2025.11.14
ドローン基礎知識
2025.11.14
ドローンの利活用が進む中、従来のレベル3飛行とレベル4飛行の中間に位置づけられる「レベル3.5飛行」が新たに注目されています。
飛行内容はレベル3飛行とほぼ同じですが、無人地帯での目視外飛行を、より柔軟かつ現実的に実現できる制度として導入されたこの枠組みは、物流や測量、点検などの分野での活用が期待されています。
しかし、実際に飛行許可を取得するためには、操縦者の技能証明や機体要件、賠償責任保険の加入など、いくつもの条件を満たしたうえで国土交通省の手続きを経る必要があります。
本記事では、ドローン「レベル3.5飛行」の概要から、許可申請に必要な前提条件、DIPSを使った申請の流れ、注意点までをわかりやすく解説します
目次
ドローンのレベル3.5飛行は、レベル3と4の中間の位置づけとなりますが、飛行内容自体は従来のレベル3飛行の飛行要件を緩和したものです。
従来のレベル3飛行では必要だった地上カメラや看板の設置を省略し、機体カメラを活用した新しい立入管理措置により目視外飛行を実現する飛行方法です。
移動車両の上空を一時的に横断できるようになったことで、長距離・広範囲での効率的なドローン運用が可能になりました。
従来のレベル3飛行とレベル3.5飛行では、立入管理措置の方法に大きな違いがあります。
【立入管理の主な方法】
従来のレベル3飛行:地上カメラ・気象計の配置や看板の設置により、物理的に無人地帯を維持する。
レベル3.5飛行:機体に搭載したカメラで、飛行経路下に第三者がいないことを確認する。
【必要な人員・設備】
従来のレベル3飛行:監視を行う「補助者の代わりとなる地上カメラや気象計」と、注意喚起のための「看板」が地上に必要となる。
レベル3.5飛行:原則として地上カメラ、気象計や看板は不要となり、「機上カメラ」と映像を確認するモニター等が主となる。
【道路横断時の対応】
従来のレベル3飛行:移動中の乗り物の立ち入りがないタイミングを見計らう必要があり、場合によっては交通を一時的に制限するなどの追加措置が求められる。
レベル3.5飛行:上部が覆われている自動車や列車などは「第三者」に該当せず、一時的に上空を横断飛行することが可能。
【コスト・準備】
従来のレベル3飛行:補助者の代わりとなる設置物の手間とコストがかかる。
レベル3.5飛行:地上設備の準備が大幅に軽減され、低コストかつ短期間での準備が可能になる。
レベル3.5飛行では機上カメラを活用して無人地帯を確認し、移動車両の上空飛行が可能になったことで、山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地、ゴルフ場などでの準備期間短縮と低コスト化、自由な飛行が実現します。
レベル3.5飛行は、地上カメラ・気象計や看板の設置が不要になることで「長距離」「広範囲」の飛行がレベル3飛行より適しており、さまざまな分野での活用が期待されています。
また、飛行範囲や周囲の環境によっては、包括申請やレベル3.5ではない個別申請も同様の飛行ができる可能性があります。
まだ実証段階の活用も多いです。
【各分野のメリット】
建設分野:現場の進捗管理や警備:広い工事現場の施工管理や、広大な土地での太陽光パネルの警備・点検などがある。
これにより、業務の効率化・省人化が期待される。
農林業:
・広範囲の生育調査:補助者なしで広範囲の農地を巡回し、作物の成長状況や病害虫の発生を迅速に確認できる。
・肥料・飼料の配送:大規模な農地や牧場へ、肥料や飼料を効率的に運搬し、作業時間と作業者の負担を軽減する。
・苗木の輸送:広範囲にわたる植樹エリアやアクセスが困難な山間部へ、迅速に苗木を輸送し、植樹作業の効率化を図れる。
水産業:
・漁獲物の迅速な輸送:漁船から陸上の処理施設まで漁獲物を輸送することで、鮮度を保ったまま迅速に運ぶことが可能になる。
・船上への物資補給:医薬品や食料などの緊急物資を漁船へ迅速に補給し、海上の緊急事態に対応できる。
飲食業・小売業:
・生鮮食品の配送:新鮮さが求められるジビエや魚介類などを迅速に配送できる。
・キャンプ場への食材配送:キャンプ場へ食材や料理を配送するサービスが実現できる。
・家庭用品の配送:離島や山間部など、通常の配送サービスが届きにくい地域や災害時に日用品を届けることができる。
環境調査:
・野生鳥獣の調査:広範囲にわたる生息地を監視し、個体数や行動パターンを記録して生態系を評価できる。また、ヒグマの出没などに即座に対応することも可能になる。
・植生のモニタリング:森林や草原の状態を監視し、環境変動の影響を把握して保全活動をサポートする。
インフラ・医療:
・遠隔点検:送電線や山奥の鉄道線路などを定期的に監視・検査し、保守作業の効率化と安全性の向上を図れる。
・医療品・血液の配送:遠隔地の医療施設や緊急手術が必要な患者へ、薬品や輸血用血液を迅速に届けることで、命を救う対応が可能になる。
