2026.02.13
ドローン基礎知識
2026.01.16
「ドローンの多数機同時運航で運用を行い、そのの許可を取りたいけど、何を準備すればよいのか分からない」
そのような悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
無人航空機の多数機同時運航は、1人の操縦者が複数のドローンを同時に飛行させる形態です。実施にはレベル3以上の国土交通省の飛行許可が必要で、機体や操縦者、運航管理など、満たすべき要件や安全への対策が細かく定められています。
そこで本記事では、多数機同時運航の概要、許可を得るための要件、申請手順、国内の事例までを分かりやすく解説します。
多数機同時運航の許可取得をスムーズに進めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
無人航空機の多数機同時運航とは、1人の操縦者が複数のドローンを同時に操縦・管理する形態のことです。
ドローンの活用は、空撮や測量、インフラ点検、農業や物流など幅広い分野に広がっており、作業効率を高めるうえで多数機同時運航の重要性が増加しています。
限られた人員で多くの機体を安全かつ効率的に運用するには、飛行管理体制の整備や法令の遵守が欠かせません。
現在、ドローンのさらなる活用拡大に向けて多数機同時運航の普及が進められており、国や企業による実証実験も積極的に行われています。
国土交通省は2025年3月28日にガイドライン(第一版)を公表しました。
バウンダリ行政書士法人も、多数機同時運航の普及拡大に向けたスタディグループの構成員として、このガイドライン作成に協力しています。
無人航空機の安全を確保するとともに、事業化の推進や実社会での活用を目的としており、対象範囲は、レベル3または3.5飛行における操縦者1人あたり最大5機までの飛行で、ドローンショーなどのレベル1・2飛行における多数機同時運航は含まれません。
今後は、新技術の導入や自動化技術の進展に合わせて対象範囲や機体数の上限を拡大し、ガイドラインの見直しも随時行われる予定です。
本章では、多数機同時運航の許可を得るための要件や安全対策についてご紹介します。
それぞれの特徴を理解することによって、スムーズな許可取得につながるでしょう。
多数機同時運航には、大きく2つの制御方式があります。
制御方式によって飛行の形態や制御の仕組みが異なるため、まずは基本となるイメージを把握しておきましょう。
先導機のみ制御し、他機を追従させる形態
機体ごとに独立した制御を実施する形態
多数機同時運航の許可を得るには通常の飛行許可申請と同じく、「機体」「操縦者」「運航管理」の3つの要件を満たす必要があります。
各要件を正しく理解して、スムーズに許可申請できるように準備しておきましょう。
多数機同時運航を行うには、使用する機体が安全や安定性の面で一定の基準を満たしていなければなりません。
ガイドライン中では、国土交通省が定める「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」の中の次のような要件が示されています。
審査要領4-1-1(5)
審査要領5-4(1)
ほかにも、補助者を配置せずに飛行を行う場合など、さらに追加の基準にも適合する必要があります。
各詳細については、国土交通省の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」を参照してください。
多数機同時運航を行うには、操縦者が十分な知識と能力を備え、適切な訓練を受けていることが求められます。
操縦者に求められる要件、必要な知識・能力は次の通りです。
知識:多数機同時運航特有のリスクや、飛行機体数の増加によるリスクを理解していること
能力:異常発生時にも他機の飛行監視を継続できること、また複数機でトラブルが発生しても同時に対応できる判断力と操作能力を有していること
訓練:同時飛行する機体数を段階的に増やし、操作や判断に十分に習熟すること、さらに緊急時対応の訓練を繰り返し実施していること
各要件を満たすことにより、安全な飛行を維持し、万一のトラブルにも迅速かつ的確に対応できる体制を整えられます。
