2025.10.29
飛行ルール・法律
2025.10.29
ドローンの社会実装が進むなかで、規制緩和の一環として新たに導入されたのが「レベル3.5飛行」です。
これは、従来のレベル3飛行では難しかった移動中の車両・列車が通行している道路や鉄道の横断を伴う飛行を可能にする仕組みであり、都市部やインフラ点検などでの活用が期待されています。
これにより、物流や測量、設備点検といった分野におけるドローンの利便性が一層高まり、実用化のスピードが加速することが見込まれます。
一方で、レベル3.5飛行を行うためには、操縦者や機体に求められる条件、申請手続きの流れなど、従来とは異なる新たな要件を理解しておく必要があります。
本記事では、ドローンの飛行レベルの定義からレベル3.5飛行の概要、従来のレベル3飛行との違い、申請に必要な条件や具体的な手順までを解説します。
これからドローンの高度な運用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ドローンの飛行レベルは、操縦方法や無人又は有人地帯の飛行エリアによって段階的に分類されており、2023年12月に新設された「レベル3.5飛行」によって、事業者はより効率的な運用が可能になりました。
従来の厳格な要件が緩和されたことで、物流や点検業務での実用化が大きく前進しています。
飛行レベルは、2016年に開催された官民協議会の「無人航空機の利活用と技術開発のロードマップ」で示された分類であり、航空法や施行規則で直接定義された用語ではありません。
レベル1は目視内での手動操縦、レベル2は目視内での自動飛行、レベル3は無人地帯での補助者無し目視外飛行、レベル4は有人地帯での補助者無し目視外飛行を指します。
具体例として、レベル1・2では空撮や農薬散布、レベル3では人がいない山間部や離島への物資輸送、レベル4では都市部での配送サービスなどが挙げられます。
このような段階的な分類により、技術発展と法整備を計画的に進めていく指針となっています。
レベル3.5飛行は、レベル3と4の中間の飛行内容ではなく、従来のレベル3飛行の飛行要件を緩和した制度として2023年12月に新設されました。
この制度は、無人航空機による物資輸送や点検業務などの事業化促進を目的としており、事業者からの「運用しづらい」という声に応えた規制緩和です。
運送業界の深刻な人手不足問題に対し、ドローン配送を積極的に活用したいという事業者のニーズと、国土交通省による規制緩和の方針が合致した結果、レベル3.5飛行という新しい枠組みが生まれました。
レベル3飛行では、無人地帯であっても飛行エリア周囲への地上カメラや立看板設置といった補助者に代わる立入管理措置が義務付けられていました。
さらに、道路や鉄道の上空を横断する際には移動中の車両や列車の上空は飛行させることができなかったため一時停止し、車両などがないことを確認する必要がありました。
これらの要件により、広範囲にわたる物資輸送やインフラ点検を行う際、コスト面と準備期間の両面で大きな負担となっていました。
事業者からは「これでは運用しづらい」という声が多く上がり、ドローンビジネスの事業化を阻む大きな障壁となっていたのです。
従来のレベル3飛行で必要だった立入管理措置や道路横断時の一時停止が、レベル3.5飛行では機体カメラを活用することで大幅に緩和されました。
これにより、物流や点検業務での実用性が飛躍的に向上しています。
【レベル3飛行とレベル3.5飛行の比較】

従来のレベル3飛行では、無人地帯であっても飛行エリアの周囲に机上カメラや気象計を配置したり、立看板やポスターなどで飛行の周知を行う立入管理措置が必須でした。
レベル3.5飛行では、機体に搭載したカメラで地上に第三者がいないことを確認することで、これらの措置が原則不要となります。
ただし、立入管理措置が完全になくなったわけではなく、機体カメラによる安全確認という新しい方法に変わったと理解することが重要です。
モニターなどを活用して周囲を確認可能な状態にすることで、従来の補助者配置と同等の安全性を確保しています。
レベル3飛行では、道路や鉄道の線路上空を横断する際、移動中の車両や列車の上空を飛行させることができなかったため、その都度一時停止して下に車両などがいないことを確認する必要がありました。
この要件により、広範囲の物資輸送や点検作業において大きな時間的制約となっていました。
レベル3.5飛行では、移動中の車両(自動車、列車、船舶を含む)の上空を一時的に横断することが可能となり、一時停止が不要になりました。
ただし、バイクや歩行者の上空は引き続き飛行できないため、機体カメラで常に確認しながら、これらを避けて飛行する必要があります。
レベル3.5飛行の許可を取得するためには、従来のレベル3飛行とは異なる要件を満たす必要があります。
新設された制度により申請手続きも専用のフローが設けられており、事業者は段階的なプロセスを経て許可を取得することになります。
