2024.11.14
資格・スクール
2023.08.07
2022年に創設されたドローンを含む無人航空機に関して初の国家資格となる「無人航空機操縦者技能証明」。資格取得にどのくらい費用がかかるか知りたい方が多数いらっしゃいます。
今回は、ドローンの国家資格こと無人航空機操縦士を取得する際にかかる費用や、取得方法ごとのメリット・デメリットを解説します。
まずは国家資格として制定された無人航空機操縦士資格において、取得費用も左右される基礎知識を把握しておきましょう。
無人航空機操縦士は等級としての資格の区分以外に無人航空機の種類・最大離陸重量・無人航空機を飛行させる方法に分かれています。
無人航空機操縦士はドローンだけではなく、飛行機と回転翼航空機(ヘリコプター)も含んだ合計3種類の無人航空機を対象にしている国家資格です。
なお、無人航空機操縦士においてドローンは、回転翼航空機(マルチローター)と称されています。
一般販売されているドローンであれば25kg未満の枠で問題ありませんが、産業用ドローンのような大型機を飛行させる場合は25kg以上の枠で国家資格を取得しましょう。
また、目視外飛行・夜間飛行などは「限定変更」と呼ばれる追加受験が必要な飛行方法です。
スタンダードな無人航空機操縦士では、昼間飛行と目視飛行しか操縦技能を認定されません。
ドローンの民間資格を取得する際、ドローンスクールを受講した方が多いと思います。
民間資格はドローンスクールで座学・操縦練習・テストを受けることで民間資格を取得できますが、国家資格も同じです。
国土交通省から「登録講習機関」として認定を受けたドローンスクールが行う講習を修了した場合に限り、学科・実地講習の受講後に操縦技能を確認する修了審査に合格すると、受験必須試験から実地試験を免除されます。
なお、学科試験や身体検査は免除されないため、注意してください。
実地試験免除と聞くと登録講習機関を利用したいと思うかもしれませんが、必ずしも登録講習機関を利用する必要はありません。
登録講習機関の受講費用はけして安い金額ではないため、必要に応じて自分で学科・実地の勉強や練習を行い直接試験を受けに行くことも検討しましょう。
ドローンであろうとヘリコプターであろうと、国家資格取得のために受験しなければいけない試験は変わりません。
取得には学科試験・実地試験・身体検査の3つに合格する必要があります。
登録講習機関の利用にかかわらず、学科試験と身体検査は必ず個人で受験しなければいけない試験です。
登録講習機関の修了審査に合格した場合は実地試験を免除されます。
学科試験は無人航空機の種類や受験する限定変更の種類を問わず、一等無人航空機操縦士向けと二等無人航空機操縦士向けの2区分しかありません。
学科試験は一等学科試験が9,900円、二等学科試験が8,800円に分類されています。(2023年6月時点)
学科試験に不合格となった場合は何度も再受験ができますが、その度に手数料を支払わなければいけません。
身体検査は書類受験と会場受験の2種類が用意されています。
書類受験は自動車運転免許証・航空身体検査証明書・無人航空機操縦者技能証明書・医師の診断書(指定の様式あり)のうちいずれかを提出し、手数料5,200円を支払うことで身体検査を受検できます。
会場受験は指定試験機関が準備した会場で直接身体検査を受検する方法ですが、手数料が19,900円と書類受験よりも割高です。
そのため、書類提出が可能であれば書類受験をおすすめします。
*本記事に記載されている料金は全て2023年6月時点の金額となっております。
登録講習機関の講習費用は国土交通省で定められておらず、各ドローンスクールが任意に設定した金額です。
そのため、利用するドローンスクールによって金額の振れ幅が大きく、8万円から40万円まで幅広く設定されています。
登録講習機関を利用してドローンの国家資格を取得するメリットは、ドローンスクールのインストラクターとして経験を積んだ知識・操縦技能と共に優れた技量を持つプロから直接指導を受けられることです。
どうしても独学だと理解不足になりがちな知識などを講義やオンライン講義で学べるため、独学よりも効率的かつ質の高い学科試験対策を行うことができます。
オンラインでの学科講習を行っている登録講習機関も多いため、仕事で忙しい方や連休を取ることが難しい方などでも国家資格を取得しやすいのもポイントです。
また、登録講習機関を利用する場合は実地講習・修了審査が同じ飛行場で行われます。
不慣れな場所で実地試験を行う時よりもリラックスして受験できるため、緊張はしても自力受験よりも合格率が上がるでしょう。
また、民間資格を取得した際に利用したドローンスクールで無人航空機操縦士講習を受けることでも、慣れた環境で操縦するため緊張が解けて操縦ミスなどをしにくくなり合格率が上がる可能性は高いです。
二等無人航空機操縦士の講習費として多いのは10万円から20万円程度のため、目安として20万円前後はかかると考えておくのが無難でしょう。
全体的に国家資格取得にかかる費用を抑えたい場合は、7万円から9万円に収まるような、遠方にある講習費用が安い登録講習機関を受講するのも一つの手です。