多数機同時運航の許可を申請するには、操縦者だけでなく、組織全体で飛行を支える体制とシステムの整備が不可欠です。
運航管理要件は「組織」と「運航システム」の2つに分けられ、それぞれ異なる基準が設けられています。
組織の要件
運航システムの要件
各要件を満たすことは、多数機同時運航の許可を申請するうえでの必須項目です。
同時に、複数機の同時飛行を行ううえで、安全かつ効率的に飛行管理を実施できる体制となるでしょう。
ドローンなどの無人航空機を飛行させる際は、さまざまなリスクへの対策を考慮する必要があります。
次にご紹介する飛行リスクの具体的な対策例や、リスク分析法についても理解を深めておきましょう。
多数機同時運航では、単機飛行よりも複雑な状況が発生しやすく、注意すべき危険事象への対策が重要です。
国土交通省のガイドラインでは、代表的な3つの危険事象と、それぞれに対する予防策および万一の際の対応策を示しています。
なお、下の表のGNSSとは衛星による位置測定システムのことです。
各対策を事前に計画に組み込むことで、多数機同時運航を安全に実施する体制が整うでしょう。
国土交通省のガイドラインでは、リスク分析手法として「ボウタイ分析」を推奨しています。
ボウタイ分析とは、危険事象に対する原因、結果、対応策を図示し、シンプルに理解できるよう整理する方法です。
図で表すことにより、有効な対応策が適切に考慮されているかどうかを確認できます。
ボウタイ分析の手順は、次の通りです。
作成した図をもとに分析を進め、不十分と判断された場合は追加対策を考案し、図に反映させましょう。
ボウタイ分析を行うことで、潜在的なリスクとその対策を視覚的に整理でき、安全な多数機同時運航の計画立案に役立ちます。
続いては、多数機同時運航の許可申請の流れについてご紹介します。
レベル3飛行とレベル3.5飛行では申請手順が異なるため、事前に確認しておくことが大切です。
また、飛行レベルの詳細については、下記の関連記事をご参照ください。
レベル3飛行で多数機同時運航を行う場合は、従来通りの審査手続きで飛行の許可・承認を取得します。
過去に同様の飛行許可を得ていれば、申請書番号を引用することで、数日で許可・承認取得を目指すことも可能です。慣れていなければ1ヶ月以上かかることも多いため、注意が必要です。
最終的には国土交通省は最短1日での許可・承認取得を目標としています。
申請にあたっては、下記の対応が求められます。
ガイドラインに即した個別措置の検討:
ガイドラインに即したリスクの検証と対策の検討
申請書類の提出(個別措置を含む) :
目視外飛行と同様の申請書類、対策一式が含まれた書類の提出
許可・承認:
補正指示があった場合の再検討
次回以降同様の飛行を行う場合の迅速な許可・承認 :
ヒヤリ・ハットに関する情報共有や、数日で許可・承認を得る場合の対応
正しい手順を踏むことで、レベル3飛行における多数機同時運航の許可申請をスムーズに進められるでしょう。
レベル3.5飛行で多数機同時運航を行う場合は、レベル3.5飛行の延長となります。
従来の審査要領に基づく申請に加え、ガイドラインで定められた個別の措置を「運航概要宣言書」に記載しなければなりません。
事前に航空局と協議を行い、申請内容に不備がなければ、数日~1ヶ月程度で許可・承認が得られるでしょう。
こちらもレベル3飛行と同様に、国土交通省は最短1日での許可・承認取得を目標としており、実際に1日で許可が出たケースもあります。
申請の流れは、次の通りです。
ガイドラインに即した個別措置の検討:
ガイドラインに照らしたリスクの検証と対策の検討
航空局へ運航概要宣言書を事前提出 :
目視外飛行同様の申請書類と対策一式を運航概要宣言書にまとめる
航空局との合意後に申請 :
補正指示があった場合は必要な修正を実施
許可・承認 :
運航の実施、ヒヤリ・ハット情報の共有
手順に沿って正しく準備を進めることで、レベル3.5飛行における多数機同時運航の許可申請を適切に行えるでしょう。
ここからは、多数機同時運航における国内の事例を3つご紹介します。
日本航空は、2024年に1人の操縦者が5機のドローンを同時に運航する「1対5」の多数機同時運航を実施しました。
