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ドローンで農薬散布する場合は許可申請が必須!必要な3つの手続きについて解説

2025.10.14

ドローンで農薬散布する場合は許可申請が必須!必要な3つの手続きについて解説

ドローンによる農薬散布は、農業の省力化・効率化を大きく推進し、近年では人手不足や高齢化が進む農業現場にとって有効な手段として注目されています。

一方で、その活用には航空法や農薬取締法に基づく厳格なルールが設けられており、正しい知識と手続きなしに運用することは大きなリスクを伴います。

中でも「機体登録」「飛行許可・承認」「飛行計画の通報」は、すべて義務化された手続きであり、怠れば罰金や今後の業務に大きな影響を与えかねません。
さらに、地域の信頼を損ね、農業ドローンそのものの社会的評価にも悪影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

本記事では、これから農薬散布用ドローンの導入を検討している方に向けて、導入時に必要な法的手続きの詳細、操縦に必要な資格、講習の内容や費用、そして違反を防ぐための注意点までを、初心者にもわかりやすく解説します。

目次

  1. ドローンで農薬散布する際には許可申請が必要
  2. ドローンを使った農薬散布に必要な3つの手続き
    2-1. システムへドローンの機体を登録する
    ① 機体登録の手順
    ② リモートIDについて
    ③ 機体登録の料金
    2-2. 国土交通省へ飛行の許可申請を出す
    ① 飛行申請するための操縦者要件
    ② ドローンにおける飛行申請の種類
    ③ オンラインで飛行の許可申請を出す際の事前準備
    ④ オンラインで飛行の許可申請を出す手順
    2-3. ドローン情報基盤システムへ飛行計画を登録する
  3. 農業用ドローンを扱うために資格は必要なのか?
  4. ライセンス講習の費用と日程
  5. 農業用ドローンを使用する際の注意点
    5-1. 航空法に違反した場合、罰則の対象となる
    5-2. 飛行許可をもらうためには、一定の操縦技術が必要となる
    5-3. 改造する際は再登録をする必要がある
  6. 農薬散布ドローンでよくある質問
    6-1. 農薬散布ドローンを扱うのに資格や免許は必要?
    6-2. ドローンが飛べる高さは何mまで?
  7. ドローンで農薬散布する際の許可申請ならバウンダリ行政書士法人へ
  8. ドローンで農薬散布するなら必ず許可を取るように

1. ドローンで農薬散布する際には許可申請が必要

ドローンで農薬散布を行う場合、航空法で定められた特定飛行に該当するため、国土交通省への許可・承認申請が義務付けられています。

以下の場合は特定飛行に該当するため、許可・承認申請が必要です。

  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人または物件と30m未満の距離での飛行
  • 人口集中地区(DID)の上空での飛行
  • 危険物の輸送
  • 物件の投下

「夜間飛行」では、早朝作業の準備時間が夜間に重なる可能性があるため、念のために申請しておくケースが多いです。

「人または物件から30m未満での飛行」も、農地周辺の電柱や電線などの存在により、ほぼ確実に必要になるでしょう。

「危険物の輸送」は農薬が危険物に分類されるため必須です。

「物件の投下」は散布行為そのものが該当し、許可には5回以上の散布訓練実績が必要とされています。

2. ドローンを使った農薬散布に必要な3つの手続き

農薬散布ドローンの運用には、3つの手続きが必要です。
順番に見ていきましょう。

2-1. システムへドローンの機体を登録する

まずは、ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)へ機体を登録する必要があります。

2022年6月20日より、100g以上のドローンは機体登録が義務化されました。

登録を受けていない機体の飛行は禁止されており、違反すると1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。

① 機体登録の手順

機体登録は、国土交通省の無人航空機ポータルサイトから詳細が確認できます。
具体的な流れは以下のとおりです。

  1. アカウントを開設していない方は氏名・住所・連絡先などの個人情報、企業情報を登録する
  2. ログインし、機体情報の入力と本人確認を実施する
  3. 指定された方法で手数料を支払い、登録記号・登録情報を確認する
  4. 専用アプリを使用してリモートID機器に登録情報を書き込む

機体登録の処理期間は手数料納付通知まで1〜5営業日、納付後の登録記号発行まで1〜5営業日が標準です。
余裕をもって申請するようにしましょう。

DIPS2.0ログイン用の申請者IDを発行するために、メールアドレスを作成しておきましょう。
「information@dips.mlit.go.jp」からのメール受信を許可する設定も必要です。

