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100g以上のドローンを飛ばすには許可が必要?

2025.03.18

100g以上のドローンを飛ばすには許可が必要?

ドローンは空撮や物流、測量、農業、災害対策など、幅広い分野で活用が進んでおり、趣味としても人気を集めています。

一方で、ドローンは無人航空機として法律上の規制も多く、安全を確保するためのルールが厳しく定められています。

日本ではかつて重量(機体とバッテリーの重さの合計)200g以上の機体が無人航空機として規制対象とされていましたが、航空法改正によりドローンの登録制度の新設や飛行の許可・承認制度が大きく変わり、現在は100g以上の機体が航空法上の「無人航空機」として扱われるようになりました。

そこで本記事では、100g以上のドローンに関わる許可や承認、機体登録手続きの概要を丁寧に解説いたします。

すでにドローンをお持ちの方はもちろん、これから購入を検討している方もぜひ参考にしてみてください。

ドローンに関する主な規制概要

1.航空法の適用範囲拡大

これまで日本の航空法では、「200g以上」が無人航空機として飛行許可・承認の対象とされてきました。しかし、ドローン技術の進歩と普及に伴い、機体が軽量化する一方で高性能化も進み、安全面でのリスクが顕在化したことから、無人航空機の適用対象が100g以上に引き下げられました。

現在は重さが100g以上のドローンを「無人航空機」として取り扱うことになっています。これにより、従来200g未満だからといって多くの規制を免れていた比較的軽量なドローンも、航空法の対象になりました。

2.「無人航空機」としての定義

航空法では、ドローンやラジコン機、農薬散布用の無人ヘリコプターなど、人が乗れない構造で遠隔操作や自律制御で飛行する機体を「無人航空機」と定義しています。

100g以上であればトイドローンと呼ばれる小型の機体でも対象となり、各種申請手続きが必要になるケースが多くなります。

反対に、100g未満の超小型トイドローンや室内専用ドローンは航空法の規制がほとんどありませんが、屋外飛行であれば別の法令、例えば小型無人機等飛行禁止法などに抵触する可能性があるため注意が必要です。

3.なぜ100g以上が対象になったのか

200g未満のドローンであっても、飛行速度の高速化や動画撮影の性能向上により、もし事故が起きれば人的・物的被害が大きくなるリスクがあります。

たとえば、人や建物に衝突したり、飛行中にトラブルが起きて墜落したりする可能性は0ではありません。

こうした潜在的リスクを踏まえ、より広範囲に安全対策を徹底するために、100gという基準が設けられました。

重量が100g以上の無人航空機には、基本的に「機体登録」「飛行許可・承認申請」といった手続きが求められるようになったわけです。

100g以上ドローンの登録制度

1.登録が義務化された背景

航空法の改正により、屋外で飛行させる100g以上の無人航空機はすべて登録が義務化されました。

登録を義務づける背景には、「所有者や機体情報を把握し、安全対策や事故発生時の対応をスムーズに行う」目的があります。

国土交通省のデータベースに機体と所有者の情報を結びつけることで、飛行許可の審査や、万が一の事故対応が容易になり、無人航空機が安心・安全に運用される社会環境を目指すわけです。

2.登録に必要な情報

登録手続きを行う際は、以下のような情報を提出します。

  • 所有者情報:氏名、住所、連絡先など
  • 機体情報:メーカー名、機体の型式、重量、製造番号(シリアルナンバー)など
  • 補助的な情報:例えばリモートID装置の搭載状況、機体の写真など

登録は「無人航空機登録ポータルサイト」などからDIPSというオンライン申請システムで行うことが可能です。

手数料は機体1台ごとに必要となりますが、複数台を所有している場合は一括で登録することもできます。

3.登録期限や更新手続き

無人航空機の登録は有効期間が設定されており、3年ごとに更新が必要とされています。

更新を怠ると、登録情報が抹消されるなどのリスクがあるため、期限内に手続きを行いましょう。

また、所有者が変更されたり、機体に大きな改修が行われたりした場合にも、譲渡や登録情報の変更手続きが必要となります。日ごろから登録情報を正しく管理することが大切です。

4.登録漏れによるペナルティ

屋外で100g以上の無人航空機を飛行させる場合は、原則登録が義務づけられています。

登録をしないまま飛行させた場合は、航空法違反として罰則が科される可能性があります。具体的には1年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