その場合は、交通費や再受験になった場合にかかる予算なども含めて検討してみてください。
なお、登録講習機関によっては学科講習抜きの講習を行っているところもあります。
予算を抑えたい場合は自分で学科試験の勉強をして合格し、実地講習・修了審査のみを受講できる登録講習機関を探すのもおすすめです。
登録講習機関を利用する場合、受講する限定変更の数だけ受講費用は上がります。
登録講習機関ごとに限定変更に対応する金額は異なりますが、1つの限定変更あたり1万円から2万円が上がる登録講習機関が多い傾向にあります。
また、機関によっては初期費用に合格証明書発行料などの事務手数料が含まれていないこともあります。
そのため、受講費用を支払う前に何の料金が含まれた受講費用なのかを確認しておきましょう。
修了審査に不合格となってしまった場合は、操縦練習としての補習や再受験を利用できる登録講習機関もあります。
もちろん、その場合は受講費用に追加料金が発生するため、受講費用を抑えたい場合は一発合格を目指さなければいけません。
なお、先述した学科試験と身体検査の受検手数料は必ずかかることも抑えておきましょう。
登録講習機関を利用しない場合は全ての国家試験を自分で受験して合格するだけになるため、全ての試験に一発合格すれば圧倒的な低価格で国家資格を取得可能です。
ただし、きちんと勉強や練習をした上で臨まなければ再試験費用がかさむだけですので、入念に対策を行う必要があります。
自力でドローンの国家資格を取得する場合、登録講習機関を利用していないため実地試験を必ず受験しなければいけません。
実地試験の受験費用は一等・二等で異なり、二等無人航空機操縦士は基本(昼間・目視内飛行・25kg未満)は20,400円です。(2023年6月16日時点)
3種類の限定変更を取得する際には基本の受験費用に加えて、限定変更の数だけ追加費用が発生します。
例えば、基本の二等無人航空機操縦士に加えて目視外飛行の限定変更も取得する場合は20,400円+19,800円で40,200円が受験費用です。(2023年6月16日時点)
実地試験の受験費用に学科試験、身体検査の手数料を加えると、二等無人航空機操縦士に一発合格した場合は最安で34,400円、どれだけかかっても108,500円でドローンの国家資格を取得できます。(2023年6月16日時点)
ただし、これは全ての試験を一発合格した場合の費用です。当然、不合格となり再受験する場合は各試験の受験費用が同じ金額だけ追加されるため、注意してください。
自力で指定試験機関に受験する場合、登録講習機関を利用するよりも低価格で国家資格を取得できるのがメリットです。
ただし、自力で指定試験機関の実地試験を受験する場合、どうしても練習不足になったり、慣れない環境で実地試験を受験したりするため、合格率が下がってしまう可能性が高いことは否定できません。
登録講習機関で受講する実地講習はドローンの操縦に長けた指導官から操縦指導を受けられ、必要に応じてその場で送信機の持ち方などを修正して貰えることもあります。
しかし、自力で実地試験を受験する場合は独学の練習となってしまうため、視点が偏ってしまったり、操縦技能として不十分だったりという状態で練習を進めてしまい、合格基準に満たない練習を行ってしまう恐れがあります。
また、指定試験機関のシステムから受験申請をする必要がありますが、どうしても試験の予約が取りにくく、自分の都合に合わせて受験しにくいのも自力で受験する際のデメリットです。
そのため、自力で実地試験を受験する場合は動画教材や国土交通省が出している文書などを読み込み、実地試験に合格するための適切な練習を行わなければいけません。
自力で国家資格を取得する場合は、とにかく全ての試験に一発で合格することがポイントです。
市販されている無人航空機操縦士学科試験対策用テキストを購入するのもよいですが、まずは無人航空機操縦士の教則をきちんと読むところから始めましょう。
また、取得を考えている限定変更の数を再検討してみるのもおすすめです。
例えば、実際はほとんど夜間飛行を行わないのに、夜間飛行の限定変更を取得する必要はありません。
YouTubeなどでも学科試験・実地試験の対策動画を閲覧することはできますが、まずは国土交通省が公開している試験要項をきちんと読み込むことが大切です。
登録講習機関を利用した方が国家資格を取得できる可能性は上がりやすくなりますが、どうしても金額がネックなところです。
一方、自力で取得する場合は費用は抑えられるものの、自主的な勉強・練習をしなければいけないため、ややハードルは上がります。
ドローンの国家資格は国家資格を取得するメリットは沢山ありますが、レベル4飛行以外の飛行で必ずしも必要な資格ではありません。
自分が本当に国家資格を必要としているのか、必要ならいくらまでなら取得費用を出せるかを検討し、無理のない範囲で国家資格を取得する一歩を踏み出してみましょう。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。