2026.03.13
飛行ルール・法律
2026.03.13
2025年の大阪・関西万博では、夜空を彩るドローンショーが大きな注目を集めました。しかし、世界的なイベントでのドローンショーにはどのような許可が必要だったのでしょうか。
この記事では、イベント担当者様向けに、大阪・関西万博や過去の万博で実際に適用された規制を振り返り、複雑な許可申請のプロセスをわかりやすく解説します。大規模イベントにおけるドローン飛行の法的要件と、成功に向けた具体的な手続きの流れを理解する際の参考にしてください。
目次
2025年に開催された大阪・関西万博では、世界中から集まる来場者の安全を確保し、イベントを円滑に運営するため、ドローンを含む小型無人機などの飛行に対して極めて厳格な規制が敷かれました。
この規制は、万博という特殊な環境下での安全性を最優先に考えた措置です。
実際に万博会場でドローンを飛行させるには、通常の航空法に基づく許可だけでは不十分でした。
万博期間中は、日本国内で通常適用される「航空法」に加え、期間限定で制定された「大阪府条例」という二重の規制が適用されていたためです。
このような特殊な法的環境を理解することが、大規模イベントにおけるドローン活用を計画する際の重要なポイントとなります。

(出典:大阪府)
大阪・関西万博の規制を理解する上で最も特徴的なのが、万博の準備および開催期間に限定して施行された「大阪府二千二十五年日本国際博覧会の準備及び開催時における小型無人機等の飛行に関する条例」の存在です。
これは、既存の法律だけでは対応が難しい万博特有のリスクに対処するために設けられた、いわば時限的な特別ルールです。
この条例の主な目的は、ドローンを用いたテロ行為やイベントの妨害、プライバシー侵害といった迷惑行為を未然に防ぎ、来場者と関係者の安全を徹底して確保することでした。
そのため、一般的な航空法よりもさらに厳しい内容が盛り込まれています。
内容としては、小型無人機等飛行禁止法とほぼ同じです。
この条例の主要なポイントは、以下の3点に集約されます。
これらの規制は、万博の安全な運営を支えるための重要な基盤となっていました。
大阪府の条例では、ドローンなどの飛行が原則として禁止される具体的なエリアと期間が明確に定められていました。
これにより、万が一のリスクを物理的に排除する狙いがありました。
具体的に飛行が禁止されたのは、以下の地域です。
飛行禁止の対象地域・対象施設
特に注目すべきは、規制範囲が会場の陸地だけでなく、周囲の海上も含まれていた点です。
これにより、「海上からドローンを飛ばして会場を撮影する」といった抜け道も完全に防がれていました。
また、規制期間も万博の開催期間(2025年4月13日~10月13日)だけでなく、会場設営などの準備が本格化する2025年1月19日からと、非常に長期間にわたって設定されていました。
条例に違反して、許可なくドローンを飛行させた場合の罰則は「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」と定められました。
これは、単なる迷惑行為としてではなく、万博全体の安全を脅かす重大な違反行為として位置づけられていたことを意味します。
一般的な航空法違反の罰則(50万円以下の罰金など)と比較しても、拘禁刑(刑務所に入ること)が含まれている点は極めて重い措置です。
この厳しい罰則規定があることで、安易なドローン飛行を強く抑止し、会場周辺の安全を維持する狙いがありました。
万博という国際的なイベントの警備において、ドローン対策がいかに重要視されていたかがわかります。
大阪府の特別な条例をクリアした上で、さらにドローンを飛行させるために必須となるのが、日本全国で適用される「航空法」上の規制です。
条例はあくまで万博エリアに特化した上乗せ規制であり、ベースとなる航空法の許可・承認が免除されるわけではありません。
ドローンショーは、その特性上、航空法が定める「特定飛行」の複数の項目に該当します。
特定飛行とは、ドローンの飛行においてリスクが高いと想定され、実施する際に国土交通大臣の許可や承認が必要となる飛行形態のことです。
万博のような多くの観客が集まるイベントでのドローンショーは、特に安全確保の観点から、航空法の要件がより厳格に審査されることになります。
条例だけでなく、航空法が定める複数の許可・承認をすべて取得することが、合法的なドローンショー実施の絶対条件でした。
ドローンショーを万博会場で開催する場合、航空法における「催し場所上空の飛行」の許可が不可欠でした。
これは、ドローン規制の中でも特に安全管理が厳しく問われる許可の一つです。
「催し場所上空の飛行」とは、お祭りやコンサート、展示会など、特定の日時・場所に不特定多数の人が集まるイベントの上空でドローンを飛行させることを指します。
万博はまさにこの典型例であり、万が一ドローンが落下した場合、観客に危害が及ぶリスクが非常に高いため、厳格な審査が行われます。
この許可を取得するためには、使用するドローンの安全機能や、落下した場合のリスクを最小限に抑えるための具体的な安全確保策を提示し、高度な安全管理体制を証明する必要がありました。
たとえば、観客の頭上を飛行させないようなルート設定や、立ち入り禁止区域を設けて観客とドローンの間に十分な安全距離を確保するといった対策が求められます。
ドローンショーは日没後に行われるのが一般的であるため、「夜間飛行」の承認が必須です。
夜間は操縦者から機体が見えにくく、周囲の障害物も認識しづらくなるため、日中の飛行よりもリスクが高まります。
この承認を得るには、機体の位置を周囲から認識できるようにするための灯火の装備や、夜間飛行に習熟した操縦者の配置といった特別な安全対策が求められます。
また、数百機から数千機のドローンをプログラムで一斉に制御するドローンショーでは、操縦者が全ての機体を自分の目で直接監視し続けることは不可能です。
