2024.11.14
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2023.04.01
新しいサービスや事業の開発・再構築に必要となる設備投資を、国の補助金で賄うケースが増えています。様々な産業への貢献度が高く問題解決のツールとして利活用されているドローン分野においても同様です。
ドローン購入に使える補助金として「ものづくり補助金」から紹介します。
ものづくり補助金とは「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の略称で、目的は次のように説明されています。
中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援するもの
【 中小企業庁:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について】
対象企業は業種ごとに事業規模が決められています。
補助の金額は、用途枠や従業員数によって異なりますが、概ね1,000万円前後が上限となっており最低額は100万円です。補助率は費用の2分の1が原則ですが、従業員5名以下の小規模事業者には3分の2までが補助されます。
補助の対象となる費用は、機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサー ビス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、と多様です。
事業計画の審査を受け、補助対象事業として採択される必要がありますが、ドローン導入の効果は人件費や時間削減等まさに生産性向上につながり、当補助金の目的と合致します。
事例1「レーザーシステム搭載ドローンによる高精度測量の実施と作業効率化」
事例2「ドローンと赤外線カメラによる大~小規模建物の外壁診断サービス開発」”
ものづくり補助金は、採択された事業計画が未達の場合は補助金の一部を返還する義務もあります。公募要領の一読をお勧めします。
モノづくり補助金の対象とならない100万円以下のドローンでは「小規模事業者持続化補助金」が該当します。
持続化補助金は次のような背景と目的で創設されました。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者を支援し、将来の成長を下支えします。
加えて、事業承継・引継ぎ補助金を新たに追加し、中小企業の生産性向上や円滑な事業承継・引継ぎを一層強力に推進します。
中小企業庁:【持続化補助金令和3年度補正予算の概要】より抜粋
対象は小規模の事業者です。
補助金額の基準は枠によって異なりますが最もスタンダードな「通常枠」では上限50万円。補助率3分の2となっています。その他に上限200万円の枠類(賃金引上枠・ 卒業枠・ 後継者支援枠・ 創業枠)や100万円の インボイス枠も用意されています。
補助対象は、販促用チラシ、パンフレット作成、広告掲載、店舗改装、販売拡大のための機械装置の導入、新商品開発、商談会への参加などかなり広範囲となっています。
コロナ禍の影響を受けた小規模事業者への救済的意味あいを持つ補助金です。それまでの補助金には見られなかった広告宣伝費や販促分野の「経費」も補助の対象となっている点が特徴です。
事例「ドローンによる空撮・映像事業への参入」
厳しい経済環境の中、生き残りをかけて業態転換や事業の再構築を行う企業を支援するのが事業再構築補助金です。
本事業は、(中略)ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。
【令和4年12月事業再構築補助金公募要領(第8回)】より抜粋
対象となるのは次の要件に該当する事業者です。
- 「事業再構築」の定義に該当する事業
⇒従来事業とは多少分野の違う商品やサービスの展開を開始し、3~5年度にその事業の売上が会社全体の売上の10%以上を占める- コロナ拡大後(2,020年4月以降)の売上が10%以上減少している
⇒2,020 年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2,019年又は2,020 年1月~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している- 事業計画を認定経営革新等支援機関と策定する
⇒国が認定した中小企業支援機関と事業計画を策定する
補助金額は、対象類型によって様々です。最もスタンダードな「通常枠」では最低額は100万円ですが、上限額は従業員数によって4つに分かれており、下は20人以下の2,000万円から最高は100人以上の8,000万円となっています。
補助対象は、ものづくり補助金の対象経費に加えて「建物費・広告宣伝・販売促進費・研修費」も対象となります。
事業再構築補助金は、補助金の中でも最高レベルに高額で魅力的ですが、ものづくり補助金と違って既存事業の生産性向上だけでは対象にならない点に注意しましょう。
ドローン事業での活用にも業種の転換や新規事業進出を果たした事例があります。
事例1「運転代行業からロードサービス + ドローン活用による業種転換」
事例例2「ドローン普及および技術向上に向けた講習施設の建設」
申請は簡単ではありませんが、採択された時のメリットは計り知れません。一度、各種応募要件(売上減少・付加価値額・従業員数増他)に合致するかどうかだけでも確認することをお勧めします。
主に「物」への投資を対象とした補助金に対して、「人」に焦点をあてたのが助成金です。
人材開発支援助成金は、事業主等が雇用する労働者に対して職務に関連した専門的な知識及び技能の習得をさせるための職業訓練等を計画に沿って実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部等を助成する制度です。
厚生労働省【人材開発支援助成金のご案内(詳細版)】から抜粋
対象となる事業者は、業種ごとの資本金の額と従業員数に設けられた基準のどちらかに該当する者です。
補助金制度の補助金に相当する「助成金」の支給基準はコースごとに異なりますが、例えばドローンの特定操縦訓練が対象となる「特定訓練コース」では、かかった経費の45%と760円/時の賃金助成が給付されます。
いくつかの適用条件がありますが、中でも重要なのは「雇用保険に加入している企業」が対象となることでしょう。個人事業主は対象外であることも知っておきましょう。
ドローン操縦者の育成において使える助成金の事例を紹介します。
事例1「赤外線カメラ搭載ドローン 太陽光パネル点検コース」
例えば、点検事業者のドローン操縦者が「赤外線カメラ搭載ドローン 太陽光パネル点検コース」を受講した場合、「特定訓練コース」を申請すれば45%の経費助成金と760円/時の賃金が支給され、一人当たり約4万円で特殊技能がマスターできます。
(下図引用先:和歌山職業能力開発サービスセンター【 人材開発支援助成金を活用した人材育成】)
補助金と異なり一定の条件に合えば申請だけで給付されるのが助成金の便利な点です。特に操縦技術の向上が課題のドローン事業者様にはこちらの助成金をおすすめします。
IT導入補助金は、ITツールという特定の分野に焦点を当てた補助金です。
中小企業・小規模事業者等のみなさまが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、みなさまの業務効率化・売上アップをサポートするものになります。
一般社団法人 サービスデザイン推進協議会【IT導入補助金2,022:事業の目的】より抜粋
IT導入補助金は、物に対してではなく業務のプロセスに構わる「ソフトウエア」への投資を対象とする補助金です。従って、ドローン場合ではドローンそのものではなく、映像解析や測量アプリなどが補助の対象となります。
補助金の金額は、ITツールの導入費用の2分の1、最大で450万円となっています。
対象が「認定されているITツールに限られていること」に注意しましょう。導入を検討しているソフトウエアが補助金の対象となるかどうかは「IT導入支援業者・ITツール検索」で確認できるので、導入の検討にあたっては確認してみるとよいでしょう。
補助金は、相応の審査をパスした上、払った費用実績に対して給付される「後払い」が原則です。従って、融資も含めてまず自己資金での支払が前提となり、最初から補助金をあてにした無計画な投資はおすすめしません。
ご自身のドローンの活用の仕方や事業の規模に適した補助金を見極めて、うまく活用してみましょう。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。