レジャー産業:
・ライブストリーミング:個人のゴルフプレイなどをリアルタイムで配信するサービスが提供できる。
・ルート案内と安全監視:ハイキングコースなどをドローンで監視し、リアルタイムの案内や安全情報を提供できる。
災害分野:被災状況の確認:土砂崩れや大津波発生時の被災状況をいち早く確認することで、救助や支援計画を迅速に行うことができる。
また、ドローンにメガホンを装着して避難誘導を行い、誘導員の安全を確保することも可能。
特に注目すべきは、DJI FlyCart30でのつり下げ輸送申請が発端となり、レベル3.5の航空局標準マニュアルが改正され、つり下げ輸送が可能になったことです。
この改正により、他の事業者もつり下げ輸送の申請がしやすくなり、ドローン物流の可能性が大幅に広がっています。
レベル3.5飛行の要素のうち、「移動車両等(列車、船舶等の乗り物を含む)上空の一時横断」を含まない、機体カメラのみで立入管理を行う飛行が「新レベル3飛行」として位置づけられています。
【主な飛行内容】
レベル3.5飛行:機上カメラで立入管理を行い、移動車両等の上空を一時的に横断する目視外飛行
新レベル3飛行:機上カメラで立入管理を行うが、移動車両の上空は横断しない目視外飛行
【技能証明(国家資格)】
レベル3.5飛行:飛行許可必須(二等以上+目視外の限定解除)
新レベル3飛行:必須ではない
【第三者賠償責任保険】
レベル3.5飛行:必須
新レベル3飛行:必須ではない
新レベル3飛行は従来のレベル3飛行の安全体制の見直しという位置づけになっており、移動車両等の上空を飛行させない場合は技能証明と第三者賠償責任保険が必須ではありません。
ただし、申請手続き上はレベル3.5飛行と新レベル3飛行が同様の流れで行われるため、どちらの飛行方法を選択する場合でも、事前に要件を正確に把握しておくことが重要です。
レベル3.5飛行の許可を取得するためには、操縦者の資格、機体の性能、保険の加入、飛行エリアの選定という4つの重要な前提条件を満たす必要があります。
これらの条件は従来のレベル3飛行よりも厳格に設定されており、事前の準備と確認が申請成功の鍵となります。
レベル3.5飛行の許可取得には、操縦者が国家資格である「二等以上の無人航空機操縦者技能証明」を保有していることが必須条件となります。
この技能証明に加えて、「目視外飛行」の限定解除を完了していることも求められます。
機体の最大離陸重量が25kg以上の場合には、さらに「25kg以上の限定解除」も必要です。
一等の技能証明は必須ではなく、二等でも申請可能な点がポイントとなっています。
レベル3.5飛行を行う機体には、以下の機能要件を満たすことが求められます。
【カメラと映像伝送機能】
【機体状態の監視機能】
【安全確保のための機能】
【飛行実績】
申請時には、メーカーが保証する「落下距離」と「初期故障期間」の証明資料が必要不可欠です。
2024年5月からDJI社がMavic 3シリーズやAir 3、FlyCart 30などの主要機体でこれらの情報提供を開始したため、申請可能な機体の選択肢が大幅に拡大しました。
レベル3以上の飛行許可ではメーカーの資料提供が必要不可欠です。
レベル3.5飛行では移動中の車両等の上空を飛行するため、万一の事故に備えて第三者賠償責任保険への加入が義務付けられています。
補償額については許可申請上の定めは無く、事業者が設定する必要がありますが、一般的に「対人対物1億円」が標準的な水準とされています。
墜落事故等によって第三者の負傷や交通障害が発生した場合でも、十分な補償を行えるよう配慮されているためです。
なお、「新レベル3飛行」(移動車両上空を飛行しない場合)では、保険加入は必須要件ではありません。
レベル3.5飛行は「第三者が存在する可能性が低い場所」に限定されており、具体的には山、海水域、河川・湖沼、森林、農用地などの人口密度が低い地域が対象となります。
これらのエリアでは、機体カメラによる立入管理措置が効果的に機能するためです。
重要な制約として、人口集中地区(DID)は飛行経路に含めることができません。
飛行計画を立てる際は、事前に対象エリアがDIDに該当しないかを十分に確認することが必要になります。
レベル3.5飛行の許可申請は、国土交通省本省と地方航空局の2つの機関との連携手続きが必要な、従来の包括申請とは大きく異なるプロセスです。
事前相談から実際の飛行開始まで、4つの主要ステップを順序立てて進める必要があり、全体の手続き完了までには初回の場合は、申請で3~4ヶ月程度を要することが多いです。
DIPS2.0での本申請に先立ち、まず国土交通省航空局安全部無人航空機安全課制度改正担当へメールで「事前相談」を行う必要があります。
事前相談では以下の情報を明確に伝えることが重要です。
この事前相談は、その後の申請手続きをスムーズに進めるための重要な第一歩となり、航空局との連携体制を構築する基盤となります。
