
2025.08.19
飛行許可(エリア・シーン別)
2025.08.19
ドローンの利用が拡大する中で、空の安全を守るためのルールも年々厳格化されています。
中でも重要なのが「ドローンの飛行計画の通報」です。
2022年12月の航空法改正により、国土交通省が定める「特定飛行」に該当する場合には、義務とされていた飛行前に計画を通報することに罰則が追加されました。
これは、事故の防止や空域の混雑回避を目的とした、安全運航のための重要なステップです。
飛行計画の通報は、単なる手続きではありません。
正確な機体情報や操縦者情報、飛行ルートなどを事前に登録し、ほかの飛行者とのバッティングを避けることで、トラブルを未然に防ぐ役割を果たしています。
この記事では、飛行計画通報の背景や必要性、通報が必要なケース、実際の通報手順、注意点についてまとめました。
目次
ドローンの飛行計画とは、「いつ」「どこで」「誰が」「どんな目的で」「どのように」ドローンを飛ばすかを明確にした計画書です。
安全な運航の基礎となる重要な要素であり、トラブルの予防や準備状況の確認にも役立ちます。
飛行計画は単なるスケジュールではなく、ほかの運航者との飛行空域の調整や衝突リスクの回避にも役立つ重要な情報共有ツールです。
特に近年、空撮・測量・インフラ点検などドローンの利用目的が多様化している中で、飛行計画通報の重要性はますます高まっています。
飛行計画の通報は、リスク管理と責任ある運用の第一歩であり、操縦者自身の理解を深め、安全かつ安心してドローンを活用するために欠かせない要素です。
2022年12月の航空法改正により、特定飛行を行う際はドローンの飛行計画を事前に通報しなければ法律で罰せられることになりました。
この変更により、ドローンを飛ばす際には「通報しなければいけないかどうか」を明確に判断する必要があります。
ここでは、義務化の対象となるケースや制度の背景、そして通報制度が持つ意義について詳しく見ていきましょう。
飛行計画の通報義務が発生するのは、「特定飛行」に該当する場合です。
特定飛行とは、航空法で飛行許可申請が必要な安全上の配慮が特に求められる飛行のことで、具体的には次のような空域や飛行方法が該当します。
まず、空域に関するものとしては以下のような場所での飛行です。
また、飛行方法に関する特定飛行には以下のようなものがあります。
いずれかに該当する飛行を行う場合は、必ず事前に飛行計画を通報しなければなりません。
逆にいえば、該当しない場合は飛行計画の通報は不要です。
ただし、義務はなくとも、任意で通報することが推奨されています。
ドローンの飛行計画の通報が義務化された背景には、ドローンの急速な普及と、それにともなう空の安全性への懸念があります。
産業用途や趣味でのドローン利用が広がる一方で、空域の衝突リスクも増大し、具体的には次のような問題が顕在化していました。
こうした背景から、飛行情報を一元的に管理・共有する仕組みとして「飛行計画の通報制度」と、それを支えるオンラインプラットフォーム「DIPS 2.0」が整備されました。
これは規制強化という側面だけでなく、ドローンという新しい空の産業を安全かつ円滑に発展させるための基盤整備でもあります。
飛行計画通報制度の目的は、単なる義務化ではなく、以下のような具体的な安全性と利便性の向上を実現することにあります。
まず挙げられるのが、空域の有効活用です。
飛行計画がDIPS2.0の地図上で可視化されることで、同一空域で複数の計画がある場合にも、運航者同士の調整が容易になります。
イベントや工事現場などで多数の機体が飛ぶ場合でも、安全管理がしやすくなるでしょう。
次に、事故発生時の迅速な対応が挙げられます。
万が一事故やトラブルが発生した際、通報された計画情報をもとに、関係機関が即座に特定し、救助・報告対応にあたることが可能です。
このように、飛行計画の通報は単なる形式的な義務ではなく、安全で持続可能なドローン運用を支える実践的な制度といえるでしょう。
