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ドローンで夜間飛行する際に気をつけるべき点は?申請の手続きも解説

2025.10.21

ドローンで夜間飛行する際に気をつけるべき点は?申請の手続きも解説

「ドローンで夜景を撮りたいけど、何から準備すればいい?」
「夜間飛行の許可申請って、難しそう…」

ドローンの夜間飛行に憧れや必要性を感じつつも、その手続きの複雑さに悩むことがあるかもしれません。

夜間飛行には厳しいルールがありますが、正しい手順とポイントさえ押さえれば、誰でも安全に許可を取得することが可能です。

本記事では、国土交通省が定める「9つの必須ポイント」を軸に、夜間飛行の準備から申請、練習方法までを分かりやすく解説します。

よくある質問もまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. ドローンの夜間飛行とは?
  2. ドローンの夜間飛行を実施するため必要な9つのポイント
    2-1. 基本的な操縦技術が身に付いている
    2-2. 夜間飛行の技術が身に付いている
    2-3. ドローンの飛行時は一定の距離内に人を立ち入らせない
    2-4. 機体の向きや位置を把握できる灯火を設置する
    2-5. 目視外飛行はしない
    2-6. 離着陸地点に照明を設置する
    2-7. ドローンについて理解している補助者を配置する
    2-8. 明るいうちに場所の下調べをする
  3. ドローンを使って夜間飛行する際の申請方法
    3-1. 包括申請と個別申請について
    3-2. 標準マニュアルと独自マニュアルについて
  4. ドローンを使って夜間飛行をするための練習法
    4-1. 四方と天井が囲まれた場所で練習する
    4-2. 制御機能をOFFにして操縦する
    4-3. ドローンスクールで練習する
  5. ドローンの夜間飛行でよくある質問
    5-1. 100g未満のドローンは自由に飛ばしてもよい?
    5-2. 夜間飛行でも許可申請が不要な場合はある?
  6. ドローンの夜間飛行に関する疑問や悩みはバウンダリ行政書士法人へ
  7. ドローンを夜間飛行させる際は必要なポイントを必ず押さえておきましょう

1. ドローンの夜間飛行とは?

機体の重量が100g以上のドローンの夜間飛行は、航空法により「特定飛行」として規制されており、事前許可なしでの夜間飛行は禁止されています。

これは、夜間環境では機体の視認性が著しく低下し、搭載カメラの映像も鮮明でなくなるため、正確な距離感や位置の把握が難しくなるからです。

さらに、暗闇では障害物センサーが正常に機能せず、操縦の難易度も上がり、それだけ高い技術が求められるからでもあります。

万が一夜間飛行の飛行許可を取得せず航空法に違反した場合、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
ただし、自宅の室内などの屋内空間は航空法の対象外です。