また、PCでドローン情報基盤システムを使用する際は、以下の環境で行いましょう。

【Windowsの場合】

OS :Microsoft Windows 11、 version 21H2
ブラウザ:Google Chrome(106 以降)、Microsoft Edge(106 以降)

【macOSの場合】

OS:macOS Monterey 12.6
ブラウザ:Google Chrome(106 以降)、Safari(16 以降)

こうした準備を整えてから申請手続きを開始することで、スムーズな申請処理が可能になります。

② リモートIDについて

リモートIDは「空飛ぶナンバープレート」として機体の情報を電波で発信する装置です。

自動車のナンバープレートと同様の機能を持ちますが、上空飛行中は目視確認できないため、無線による情報発信で機体所有者の特定を可能にします。

発信される情報により、警察や国土交通省が飛行中のドローンを識別できる仕組みです。

一般向けドローンでは内蔵型の機体も登場していますが、農業用ドローンはDJI社の機体以外は内蔵されていないものもあります。

リモートIDが内蔵されていない機体の場合は、民間メーカー製の外付けリモートID機器を別途調達して、機体に装着する必要があります。

機器の価格は製品によって幅がありますが、1~2万円のものが主流です。

バウンダリ行政書士法人でも外付けリモートID機器の販売を行っています。

③ 機体登録の料金

機体登録の手数料は申請方法により異なります。
具体的な料金は以下のとおりです。

1台機体登録を行う場合
書類申請:2,400円
免許証やパスポートによるオンライン申請、代理申請: 1,450円
マイナンバーカードかgBizID(法人向けの認証システム)による申請:900円

機体登録の申請方法は書面とオンラインの2種類がありますが、スマートフォンからも手続き可能なオンライン申請が推奨されています。
書面申請も可能ですが、電子メール認証が必要なため、オンライン環境での操作は避けられません。

複数機を同時に申請する場合、2台目以降は書類での申請が2,000円、免許証やパスポートによるオンライン申請が1,050円、マイナンバーカードかgBizIDの申請は890円で実施できます。

支払い方法はクレジットカード決済、インターネットバンキング、ATM振込から選択できます。

機体登録は1度に20台まで申請可能です。

2-2. 国土交通省へ飛行の許可申請を出す

続いて、国土交通省から飛行を許可してもらうための申請が必要です。

① 飛行申請するための操縦者要件

飛行許可申請には以下の操縦者要件を満たさなければなりません。

  • 10時間以上の飛行経験と5回以上の物件投下(液状・霧状でも可)経験
  • ドローンに関する法令や安全飛行の知識
  • 飛行マニュアルに記載されている操縦技術

飛行経験を積むための訓練は、経験豊富な指導者の監督下で、許可が不要な場所または訓練許可を得た場所で実施する必要があります。

知識面では航空法などのドローンに関連する法令と、安全飛行に関する理解が必須です。

操縦技術については、気象判断能力に加え、上昇・ホバリング・旋回・移動・下降といった基本操作を確実に実施できる技量が要求されます。

こうした要件をクリアするため、専門的なカリキュラムを持つドローンスクール(登録講習機関)で学習するのも選択肢となるでしょう。

② ドローンにおける飛行申請の種類

ドローンの飛行申請には「個別申請」と「包括申請」がありますが、農薬散布では包括申請が推奨されています。

個別申請は特定の日(期間)・場所に限定された申請方法で、悪天候で作業が延期された場合は再申請をしなければなりません。

また、代理申請を利用している場合は手続きのたびに費用が発生するため、コスト面でも不利です。

一方、包括申請では一定の期間内であれば全国で飛行でき、複数農地での散布作業も一括でカバーできます。

農薬散布は作物の生育段階や病害虫の発生状況に応じて実施時期が変動するため、この柔軟性は大きなメリットです。

包括申請は最長1年まで設定可能で、シーズンを通じた継続利用に適しています。

③ オンラインで飛行の許可申請を出す際の事前準備

ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)での飛行許可申請には、事前に準備しておかなければいけない情報があります。