DIPS 2.0を使って飛行計画を通報する際には、入力すべき情報が多岐にわたります。
これらは「機体」「操縦者」「飛行の詳細」に大別され、各項目が相互に関連しながら、飛行の安全性と正当性を担保する構成です。
特に「特定飛行」を行う場合は、許可の有無や安全対策の内容など、詳細かつ正確な情報が求められるため、事前準備が欠かせません。
ここではDIPS 2.0での入力項目を体系的に整理し、それぞれの役割とポイントを解説します。
機体の基本情報は、まず製造者・型式/名称・登録記号等、事前に機体登録をしましょう。
機体登録をしていないドローンの通報は認められていません。
また、特定飛行を行う場合は事前に飛行許可を取得しておかなければいけません。
操縦者の個人情報では、まず氏名・住所などの操縦者の基本情報を正確に登録します。
無人航空機操縦者技能証明を取得している場合は、技能証明書番号の入力も忘れないようにしましょう。
特定飛行を行うには、原則として飛行許可申請が必要です。
一部の特定飛行では、第二種以上の機体認証を受けた機体を二等以上の無人航空機操縦者技能証明(適切な限定変更を取得している場合に限る)を取得した操縦者が飛行させる場合は、飛行許可申請は不要です。
飛行計画では、細かな内容の入力が必要です。
DIPS 2.0の地図上で、飛行ルートを線(経路)や多角形(範囲)で描画します。
作図しやすい図形を選択しましょう。
地図上には、空港等周辺や人口集中地区(DID)、災害発生時の緊急用務空域などが色分け表示され、自動的に確認できます。
禁止空域で飛行するには、別途飛行許可が必要です。
自分で分かりやすいように任意の名前を設定します。
複数の計画を管理する際に便利です。飛行計画の名称は他の利用者には公開されません。
特定飛行に該当し、事前に国土交通省から飛行許可を取得している場合は、その番号を選択又は手動で入力します。
これがないと通報が完了しない場合があるため、注意しましょう。
以前に飛行許可を取得した際に作成・保存しておいた飛行経路を再利用する場合、その保存名称を指定します。
定期的な業務で同じ経路を使う場合に便利です。
DIPS 2.0に事前登録しておいた機体リストの中から、今回使用する機体を選択します。
複数の機体を事前登録している場合は、飛行させる機体を間違えないようにしましょう。
機体情報の設定と同様に、登録済みの操縦者から選択します。
第三者に委託する場合や複数の操縦者がいる場合にも対応可能です。
「空撮」「測量」「設備メンテナンス」「農林水産業」「輸送・宅配」などから選択します。
人口集中地区(DID)上空や150m以上の高高度、空港等周辺など、該当する空域種別を選択します。
DIPS 2.0では、該当する場所に応じて自動で補助表示が出る場合もあります。
「夜間飛行」「目視外飛行」「物件投下」「危険物輸送」「人・家屋等から30m未満」「催し場所上空」など、特定飛行に該当する方法をチェック形式で選びます。
複数選択も可能です。
加入している賠償責任保険の会社名、商品名、保証金額を記載します。
任意項目ではあるものの、事故リスクを考慮すると保険加入は実質的な必須です。
第三者が飛行エリアに侵入しないようにする措置について入力します。
たとえば「立入管理区画の設定」「補助者1名」といった具体的な内容が必要です。
飛行の開始地点と終了地点を、地名または固有名称で記入します。
飛行開始日時と終了日時を正確に入力します。
天候の急変や予備日の設定を考慮し、少し余裕を持たせた計画にするのが現実的です。
最大速度(km/h)と、最大飛行高度(m)を入力します。
地表から150m以上の飛行には原則として飛行許可申請が必要になるため、要注意です。
事故や機体トラブルが発生した場合に、即時対応できる電話番号を入力します。
携帯番号などが好ましいです。
すべての入力内容を確認後、「登録」ボタンを押すことで通報が完了します。
不備がある場合は通報ができず、修正が必要です。
DIPS 2.0(ドローン情報基盤システム2.0)は、ドローンの飛行計画をオンラインで通報するための公式プラットフォームです。