レベル3.5飛行を実現するには、安全性確保のための3つの条件をクリアすることが大前提となります。
これらの条件により、従来の立入管理措置が機体カメラによる確認に代替されることになります。
● 国家資格の保有
レベル3.5の飛行許可申請では、操縦者は二等以上の無人航空機操縦者技能証明の保有が必須条件となっています。
目視外飛行を前提としているため、目視内飛行の限定解除を受けている必要があります。
国家資格の保有により、操縦者の技能レベルが公的に担保されることで、機体カメラによる安全確認への代替が可能になります。
レベル3.5の飛行許可申請は包括申請ではなく、場所を特定した個別申請をしなければいけません。
● 第三者賠償責任保険への加入
万が一の墜落事故などによって第三者への負傷や交通障害が発生した場合でも、十分な補償ができる第三者賠償責任保険への加入が義務付けられています。
レベル3.5飛行では移動中の車両上空を一時的に横断することが認められているため、より高いリスクに対応できる保険体制が求められています。
尚、現時点では補償金額についての定めはありません。
● 機上カメラの活用による安全確認
従来の地上カメラ・気象計の配置や看板設置に代わる安全確認手段として、ドローンに搭載されたカメラによる監視が必要です。
モニターなどを活用して飛行経路下の状況を常時確認できる体制を整えることで、無人地帯の確保が実現されます。
これらの条件を満たすことで、従来の立入管理措置が緩和されるという仕組みになっています。
レベル3.5飛行では、飛行場所を特定しない包括申請での許可取得はできません。
必ず飛行経路を明確にした個別申請が必要となり、申請から許可取得までは段階的なプロセスを経ることになります。
【申請から許可取得までの流れ】
初回申請の場合、自分で申請を行うと許可取得までに3~4ヶ月程度を要することが多いため、計画的な準備と早期の申請開始が重要になります。
申請対象となる飛行場所は「第三者が存在する可能性が低い場所」に限られており、具体例として山間部、海水域、河川、森林、農用地などが該当します。
申請時にはメーカーが提供する「落下距離」や「初期故障期間」といった資料が必要になるため、使用予定機体がこれらの情報提供に対応しているか事前確認が不可欠です。
要するに、メーカーの協力無しで飛行許可取得することは不可能です。
許可取得後も、飛行前には有人航空機団体や管轄の地方航空局へ飛行内容を通知する義務があることを理解しておく必要があります。
レベル3.5飛行の新設により、従来の立入管理措置が緩和され、地上カメラや看板設置が不要になったことで、ドローンの業務活用範囲が大幅に拡大しました。
特に長距離・広範囲での飛行が効率化されたことで、物流配送から点検調査まで、さまざまな分野での実用化が加速しています。
レベル3.5飛行では、山間部や離島などアクセスが困難な地域への医療品や薬品配送が実現可能になります。
遠隔地の診療所や在宅医療を受けている患者への迅速な配送により、患者の生活の質向上が期待されています。
キャンプ場への新鮮な食材配送や、漁船から陸上処理施設までの漁獲物輸送では、鮮度を保ったまま迅速な運搬が可能です。
建設現場では、レンガやセメント袋、鉄筋などの資材を遠隔地や高層建物上層部へ効率的に運搬でき、大型電動工具や燃料の迅速な配送も実現します。
送電線や鉄道線路といったインフラ設備の遠隔点検では、補助者配置が不要になったことで広範囲の定期監視が効率化されています。
山奥の線路状態を定期検査し、レールの損傷や異常の早期発見により安全運行を支える保守作業が向上しました。
林業では、補助者なしで広範囲の農地を迅速に巡回し、作物の成長状況や病害虫発生確認が可能になっています。
環境調査分野では、野生鳥獣の生息地監視や植生モニタリングに加え、シカやヒグマの位置特定によるハント補助活動も実現し、生態系保全活動が大幅に効率化されています。
レベル3.5飛行により、ドローンの業務活用範囲が大幅に拡大しました。
従来のレベル3での立入管理措置が緩和され、地上カメラや道路横断時の一時停止が不要になったことで、物流配送から点検調査まで効率的な運用が実現可能です。
技能証明(国家資格)の取得がビジネス活用の鍵となり、二等以上の資格保有により新たな事業機会が創出されています。
ドローン活用の幅を広げるためには、最新の法規制を正しく理解し、遵守することが不可欠になります。
レベル3.5飛行の許可申請は、運航概要宣言書の作成や関係各所との調整など、専門的な知識と多くの時間を要する手続きです。
バウンダリ行政書士法人が、ドローン法務のプロフェッショナルとして、複雑な申請手続きを全面的にサポートいたします。
初めての申請で不安な方や、事業で確実に許可を取得したい方は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
YouTubeで日々ドローン法務に関する情報を発信中!「ドローン教育チャンネル」はこちら