2. ドローンの夜間飛行を実施するため必要な9つのポイント

夜間飛行を安全に実施するためには、昼間の飛行よりも厳しい条件を満たす必要があります。

ここでは、9つの重要なポイントを詳しく見ていきましょう。

2-1. 基本的な操縦技術が身に付いている

夜間飛行の前提として、国土交通省が定める基本操縦技量の習得が必須です。

具体的には、経験豊富な指導者の監督下で10時間以上の飛行訓練を実施し、以下の技術を確実に身に付ける必要があります。

まず「離着陸」では、操縦者から3m離れた地点で高度3mまで上昇し、指定エリアへの着陸を連続で5回成功させる技術が求められます。

「ホバリング」では、操縦者の目線の高さで半径1m以内に一定時間滞空する技量が必要です。

続いて「移動飛行」については、前後左右それぞれ20m離れた地点への正確な移動と着陸を連続5回実行できることが条件となります。

最後に「水平面内での飛行」では、一定の高さを保持しながら、指定された複数の地点を移動する飛行を連続で5回実行する技術が求められます。

夜間飛行の安全を確保するためには、こうした基本的な操縦技術が欠かせません。

詳細は飛行マニュアルにも記載されています。

2-2. 夜間飛行の技術が身に付いている

基本操縦の技量に加えて、夜間特有の飛行技術も習得する必要があります。

まず「対面飛行」では、機体が操縦者の方向を向いた状態で、前後左右の移動や水平面での飛行を正確に実行できる能力が必要です。

次に「複合飛行」では、操縦者から10m離れた地点を起点に、水平移動と上昇・下降を同時に組み合わせた飛行を連続で5回安定して実施する技量が求められます。

最後に「8の字飛行」では、決められた経路での精密な飛行制御能力を証明するため、8の字パターンでの飛行を連続5回で成功させるスキルが必要です。

こちらも詳細が飛行マニュアルに記載されています。

2-3. ドローンの飛行時は一定の距離内に人を立ち入らせない

夜間飛行では、万が一の落下に備え、第三者の立ち入りを制限する「立入管理措置」を行う必要があります。

この範囲は、風速などの気象条件も考慮して安全を確保できる範囲として個別に設定しますが、目安として「飛行高度と同じ距離」を半径とする円が用いられることがあります。

たとえば、高度30mで飛行する場合、機体直下を中心とした半径30m(直径60m)の円形エリアが、立入管理措置を行う範囲の目安です。

この規制により、人通りの多い市街地や人口集中地区(DID)での夜間飛行は実質的に難しくなるでしょう。

通行人や住民の動線を完全に管理することは現実的ではなく、特に夜間は人の動きが予測しづらいためです。

包括申請で人口集中地区(DID)での夜間飛行ができないことについては、航空局標準飛行マニュアル02にも記載されています。

したがって、夜間飛行を安全に実施するためには、人里離れた場所や確実な立ち入り制限措置の実施が前提条件となります。

ただし、適切な安全対策を行い、個別申請を行えば、人口集中地区(DID)での夜間飛行の許可を取得することも可能です。

2-4. 機体の向きや位置を把握できる灯火を設置する

夜間飛行の際は機体の視認性が著しく低下するため、操縦者が常に機体の向きを把握できるよう、前後を区別する色分けされたライト(灯火)の装備が必要です。

多くの市販ドローンには、このライトの装備がありますが、装備されていないドローンもあるため、注意が必要です。

ただし、飛行エリア全体が照明設備によって十分に明るく照らされている環境では、機体自体の灯火装備は必須ではありません。

この場合でも、機体の向きや位置が明確に視認できることが前提条件となります。

2-5. 目視外飛行はしない

飛行許可申請時の添付書類である航空局標準飛行マニュアルでは、夜間飛行中の目視外飛行は厳格に禁止されています。

目視外飛行とは、操縦者が肉眼で機体を確認できない状態での飛行を指し、これにはモニター画面やゴーグル(FPV)の映像のみを頼りにした操縦も含まれているのです。

機体搭載カメラの映像確認は補助的な用途に限定されており、バッテリー残量や飛行高度等の確認程度は目視として認められますが、映像を主体とした飛行制御は目視外となり禁止です。

