特に重要です。
「立入禁止区画の設置」はイベント上空飛行での物理的な安全対策として、ロープやコーンなどで第三者の立ち入りを防ぎ、明確な区画を設ける方法です。
「この範囲はドローン飛行中につき立入禁止」といった表示を掲げ、明示的にエリアを区切ることで、立入管理措置の実効性が高まります。
補助者や物理的措置を組み合わせた管理区域を「立入管理区画」と呼びます。
この設定は、カテゴリーⅡ飛行を行う際の必須要件であり、実施状況は許可申請時の審査でも重要視される項目です。
立入管理区画を設ける方法が不十分な場合は、許可が下りないケースもあります。
「レベル3飛行」とは、広範囲の無人地帯を補助者なしで自動で飛行させることをいいます。立入管理措置を講じて第三者上空を避ける飛行形態です。
この飛行には、道路上空の一時的な通行止めなども含まれます。
レベル3飛行では、飛行エリア全体に立入管理措置を講じて第三者が通行しないよう、確実な制御が必要です。
第三者上空飛行を避け、カテゴリーⅢではなくカテゴリーⅡとして飛行が認められます。
「レベル3.5飛行」とは、機体認証機や技能証明を組み合わせ、立入管理措置の一部を緩和した飛行形態です。
たとえば、一定の安全性を満たした認証済み機体を用い、事前に航空局と調整された計画に基づくことで、立入管理措置の一部が緩和される場合があります。
ただし、完全に不要になるわけではなく、一時的な歩行者制限などは引き続き必要です。
移動中の乗り物上空の飛行ができることが大きなメリットです。
係留飛行は、強度のあるワイヤーなどで機体を繋ぎ、飛行範囲を物理的に制限する方法です。
DIPS2.0で「係留装置を用いて飛行しますか?」に対して「はい」と回答した場合、一部の特定飛行において許可や承認が不要となります。
ただし、危険物輸送など、すべての手続きが免除されるわけではありません。また、係留していても、関係者以外の立ち入り制限を行うなど、安全対策は必須です。
カテゴリーⅡ飛行においては、リスクに応じて、ⅡAとⅡBの判定が分かれる点も覚えておきましょう。
国が認証した機体(第一種・第二種機体認証)を使用し、かつ有資格者(無人航空機操縦者技能証明を取得している人)が飛行させる場合は、包括申請が不要となるカテゴリーⅡBと判定されます。
いずれかが欠けている場合は、通常のカテゴリーⅡB又はⅡAとなり、事前に飛行許可・承認申請が必要です。
飛行させるドローンの最大離陸重量が25kgを超えるかどうかで、安全基準や申請要件が大きく異なります。
25kg以上の場合、安全上のリスクが高いため、飛行許可・承認の申請難易度も高くなります。具備資料や入力内容も通常の申請より煩雑になります。
また、25kg以上の飛行許可・承認申請では第三者損害賠償責任保険の加入も必須となります。
すべての質問に回答すると、画面上にカテゴリー判定の結果が表示され、飛行に必要な手続きの有無を明確にできます。
カテゴリーⅠの場合、「申請不要」と案内され、基本ルールの遵守が促されます。
カテゴリーⅡAまたはⅡBと判定された場合は「許可・承認が必要」と表示され「この内容で申請に進む」ボタンから申請手続きを進めることが可能です。ⅡBと判定された場合でも、国が認証した機体(第一種・第二種機体認証)を使用し、かつ有資格者(無人航空機操縦者技能証明を取得している人)が飛行させる場合は許可・承認は不要です。
カテゴリーⅢと判定された場合は、機体・操縦者の要件や運航管理体制など、厳格な条件が表示されます。
この判定結果は、あくまで簡易的な目安であり、最終的な責任は操縦者側にある点を意識しておきましょう。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
YouTubeで日々ドローン法務に関する情報を発信中!「ドローン教育チャンネル」はこちら