これは「目視外飛行」に該当し、同様に承認が必要となります。
目視外飛行では、機体からの映像やデータで位置を常時把握できるシステムや、異常発生時に安全に着陸させられる機能、そして飛行ルート全体を監視する補助者の配置など、厳格な監視・運用体制の構築が求められました。
大阪万博という極めて特殊な環境下でドローンショーを実施するためには、「大阪府条例」と「航空法」という二つの法律を同時にクリアする必要があり、その手続きは複数のステップに分かれていました。
具体的な手続きの流れは、大きく以下の3段階で構成されていました。
この多段階にわたる手続きこそが、万博でのドローン飛行の最大のハードルでした。
各ステップにはそれぞれ厳しい提出期限が設けられており、一つでも欠けると飛行させることはできません。
この複雑さから、一般の観光客や個人のドローンユーザーがこれらの手続きをすべて踏んで飛行許可を得ることは、事実上不可能です。
実際に飛行が許可されたのは、博覧会協会から正式に依頼を受けた事業者や、特別な取材許可を得た報道機関など、ごく一部の関係者に限定されていました。
大阪万博でドローンを飛行させるための、すべての手続きの出発点となるのが、関係各所からの「同意」の取得です。
同意がなければ、その後の警察への通報に進むことすらできませんでした。
万博会場の上空で飛行させる場合は「博覧会協会」、会場外の周辺エリア(私有地など)で飛行させる場合は、その「土地の所有者や管理者」からの書面による同意が絶対条件です。
「いつ、どこで、誰が、どの機体を使って、何のために飛行させるのか」といった詳細な情報を記載した正式な同意書を作成し、署名または記名押印を得る必要がありました。
一般のドローンユーザーや事業者が、博覧会協会のような巨大組織からこの公式な同意を取り付けることは極めて困難です。
この「同意取得」の段階が、一般のドローンユーザーにとって最も高く、そして越えることができないハードルであったと言えるでしょう。
博覧会協会などの関係者から正式な「同意」を得た後、次に行うべき手続きが、大阪府公安委員会(管轄の警察署経由)への飛行計画の「通報」です。
この通報は、実際にドローンを飛行させる日の7日前までに完了させる必要がありました。通報が受理されることで、警察は「いつ、どこで、どのようなドローンが飛行するのか」を事前に把握することができます。
この事前通報は、警察が万博会場全体の警備計画を策定し、他の警備活動との連携を図る上で不可欠な手続きでした。
たとえば、不審なドローンが飛んでいないかを監視する際に、許可された機体とそうでない機体を区別するための重要な情報となります。
通報の際には、操縦者の情報、機体の仕様、飛行ルート図など、詳細な資料の提出が求められました。
これらの手続きに関する具体的な案内は、大阪府警察の公式ホームページ等で公開され、厳格な運用がなされました。
大阪府条例に基づく「同意取得」と「警察への通報」の手続きと並行して進めなければならないのが、航空法に基づく国土交通省(航空局)への「許可・承認申請」です。
この申請は、飛行予定日の少なくとも10開庁日(土日祝日を除く10日)前までに、オンラインシステム(DIPS 2.0)を通じて提出する必要がありました。
申請内容に不備があれば審査が長引くため、実際には1ヶ月程度の余裕を持った申請が推奨されます。
ドローンショーの場合、「催し場所上空の飛行」「夜間飛行」「目視外飛行」など、該当する複数の特定飛行に関する許可・承認を一つの申請にまとめて行う必要がありました。
申請書には、機体の性能、操縦者の飛行経歴、安全管理マニュアルなど、詳細な情報を添付し、安全に飛行できることを証明しなくてはなりません。
これらすべての複雑な手続きを期限内に、かつ不備なくクリアして初めて、万博会場でのドローン飛行が法的に可能となったのです。
大阪・関西万博の事例が示すように、国際的な大規模イベントでドローンショーなどを実施するための許可手続きは、複数の法律や条例が絡み合い、極めて複雑で専門的な知識を要求されます。
安全確保に対する社会の目も厳しく、手続きの不備はプロジェクトそのものを頓挫させるリスクをはらんでいます。
実際に大阪・関西万博でも手続きの不備がニュースとなった事例もございます。
今後、万博のような大規模イベントや、多くの観客が集まるコンサート、地域の祭りなどでドローンショーやプロモーション撮影を計画する際には、企画のなるべく早い段階で、ドローン法務を専門とする行政書士に相談することが成功の鍵となります。
専門家は、複雑な法規制を正確に読み解き、必要な書類を不備なく作成し、関係各所との調整を円滑に進めるためのノウハウを持っています。
バウンダリ行政書士法人では、ドローンショーやインフラ点検など、高難度な飛行許可申請に関する豊富な実績と最新の法知識を有しています。
企画段階の漠然としたご相談から、具体的な申請手続きの代行まで、お客様のニーズに合わせて幅広くサポートいたします。
まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
ドローンに関する許認可申請、許認可管理、法務顧問を専門とするバウンダリ行政書士法人の代表。飛行許可申請をはじめメーカー支援、登録講習機関の開設やスクール運営、事業コンサルティング、空飛ぶクルマなど支援の幅を広げ日本屈指のサポート実績を誇る。2025年のドローン許認可対応案件は10,000件以上、登録講習機関のサポート数は200社を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」や公式LINEを開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信している。