操縦者は常に機体を直接視認しながら、位置や状態を把握した状態での操縦が求められます。

ただし、適切な安全対策を行い、個別申請を行えば、夜間飛行中の目視外飛行の許可を取得して飛行させることも可能です。

2-6. 離着陸地点に照明を設置する

夜間飛行では、安全な離着陸を確保するため、離着陸地点への十分な照明設備の設置が必要です。

機体に装備した灯火だけでは、着陸予定地や周辺状況の把握が難しく、思わぬ事故につながる危険があります。

照明設備に特定の機材指定はありませんが、車両のヘッドライトや撮影用照明機材など、離着陸エリア全体を明るく照らせる外部照明の準備が求められます。

ただし、照明の設置にあたっては近隣住民への光害や迷惑を避ける配慮も重要です。

適切な照明角度や遮光対策を講じることで、安全確保と周辺環境への配慮を両立させる必要があります。

2-7. ドローンについて理解している補助者を配置する

ドローンの特性を熟知した補助者の配置は、夜間飛行の安全確保において不可欠です。

補助者は単なる監視役ではなく、機体の飛行性能や操縦特性に対する深い理解を持つ必要があります。

飛行エリアの規模に応じて複数名の配置が求められ、第三者の立ち入り監視や操縦者に対する適切な助言が補助者の役割です。

なお、「夜間」の定義は日没から日の出までとされ、その正確な時刻は地域・季節により大きく変動します。

特に、日照時間の短い冬季や夕方からの作業では、予定が夜間におよぶ可能性を考慮した事前申請が重要となります。

夜間飛行の許可を取得しない場合は、操縦者は国立天文台の公式サイトやスマートフォンのアプリを活用し、飛行予定日の正確な日没時刻を事前に確認しておきましょう。

2-8. 明るいうちに場所の下調べをする

夜間飛行を実施する前は、日中に現場を詳しく調査する必要があります。

暗闇では判別が難しい地形の起伏や障害物の存在を、明るい時間帯に確認しておきましょう。

特に注意すべきは、夜間に視認がきわめて困難になる細い電線や木の枝、架線などです。

これらは日中でも見落としやすく、夜間では発見がほぼ不可能になります。

また、周辺に住宅があるか、第三者に立ち入りされやすいかなどもあらかじめ確認してください。

この下調べを怠ると、夜間飛行時に予期せぬ障害物との接触や墜落事故につながる危険性が増加します。

3. ドローンを使って夜間飛行する際の申請方法

夜間飛行の許可申請は、ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)を通じたオンライン手続きが推奨されています。

申請には「飛行許可申請書」と「飛行マニュアル」の2つの書類が必須で、審査要領に基づいて許可の可否が判断されます。

ここでは、それぞれの書類について詳しく見ていきましょう。

3-1. 包括申請と個別申請について

夜間飛行の申請には「包括申請」と「個別申請」の2つの方式があり、用途に応じて選択可能です。

包括申請は、同一申請者が最大1年間にわたって継続的に夜間飛行を実施する場合の手続きで、全国を対象範囲とした申請が可能です。

一方、個別申請は特定の日(時)・場所での単発的な夜間飛行に使用され、申請書には詳細な情報記載が求められます。

具体的には以下の5項目を明記する必要があります。

  • 飛行日(時)
  • 飛行場所
  • 夜間飛行実施エリアの範囲設定
  • 補助者の配置計画
  • 安全対策の具体的内容

審査期間を考慮し、飛行予定日の2〜3週間前までには書類を提出するようにしましょう。
また、夜間飛行の訓練の累計時間の記載も必要になります。

ドローンの包括申請について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

3-2. 標準マニュアルと独自マニュアルについて

夜間飛行の申請には、国土交通省の「標準飛行マニュアル」または自作の「独自飛行マニュアル」のいずれかが必要です。

標準飛行マニュアルは国が複数のパターンを用意した定型的なマニュアルで、独自作成の手間なく申請に活用できます。

ただし、標準マ飛行ニュアルには人口集中地区(DID)での夜間飛行の禁止や、夜間中の目視外飛行の禁止などが含まれています。

こうした制限のない飛行を実施したい場合は、独自マニュアルの作成が必要です。

独自マニュアルを作成することで柔軟な飛行が可能になりますが、専門知識が必要なため個人での作成は難しいでしょう。

初回申請の場合は、ドローンに詳しい行政書士へ相談することをおすすめします。

4. ドローンを使って夜間飛行をするための練習法

夜間での飛行は周囲が暗く視認性が著しく下がるため、十分な練習を積む必要があります。

ここでは、安全かつ効率的な練習法を3つまとめました。

4-1. 四方と天井が囲まれた場所で練習する

夜間飛行の練習は、四方と天井が完全に囲まれた屋内環境でのみ実施可能です。

練習場所は必ずしも建物内である必要はなく、ネットで四方と天井が囲まれたゴルフ練習場のように屋内扱いされる施設であれば利用できます。

効果的な練習のため、照明を段階的に暗くして実際の夜間環境を再現し、機体に搭載された灯火のみを頼りとした操縦技術を習得しましょう。

機体メーカーや機種により、灯火の色彩・明度・配置パターンが異なるため、使用予定機の灯火特性を十分に把握することが重要です。

最終的には、灯火の色と位置のみで機体の向きや動きを正確に判断できるレベルまで、技術を向上させる必要があります。

4-2. 制御機能をOFFにして操縦する

夜間環境での制御機能の不安定化に備えて、GPSなどの自動制御機能を無効にした手動操縦を練習しましょう。

夜間ではGPS受信精度やビジョンポジショニング、障害物検知センサーなどが不安定になり、機体の制御や高度維持が困難になります。

練習では意図的にGPS機能やセンサーを無効化したうえで、不安定な制御環境での操縦技術を習得しましょう。

機体の設定変更ができない場合は、トイドローンなど元々不安定な特性を持つ機体での代替練習も有効です。

不安定な状態で離着陸・ホバリング維持・前後左右の移動・8の字・スクエア飛行などの基本動作を練習することで、夜間飛行時の予期せぬ制御不良に対応できる技術が身につくでしょう。