事前相談後に航空局から送付される(初めての場合)「運航概要宣言書」は、レベル3.5飛行のルールを遵守することを宣言する書類です。
「運航条件等設定書」では、気象条件や飛行リスクと対策を記載します。
初回申請時には、これらに加えて「追加基準適合状況」を示す資料、リスク評価と対策をまとめた資料、メーカーが保証した落下距離の範囲内を示す飛行経路図など、複数の補足資料の作成が求められます。
これらの書類作成は専門的な知識を要するため、申請の最も難易度が高い部分となっています。
国土交通省本省との事前調整が完了し、「航空局管理番号」が付与された後、管轄の地方航空局(東京または大阪)へDIPSを用いて本申請を行います。
2024年12月からDIPS2.0での申請が可能になったことで、手続きが電子化されました。
DIPS2.0での入力で特徴的な部分は、「立入管理措置」でレベル3.5飛行用の項目を選択する点と、従来の個別申請とは異なる特殊な「飛行経路」の入力方法です。
事前調整が完了しているため、地方航空局での審査は比較的迅速に進行します。
許可書が発行された後も、実際に飛行を開始する前に重要な手続きが残されています。
飛行の1週間前までに消防防災ヘリやドクターヘリなどの「有人航空機団体」へ飛行内容を周知する必要があります。
また、飛行の1開庁日前までに、管轄の地方航空局へ航空情報(NOTAM)発行のための詳細通知(飛行内容通知書)を行うことが義務付けられています。
これらの事前連絡は、空域の安全確保と有人航空機との衝突回避のための重要な安全措置となっています。
レベル3.5飛行の申請は従来の包括申請や個別申請とは大きく異なる特殊な手続きであり、事業者が見落としがちな重要なポイントが数多く存在します。
種別でいうと、レベル3.5飛行は個別申請の中の1つです。
申請の失敗や遅延を避けるためには、包括申請との違い、初回申請の特別な要件、専門家活用のタイミングを正確に把握することが必要不可欠です。
レベル3.5飛行では、飛行経路図の作成が必須であるため、場所を特定しない「包括申請」は適用できず、案件ごとに「個別申請」が必要となります。
この制約は、機体カメラによる立入管理措置を実施するために、具体的な飛行範囲とメーカーが保証した落下距離の範囲内を立入管理区画として地図上に明示する必要があるためです。
現在、業務で包括申請の許可を取得している事業者であっても、レベル3.5飛行を行うためには必ず新規で個別申請を行わなければなりません。
ただし、許可期間については個別申請でありながらイベント上空飛行等と違い、最大1年間で取得可能である点が特徴です。
レベル3.5飛行の初回申請では、手続きの簡略化が適用されず、航空局から運航体制の妥当性を確認するために多くの資料提出を求められます。
本来は提出不要で事業者側で具備すればよいとされる「追加基準適合状況」の書類なども、初回は航空局への提出が必要となり、まるで二度目の許可申請書を作成するような感覚になります。
初回申請を経験した事業者によると、量も多く、初めて見る項目が多いため非常に大変な作業となるようです。
しかし、2回目以降の申請では、初回に提出した「運航概要宣言書」が参照されるため、手続きが大幅に簡略化されます。
レベル3.5飛行の申請は、通常の許可申請とは異なり、国交省本省との事前調整や専門的な書類作成など、難易度が高い手続きとなっています。
申請書の作成だけでなく、飛行場所の法令調査やリスク評価、航空局との調整など、専門的な知見が必要な場面で行政書士が重要な役割を果たします。
特に初回申請は手続きが煩雑で、様式のない資料作成が多数必要となるため、専門の行政書士に依頼することで、事業の信頼性を損なうことなく、スムーズかつ確実に許可を取得できるメリットがあります。
実際の事例では、初回だけ専門行政書士を起用し、国交省の登録実績を作った後に2回目以降を自社で行う方法が効果的とされています。
レベル3.5飛行は、地上カメラ、気象計や看板の設置が不要になることで、建設、農林業、水産業、環境調査、インフラ点検、医療など幅広い分野での活用が期待され、ドローンビジネスの可能性を大きく広げる画期的な制度です。
しかし、その許可申請は国交省本省との事前調整、専門的な書類作成、DIPS2.0での特殊な申請手続きなど、従来の包括申請とは次元の異なる高い専門性が求められます。
初回申請では様式のない複数の資料作成が必要で、申請経験者からも「量も多く、初めて見るものが多いため大変」との声が上がっています。
バウンダリ行政書士法人では、年間相談件数10,000件突破、許可取得率100%の豊富な実績により、レベル3.5飛行ような高難度申請にも確実に対応いたします。
まずは無料相談をご活用ください。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
YouTubeで日々ドローン法務に関する情報を発信中!「ドローン教育チャンネル」はこちら