  1. 飛行概要
    ・いつ、どこで、どのような飛行を行うか
  2. 機体の機能及び性能
    ・鋭利な突起物のない構造であること(構造上必要なものを除く)
    ・ドローンを正確に視認できる灯火又は表示等を有していること
    ・操縦者が燃料又はバッテリーの状態を確認できること等
  3. ドローンを飛行させる者の飛行経歴、知識、技能
    ・ドローンの種類別に、10時間以上の飛行経歴を有すること(訓練飛行を除く)
    ・航空法関係法令、安全飛行に関する知識を有すること等
  4. 安全を確保するための体制
    ・申請書の内容、添付書類である飛行マニュアルでの安全対策

上記4つの観点から「基本的な基準(要件)」と「飛行形態(4つの飛行空域、6つの飛行方法)に応じた追加基準(要件)」を定め、総合的に許可承認の適合性について判断されます。

④ オンラインで飛行の許可申請を出す手順

ここからは、オンラインでの飛行申請の大まかな手順を紹介します。

DIPS2.0にログインし、続いて使用機体と操縦者の詳細情報を入力してください。

その後申請書を作成・提出しますが、その際内容に不備があれば補正指示がメール通知され、修正後の再提出が必要です。

申請書の審査が完了した後は許可書が作成され、その際に電子許可書または書面許可書を選択できます。

許可書の登録が完了した旨の電子メールを受け取った後は、システムからファイルをダウンロードしましょう。

書面許可書を選択した場合は、電子メールを受信した後に、許可書を受け取るための返信用封筒を提出先の地方航空局・空港事務所などに郵送する必要があります。

2-3. ドローン情報基盤システムへ飛行計画を登録する

飛行許可を取得した後、飛行前にDIPS2.0で飛行計画の通報(登録)を行わなければいけません。

飛行計画の通報は安全確保のために航空機とドローンの飛行情報を共有し、農薬散布の都度、飛行計画の事前登録が義務付けられています。

「いつ、どこで、何を飛ばすか」の情報を事前に共有することで、空域の安全性を確保します。

登録が必要な項目は主に以下です。

  • 飛行経路
  • 飛行する高度
  • 飛行する日時
  • 操縦者名と機体情報

スマートフォンからも登録可能で操作は比較的簡単ですが、システムの動作が重くマップ表示に時間を要する場合があります。

そのため、作業直前の慌ただしい時間帯は避けて、余裕を持ったスケジュールで事前登録しておきましょう。

3. 農業用ドローンを扱うために資格は必要なのか?

現時点では農業用ドローンの操縦に国家資格(無人航空機操縦者技能証明)は不要ですが、飛行許可申請には一定の技能と知識が必要なため、実際には国家ライセンスの受講が推奨されます。

また、農薬用ドローンを購入する条件として、民間ライセンス講習の受講を義務付けられていることもあります。

2022年12月に開始された国家資格制度は、主に第三者上空での補助者なし目視外飛行(レベル4)を想定して創設されました。

農薬散布はレベル2飛行に分類されるため、国家資格の取得義務はありません。

しかし、飛行許可申請では操縦技能と法令知識の証明が求められます。

また、農薬散布は航空法だけでなく農薬取締法にも関わるため、農薬の適正使用に関する知識も必要です。

こうした要件を効率的に満たすため、各農業用ドローンメーカーが提供する民間ライセンス講習が広く活用されています。

4. ライセンス講習の費用と日程

農業用ドローンのライセンス講習費用は、開催される場所やコースによって異なりますが、10万〜30万円程度が相場とされています。

受講期間も操縦経験の有無によって異なり、ドローン経験者なら2日程度、未経験者でも3〜5日が目安です。

講習では操縦技術に加え、航空法や農薬取締法などの法令知識、安全管理についても学ぶことが可能です。

5. 農業用ドローンを使用する際の注意点

農業用ドローンを操縦する際には、気をつけなければならない注意点が存在します。
内容を確実に理解しておきましょう。

5-1. 航空法に違反した場合、罰則の対象となる

航空法に違反した場合、以下のような罰則の対象となります。

  • 機体登録なしに無人航空機(100グラム以上)を飛行させた場合、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
  • 飛行計画を通報せずに特定飛行を実施した場合、30万円以下の罰金
  • 飛行日誌を携行せず、飛行に日誌に必要な項目を記載しなかった場合、10万円以下の罰金