4-3. ドローンスクールで練習する

ドローンスクール(登録講習機関)に通うことで、夜間飛行の技術を効率的に身に付けられます。

ドローンスクールでは、経験豊富なインストラクターから、夜間特有の安全対策や実践的な操縦テクニックを体系的に学習できます。

操縦の癖や技術的な弱点を客観的に分析してもらえるため、効率的なスキル向上が期待できるでしょう。

特に、夜間飛行は高度な技術と安全知識が必要なため、自己流の練習では限界があります。

迅速かつ確実に夜間飛行のスキルを習得したい方には、スクールの受講を検討してください。

5. ドローンの夜間飛行でよくある質問

ドローンの夜間飛行について多く寄せられる質問と回答をまとめました。

5-1. 100g未満のドローンは自由に飛ばしてもよい?

100g未満のドローンは、航空法の無人航空機規制がかなり少なくなりますが、航空法の全規制が免除されるわけではありません。

さらに、小型無人機等飛行禁止法や各自治体の条例など、航空法とは別のルールが適用されている場合もあります。

特に、夜間飛行では騒音による近隣迷惑や、墜落による物損事故のリスクが高まり、事故発生時には民事責任や刑事責任を問われる場合があります。

機体重量に関係なく、周辺環境への配慮と安全対策は操縦者の重要な責務です。

100g未満のドローンについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

5-2. 夜間飛行でも許可申請が不要な場合はある?

ドローンの国家資格である「無人航空機操縦者技能証明」を取得していて、以下の全条件を満たす場合に限り、事前の飛行許可申請なしで夜間飛行が可能です。

  • 二等以上の無人航空機操縦者技能証明があり、かつ、昼間の限定が解除(夜間飛行可能)されている
  • 飛行させる機体が機体認証を受けており、型式認証機として夜間飛行も確認を受けている
  • 立入管理措置の実施
  • 機体の最大離陸重量が25kg未満
  • 空港等周辺・地表又は水面から150m以上の高度・催し場所上空(イベント上空)、緊急用務空域で飛行しない
  • 危険物輸送・物件投下をしない
  • 自作の飛行マニュアルを作成・遵守

6. ドローンの夜間飛行に関する疑問や悩みはバウンダリ行政書士法人へ

ドローンの夜間飛行に関する許可申請は、専門的な知識が求められる分野です。

標準飛行マニュアルと独自飛行マニュアルの使い分けや包括申請と個別申請の判断・選択、安全対策の詳細計画まで、さまざまな要件があります。

申請内容に不備があると審査が長期化し、飛行の機会を逃すリスクがあるでしょう。

バウンダリ行政書士法人では、夜間飛行の許可申請をサポートしており、豊富な実績に基づく確実な手続き代行を承っています。

ドローンの夜間飛行を検討していて、申請手続きや安全対策に少しでも不安がある方は、以下のリンクから無料相談をご利用ください。

7. ドローンを夜間飛行させる際は必要なポイントを必ず押さえておきましょう

ドローンの夜間飛行は、適切な知識と十分な準備があれば安全に実施できます。

美しい夜景撮影や夜間点検作業など、昼間では実現できない価値を提供する一方で、航空法違反や重大事故のリスクも高いのが夜間飛行です。

特に、夜間特有の技術的課題や安全リスクは、昼間の飛行経験だけでは対応が難しいでしょう。

そのため、ドローンスクールなどで専門的な訓練を受け、段階的にスキルを向上させることが不可欠です。

夜間飛行を検討される方は、基本操縦技術の習得から始め、法的要件を正しく理解したうえで適切な申請を行いましょう。

SUPERVISOR

監修者

代表行政書士 佐々木 慎太郎

バウンダリ行政書士法人

代表行政書士 佐々木 慎太郎

(Shintaro Sasaki)

日本屈指のサポート実績を誇る、ドローン法務のプロフェッショナル

行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
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