通報作業は5つのステップで構成されており、指示にしたがって順番に情報を入力していけば、特別な知識がなくても通報を完了できます。
まずはDIPS 2.0の公式サイトにアクセスし、ログインしましょう。
ログイン後、トップページのメニューから「飛行計画の登録」をクリックします。
この段階では、まだ具体的な飛行内容は入力しません。
「新規登録」のボタンを押すことで、登録フォームへの入力が始まります。
なお、特定飛行を行う場合は、事前に飛行許可申請を行っておかなければいけません。
「飛行許可」に関する情報の入力です。
特定飛行に該当し、すでに許可を得ている場合は、その飛行許可番号をここで選択または入力します。
飛行許可をまだ取得していない場合は、飛行許可なしで飛行計画を通報しましょう。
この場合でも、飛行方法や空域に応じた制限を遵守することが求められます。
このステップでは、「通報は許可申請とは別である」という制度の構造を理解することも大切です。
飛行計画情報では、画面の指示にしたがって以下の内容を順番に入力します。
入力欄は順番に案内される形式になっており、画面にしたがって一つずつ進めば迷うことはありません。
飛行経路や飛行範囲は、地図上で直接描画する形で指定します。
画面に表示される地図ツールを使い、次のいずれかの方法で範囲を設定しましょう。
このとき、禁止空域(空港、DIDなど)は自動的に色分け表示されるため、重複しないように飛行ルートを調整することも可能です。
複雑な経路や長距離飛行の場合は、計画を複数に分けて登録するのも有効となります。
なお、禁止空域にかかる場合は、事前の飛行許可が必要となる点に注意しましょう。
すべての情報を入力・設定した後は、「登録」を押します。
以下のようなチェックポイントを押さえて、誤りや漏れがないかを慎重に確認しましょう。
問題がなければ「登録」ボタンをクリックし、飛行計画の通報が完了します。
登録後には、通報内容の確認や変更、削除、複製などもDIPS 2.0の管理画面から行うことが可能です。
飛行計画の通報は、ただ手続きを済ませればよいというものではありません。
制度を有効に機能させ、安全な空域を実現するには、運航者が「何を守るべきか」を正しく理解しておく必要があります。
ここでは、特に重要な3つの注意点を見ていきましょう。
飛行前には、自分の計画がすでに登録されているほかの飛行計画と時間帯・空域で重複していないかを確認しましょう。
DIPS 2.0では、ほかの運航者の飛行計画が地図上で表示されるため、事前に重複をチェックできます。
仮に同一空域・同時間帯に複数のドローンが飛行する場合、衝突や干渉のリスクは避けられません。
必要に応じて計画の変更やほかの運航者との連絡調整も検討しましょう。
特にイベント会場やインフラ点検エリアなどでは、複数の事業者が同時期に飛行を予定しているケースもあり、事前確認は不可欠です。
通報した飛行計画は、その内容通りに実施することが前提です。
時間・場所・高度・飛行方法などを逸脱した飛行は、制度上も安全管理上も問題となりえます。
仮に小さな変更であっても、原則として通報内容に沿った飛行を行わなければなりません。
たとえば、通報では「午前9時〜10時に飛行」としていたにもかかわらず、実際には午後から飛行を始めた場合、それだけでも逸脱と見なされます。
もちろん、急な天候の悪化などやむを得ない事情がある場合もありますが、基本的には計画の厳守が必要です。
もし、通報済みの飛行計画に変更が生じた場合は、必ず飛行前にDIPS 2.0上で修正手続きを行いましょう。
飛行開始後や終了後に修正することはできず、事後対応では法的にも無効と見なされます。
変更手続きはDIPS 2.0の管理画面から簡単に行うことができ、日時・経路・飛行目的なども柔軟に修正可能です。
特に撮影予定の遅延や、天候判断による日程調整などは実務上よくあることなので、「変更がある=通報の修正が必要」という意識を常に持っておくことが求められます。