また、飛行許可申請時に提出した飛行マニュアルへの違反をした場合、許可の取り消しや信用問題となる恐れがあるため注意しましょう。

5-2. 飛行許可をもらうためには、一定の操縦技術が必要となる

農薬散布の飛行許可を得るためには、操縦技術の基準を満たす必要があります。

ドローンの操縦自体に資格は不要ですが、農薬などの空中散布では国土交通省が定める技術水準をクリアしていなければなりません。

航空局標準マニュアルに基づく訓練内容や技能要件が詳細に規定されており、初めての方は、独学での習得は現実的ではないでしょう。

近年では、飛行技能や知識を習得できるドローンスクール(登録講習機関)が全国に設置されています。

農業分野に特化したスクールも増加しており、操縦技術に加えて農薬の特性やドリフト対策などの専門知識も習得可能です。
農薬のドリフトとは、意図しない場所や目的外の作物への農薬付着のことです。

農薬散布では、周辺への飛散による近隣トラブルや環境汚染のリスクがあるため、スクールに通うことで適切な散布技術と安全管理の知識を身につけましょう。

5-3. 改造する際は再登録をする必要がある

メーカーの許容範囲を超える機体改造を行った場合は、再登録が必要となります。

初回の登録時とは異なり、改造した機体は詳細な情報を自己申告しなければなりません。
審査も改造していない場合と異なり、手続きも時間がかかる傾向があります。

再登録が必要な主な改造例は以下のとおりです。

  • 機体重量・最大離陸重量・機体寸法のいずれかが元の仕様からプラスマイナス10%以上の変動
  • 単発機から双発機への変更や、エンジン機から電動機への動力方式の転換

改造を検討する際は、事前に登録要件を確認するようにしましょう。

6. 農薬散布ドローンでよくある質問

ここでは、農薬散布ドローンでよくある質問をまとめました。

6-1. 農薬散布ドローンを扱うのに資格や免許は必要?

農薬散布ドローンを扱うために資格や免許は必要ありませんが、いずれかのドローン講習を受ける必要があるでしょう。

また、農業用ドローンの購入のため、事前に講習受講が義務付けられている場合もあります。

農薬散布ドローンの飛行許可を取得するには、一定の操縦技能と飛行経験が求められるため、民間スクールでの講習受講が現実的な選択となります。

法的義務ではないものの、安全で効果的な農薬散布を実現するため、適切な知識と技術の習得は不可欠といえるでしょう。

6-2. ドローンが飛べる高さは何mまで?

航空法で定められたドローンの無許可飛行高度は150m未満ですが、農薬散布の場合は高度が高すぎると風によるドリフトが発生しやすく、低すぎると散布むらの原因となるため、適切なバランスが求められます。

最適な散布高度は、機体性能・散布方式・農薬の種類によって異なりますが、明確な基準がない場合は、農林水産省の安全ガイドラインに従い「作物上2m以下」で散布するようにしましょう。

7. ドローンで農薬散布する際の許可申請ならバウンダリ行政書士法人へ

ドローンによる農薬散布の許可申請は、複雑な手続きと専門知識が求められる分野です。

機体登録から飛行許可申請、飛行計画登録まで、3つの手続きにはそれぞれ異なる要件と提出書類があり、申請内容に不備があると審査が長期化し、散布適期を逃すリスクがあります。

バウンダリ行政書士法人では、農薬散布ドローンの許可申請をサポートしており、豊富な申請実績に基づく確実な手続き代行を提供しています。

ドローンによる農薬散布を検討していて、手続きに少しでも不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

8. ドローンで農薬散布するなら必ず許可を取るように

ドローンを活用した農薬散布は、農業の効率化と労働負担軽減に大きな効果をもたらしますが、導入には適切な許可申請が必要です。

機体登録・飛行許可申請・飛行計画登録の3つの手続きは、単なる事務作業ではなく安全で法令に則った運用をするための重要なプロセスです。

違反した際には重い罰則が科される可能性があり、事故発生時の責任問題にも直結します。

申請手続きには専門的知識と正確な書類作成が求められるため、不明な点があれば専門家に相談することをおすすめします。

正しい知識と手続きにより、ドローン農薬散布の導入を成功させ、持続可能な農業経営を実現しましょう。

SUPERVISOR

監修者

代表行政書士 佐々木 慎太郎

バウンダリ行政書士法人

代表行政書士 佐々木 慎太郎

(Shintaro Sasaki)

日本屈指のサポート実績を誇る、ドローン法務のプロフェッショナル

行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
YouTubeで日々ドローン法務に関する情報を発信中!「ドローン教育チャンネル」はこちら