安全面だけでなく法令順守の観点からも、登録手続きは必ず行うようにしてください。

100g以上のドローンが必要となる飛行許可・承認

1.航空法上の「特定飛行」とは

ドローンを利用するにあたって、リスクが高いと考えられる飛行を「特定飛行」と呼びます。主に、下記のようなものがあります。

  • 人口集中地区(DID)での飛行
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 催し場所(イベント)上空での飛行
  • 危険物輸送、物件投下
  • 人または物件から30m未満の距離での飛行
  • その他、安全上のリスクが高いと想定される飛行 など

これらを実施する場合は、事前に国土交通省への許可や承認(いわゆる「飛行許可・承認申請」)を行う必要があります。

機体重量が100g以上であれば「無人航空機」に該当し、特定飛行を行うのであれば申請対象となる点に注意してください。

2.なぜ許可申請が必要なのか

無人航空機は有人航空機と同じ空を飛ぶ存在です。とりわけ、上記のような特定飛行では、周囲への安全確保や衝突リスクの管理が一層重要になります。

事故やトラブルを未然に防ぐため、国土交通省は飛行内容をチェックし、事前に安全対策が十分にとられているかを確認します。

許可や承認の取得は、法律上の義務であると同時に、自らの責任で安全運航を図るうえでも欠かせません。

3. DIPS(ドローン情報基盤システム)の活用

飛行許可・承認を申請する際は、国土交通省が運営するオンライン申請システム「DIPS」を利用するのが一般的です。

DIPSで必要事項を入力し、必要に応じ添付書類をアップロードすれば、メールや紙の書類を郵送する必要がなくスムーズに申請できます。

審査には通常数日~内容によっては数週間程度かかる場合が多いため、飛行予定日が決まっている場合は早めの申請がおすすめです。

不備があると修正が必要となり、さらに日数がかかることがありますので、入力や書類内容を十分チェックしてから提出しましょう。

4.許可を得ずに飛行した場合の罰則

特定飛行に該当するにもかかわらず、無許可のままドローンを飛行させると航空法違反となり、50万円以下の罰金を受ける可能性があります。

また、一度違反の事実が知られてしまうと、将来的な事業展開や信用にも大きく影響するでしょう。

ドローンの活用が広がるなか、違反事例が報道されることも増えてきています。

自分のドローンがどのような規制対象になるのかを正確に把握し、適切な手続きを行うことが非常に大切です。

安全運航を支える飛行マニュアルと保険加入

1.飛行マニュアルの整備

飛行許可を取得したとしても、飛行中の落下や衝突事故は当然に起こり得ます。

安全運航を実現するためには、国土交通省が策定した「航空局標準飛行マニュアル」をベースに、運用実態に合わせたマニュアルを整備することが推奨されています。

特に特定飛行に該当する運用を行う際は、飛行計画や緊急時の対応手順などを明確化し、関係者全員が理解している状態をつくり上げることが不可欠です。

2.整備点検・操縦者の技能向上

ドローンの運用で多いトラブルの1つは、バッテリー切れやGPS不良、プロペラの破損など機体の不具合や操縦ミスが原因とされています。飛行前・飛行後には必ず点検を行い、機体のコンディションを良好に保ちましょう。

また、操縦者の技能向上も安全運航の要です。近年ではドローンスクール(登録講習機関)が増加しており、法律や安全管理、実技などを体系的に学べる機会が整いつつあります。

100g以上のドローンを本格的に使いこなすなら、こうした講習を受講してスキルアップを図るのも有効です。

3.保険加入の必要性

万が一の事故やトラブルに備え、第三者賠償責任保険に加入しておくことも非常に重要です。

比較的軽い機体でも、人や建物に被害を与える可能性は否定できません。保険がない状態で事故を起こせば、多額の損害賠償責任を負うリスクがあります。

業務利用であれば、より充実した補償を提供するプランへの加入が望ましいでしょう。いざというときにリスクをカバーできる備えは、ドローン事業を継続していくうえでも不可欠です。

100g以上ドローンの具体的な申請手順

ここでは、実際に「100g以上のドローンを飛行させる際の典型的な申請手順」をイメージしてまとめます。

1.機体の登録

  • DIPSに登録、ログインし、所有者情報・機体情報を入力
  • 手数料を支払い、登録の完了を確認
  • 機体ごと登録記号が発行される

2.飛行方法の検討

  • 飛行場所が人口集中地区(DID)なのか、夜間や目視外での運用はあるかなどを精査
  • 特定飛行に該当する場合は国土交通省への申請が必須
    ※業務で飛行させる場合は飛行許可申請はほぼ必須です。