飛行エリアは、埼玉県、北海道、鹿児島県、千葉県の全国4地点にわたり、北から南まで異なる地域で実証を行っています。
複数地点での飛行で、気象条件や地形の違いなど、さまざまな環境下での多数機同時運航のモデルケースを検証しました。
また、操縦者の視線計測や視線ヒートマップの作成、作業負荷との関連調査も行われています。
国内での多数機同時運航におけるヒューマンファクタの分析事例は少ないため、操縦者の状況認識能力や対応能力の限界を検討するうえでの参考にもなるでしょう。
KDDIも2024年に1人の操縦者が3機のドローンを同時に運航する実証を実施しました。
対象は大規模太陽光発電施設での警備用途を想定しており、栃木県や茨城県の立入管理区画のある3拠点に対して、各拠点で1機ずつを遠隔地から飛行させました。
飛行体制は、メイン操縦者とサブ操縦者が遠隔操縦拠点におり、現地には補助者を配置していません。
メイン操縦者は、離着陸時の安全確認やトラブル発生時の対応、不審者発見時の操作介入による追跡を担当します。
サブ操縦者は、プレフライトチェックや不審者の確認を行いました。
この実証により、遠隔地からの複数拠点同時運航における飛行管理の有効性や、操縦者役割分担の実践的な検証が可能となりました。
楽天グループも、2024年に福島で物流ユースケースを想定した遠隔からの3機同時飛行の検証を実施しました。
飛行時の人員体制は、遠隔操縦者1名、副操縦者1名、拠点スタッフ1名、補助者3名の計6名です。
飛行時に異常が発生した際は、遠隔操縦者から副操縦者へ他機体の操縦や監視権限が譲り渡される仕様になっています。
遠隔操縦者は、遠隔監視システムとグランド・コントロール・システムを活用して多数機同時運航を行っている点が特徴的です。
遠隔監視システムでは飛行前・飛行中・着陸時の情報収集を実施し、グランド・コントロール・システムでルート転送や離陸コマンドによる機体制御に対応しています。
また、拠点スタッフアプリや拠点ポート周辺システムの開発・実装を行っていることも特徴に挙げられるでしょう。
この実証により、遠隔からの複数機同時飛行における情報管理の有効性や、操縦者の役割分担の実践的検証が可能となりました。
多数機同時運航の許可申請は、入念な飛行運用計画の策定と、的確な申請手続きが求められます。
適切に準備できなければ許可取得に時間や手間がかかることも少なくないため、専門家によるサポートが重要となるでしょう。
バウンダリ行政書士法人は、ドローンの許認可申請や法務顧問を専門とする行政書士法人です。
また、多数機同時運航のガイドライン策定にあたり、普及拡大を目的としたスタディグループの構成員として参画しています。
多数機同時運航の許可申請でお悩みの方は、安心して相談できる専門家として、ぜひバウンダリ行政書士法人へお問い合わせください。
多数機同時運航は、複数の無人航空機を同時に飛行させるため、単機飛行よりも高度な安全管理や計画が求められます。
国土交通省のガイドラインには飛行形態やリスクに応じた分類や要件が示されており、これらを正しく理解することが許可取得の第一歩となるでしょう。
また、要件やリスク対策などの条件を事前に整理して審査要領に沿った申請を行えば、手続きをスムーズに進めやすくなります。
多数機同時運航については勿論のこと、ドローンに関する各種申請や運用についてお悩みの方は、ドローン法務の専門家であるバウンダリ行政書士法人にご相談ください。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
ドローンに関する許認可申請、許認可管理、法務顧問を専門とするバウンダリ行政書士法人の代表。飛行許可申請をはじめメーカー支援、登録講習機関の開設やスクール運営、事業コンサルティング、空飛ぶクルマなど支援の幅を広げ日本屈指のサポート実績を誇る。2025年のドローン許認可対応案件は10,000件以上、登録講習機関のサポート数は200社を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」や公式LINEを開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信している。