変更を怠ったまま飛行した場合、違反と判断される可能性もあります。
安全運航だけでなく、法令遵守の観点からも、計画内容のアップデートを忘れないよう注意しましょう。
ここでは、ドローンの飛行計画の通報に関するよくある質問をご紹介します。
法律上、通報の期限は「飛行開始前まで」とされていますが、具体的な締切時間は定められていません。
そのため、極端にいえば飛行直前の通報でも理論上は可能です。
しかし、DIPS 2.0のシステムメンテナンスやサーバー負荷、入力ミスなどによって通報が間に合わないリスクもあるため、実務上は1~3日前までに通報を完了しておくことが強く推奨されます。
ただし、飛行禁止空域における飛行や、飛行の方法によらない飛行を行う場合、飛行予定日の10開庁日前までに飛行許可申請が必要です。
DIPS 2.0でのオンライン入力が基本であるため、紙ベースのテンプレートは存在しません。
すべての通報は、DIPS 2.0上のフォームに沿って行う形式となります。
ただし、DIPS 2.0が使えない状況(システム障害など)では、個別対応を依頼することが可能です。
その場合でも、通報に準じた情報の整理が求められるため、DIPS 2.0の入力項目に準じて自分で簡易的なメモを用意しておくとスムーズでしょう。
実際の飛行計画通報の動画を作成していますので、こちらも参考にしてください。
1.飛行計画通報手順動画
2.飛行計画通報手順動画(第二種機体認証機)
DIPS 2.0のアカウントを持っていれば、ほかの運航者が登録した飛行計画の概要を地図上で確認できます。
計画の詳細(操縦者名や機体情報など)は非公開ですが、飛行エリア、高度や時間帯は表示されるため、重複の確認や事前調整に活用できます。
この機能を使えば、同一空域に複数の飛行が集中する状況を事前に把握できるため、衝突リスクを避けるための計画変更や調整連絡にもつながるでしょう。
事故が発生した場合には、以下の2点の対応が法律で義務づけられています。
報告を怠ると法令違反となるだけでなく、事故対応の遅れや社会的な信頼喪失につながるため、緊急時の連絡手順や体制を事前に整えておくことが非常に重要です。
飛行計画の通報と飛行許可申請はまったく別の手続きです。
たとえば「人口集中地区での夜間飛行」を行う場合は、原則として飛行許可の取得 + 飛行計画の通報の両方が必要です。
片方だけでは合法な飛行とは認められません。
ドローンの飛行計画通報は、制度自体は明確でも、実際に運用しようとすると多くの確認事項や手続き上の判断が必要となる場面があります。
特に業務としてドローンを活用する事業者にとっては、安全性・法令遵守・作業効率のすべてを満たす運用体制が求められます。
そうした中で頼れる存在となるのが、ドローン法務に精通した専門家です。
バウンダリ行政書士法人では、航空法やDIPS 2.0の制度理解はもちろん、飛行許可申請から飛行計画の通報、運用まで、実務に即したトータルサポートを提供しています。
上記に該当する場合は、サポートを受けることでスムーズに手続きを進められるでしょう。
飛行計画の通報を確実に行いたい方は、ぜひ一度お問い合わせください。
ドローンの飛行計画通報は、単なる制度上の義務ではなく、安全で円滑な空の運用を支える重要な仕組みです。
特定飛行に該当する場合は通報が法律で義務づけられており、違反すれば罰則の対象となることもあります。
しかし、正しい知識と手順さえ身につければ、誰でもスムーズに手続きができるよう設計されているため、難しいことはほとんどありません。
飛行計画の通報は、ドローンを「安全に」「合法的に」飛行させるための第一歩です。
空撮や測量、点検など、ドローンの可能性を安心して広げていくためにも、通報が必要なケースでは忘れず、余裕を持って手続きを行いましょう。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
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