3.DIPSでの申請準備

  • DIPSにログインし、新規申請の準備
  • 機体登録情報の確認

4.飛行情報・安全対策の入力

  • 飛行期間や飛行場所、特定飛行の種類、操縦者のスキルなどを入力
  • 安全確保のための対策(人との距離、保険加入状況など)を入力が必要な場合は記載

5.申請・審査

  • すべての情報を確認後、申請ボタンを押す
  • 国土交通省が内容をチェックし、不備があれば修正依頼がDIPS経由で届く
  • 問題がなければ数日~数週間後に審査終了通知がメールで届く

6.許可書の携行・運用開始

  • 許可・承認書をダウンロードして保存または印刷 
  • 飛行時に提示できる状態にしておき、安全運航を徹底する

100g以上・未満のドローンに関するよくある質問(FAQ)

Q1.100g未満のドローンなら完全に自由に飛ばしてもよいのでしょうか?

100g未満のドローンは航空法の無人航空機からは外れますが、航空法の規制がないわけではありません。

また、自治体の条例や小型無人機等飛行禁止法などの他法令など、別のルールが適用される場合があります。

周囲に迷惑をかけたり事故を起こしたりすれば、民事・刑事責任を問われる可能性もあります。100g未満だからといって「完全に自由」というわけではないので注意してください。

Q2.100g以上のドローンでも、趣味用途の場合は登録や許可はいらない?

趣味・ホビーであっても、機体が100g以上ならば登録は義務です。

特定飛行に該当する飛ばし方をしたいならば、国土交通省への許可・承認申請も必要になります。

業務利用と比べて申請内容が少ないケースもありますが、必要な手続きは同じです。

Q3.登録したドローンを売却・譲渡した場合は?

所有者が変わった際には、手続きが必要になります。

新しい所有者が登録を引き継ぐ形になるか、あるいは一旦抹消して再登録する形になるかは状況によって異なるため、国土交通省のガイドライン登録ポータルサイトの説明を確認したり、行政書士に相談するようにしましょう。

Q4.保険に入っていないと許可は下りないのでしょうか?

国土交通省が許可・承認を出すかどうかの判断材料として、第三者賠償責任保険の加入状況は重要な要素のひとつです。

一部の飛行を除いて法的に「保険加入義務」があるわけではありませんが、実務上は保険に加入していない状態は大きなリスクがあります。

お客さまに安心を提供する意味でも、保険の加入は実質的に必須と考えるほうがよいです。

Q5.100g以上のドローンで練習したいが、許可の申請が面倒…どうすれば?

実際に許可申請や書類作成が分かりにくかったり、難しく感じる方も多いでしょう。

そういった場合は、ドローン専門の行政書士に依頼することで、申請の手間やミスを減らすことが可能です。

初心者の方はまず安全な屋内施設やドローンスクールで練習し、機体や操縦に慣れてから本格的な屋外飛行を始めるのも一つの手です。

100g以上のドローンも機体登録や飛行許可申請が必要

今回の記事では、現在の日本におけるドローン規制や必要となる許可・登録手続きについて詳しく解説いたしました。ポイントを振り返ると、以下のとおりです。

  1. 100g以上のドローンは無人航空機として扱われる
    従来の200g基準から変更され、100g以上ならば航空法の無人航空機として扱われます。
     
  2. 屋外での飛行では機体登録は義務化されており、飛行許可も必要な場合がある
    「特定飛行」を行うなら事前に国土交通省の許可や承認を得る必要があります。
     
  3. 安全運航のための飛行マニュアル整備・技能向上・保険加入が重要
    ドローン事故は操縦者のミス・機体に対する理解不足や整備不良が原因となるケースが多く、対策が不可欠です。
     
  4. DIPSでのオンライン申請は早め&正確に
    不備があると審査に時間がかかり、飛行予定に支障が出る可能性があります。

ドローンが身近になる一方で、法律や技術面も日々アップデートされています。100g以上の機体を安全に、そして合法的に活用するためには、最新の情報を常にチェックし、適切な手続きを踏むことが大切です。

ドローンの世界はまだまだ可能性が大きく、正しく飛ばせば驚くほど便利で楽しいツールでもあります。

皆様が安全第一でドローンを活用し、新たな価値や体験を得られるよう願っています。

 

SUPERVISOR

監修者

代表行政書士 佐々木 慎太郎

バウンダリ行政書士法人

代表行政書士 佐々木 慎太郎

(Shintaro Sasaki)

日本屈指のサポート実績を誇る、ドローン法務のプロフェッショナル

行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
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