2024.10.09
飛行ルール・法律
2024.11.14
2022年12月5日の航空法改正によりドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)制度ができてから、もうすぐ2年が経過。ドローン操縦者の間でも国家資格取得者が増加して、国内におけるドローンの安全運用が普及しつつあります。
ドローンの国家資格の有効期間は交付日から3年間となり、自動車免許のように失効する前に更新講習を受ける必要があります。
そこで更新するタイミングや講習内容、更新講習を行う登録更新講習機関の開設など、ドローン国家資格の「更新制度」についていち早くご紹介します。
ドローンの国家資格(無人航空機操縦者技能証明)について航空法では、技能証明の有効期間が3年であることと、更新を希望する場合は、身体適性基準を満たし、登録更新講習機関が実施する更新講習を受講・修了して、有効期間の更新手続きを行う必要があることが定められています。
(技能証明の有効期間)
第百三十二条の五十一 技能証明の有効期間は、三年とする。
2 前項の有効期間は、その満了の際、申請により更新することができる。
3 国土交通大臣は、前項の規定による技能証明の有効期間の更新の申請があつた場合には、その者が国土交通省令で定める身体適性に関する基準を満たし、かつ、その資格に応じ無人航空機を飛行させるのに必要な事項に関する最新の知識及び能力を習得させるための講習(第百三十二条の八十二及び第百三十二条の八十三において「無人航空機更新講習」という。)であつて第百三十二条の八十二の規定により国土交通大臣の登録を受けた者(第百三十二条の八十三、第百三十二条の八十四第一項及び第百三十四条第一項第十九号において「登録更新講習機関」という。)が実施するものを修了したと認めるときでなければ、技能証明の有効期間の更新をしてはならない。ーー引用:航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)
ドローン国家資格(技能証明)の取得者は増加傾向にあり、すでに資格を取得している更新対象者は約19,400名に及ぶことが国土交通省より発表されました(2024年10月末時点)。
技能証明の更新は、有効期間が満了する日の6ヶ月前からDIPS(ドローン情報基盤システム)2.0にて申請が可能です。また、更新講習は更新申請から3ヶ月前に修了したものまでが有効となることから、技能証明の有効期間満了日より9ヶ月前から更新講習の受講が可能となります。
例えば…
2023年1月23日に技能証明書を交付された場合(失効日2026年1月22日)、
ただし、更新講習修了証明書の有効期間は発行から3ヶ月までのため、
現実的には、更新申請可能期間の1ヶ月前〜申請可能期間中に更新講習を受けて、すみやかに更新申請を行うのがおすすめでしょう。
限定解除の「夜間」と「目視外」の項目については、基本資格(二等/一等)の講習に付随するため別途講習を受けずに更新できます。
技能証明を更新したい場合は、DIPS(ドローン情報基盤システム)2.0で更新申請を行う前に、身体適性検査と更新講習を受講する必要があります。
身体適性検査は、下記2つの方法のいずれかを選択できます。
すでに自動車免許を所持している人は、DIPS(ドローン情報基盤システム)2.0に免許証の写しをアップロードすることで、身体適性検査を受けたこととみなされます。ただし、1等資格25kg以上の限定解除を取得している方は、自動車免許証の写しは適用されないため、病院などの医療機関もしくは登更新講習機関で身体適性検査を受ける必要があります。
また身体適性検査を実施している登録更新講習機関は少ないことが予想されますので、実際は病院などの医療機関で身体適性検査を受けることになるでしょう。
登更新講習機関では、無人航空機更新講習と技能証明書失効再交付講習の2つの講習が実施されます。さらに停止の有無や種別によって区分されるため、ご自身がどの講習を受講する必要があるのか事前に確認してみましょう。
● 無人航空機 更新講習
A:停止処分なし、または停止処分あり(第1号、第2号) > 学科のみ
B:停止処分あり(第3号、第4号、第5号) > 学科+実地
※ 失効時再交付講習と同様の内容を扱うため[第3号、第4号、第5号による失効再交付講習]と同等の講習内容になる
● 技能証明書 失効再交付講習
A:第1号、第2号による失効再交付講習 > 学科のみ
B:第3号、第4号、第5号による失効再交付講習 > 学科+実地
登録更新講習機関が実施する更新講習は、新規で国家資格を取得するときと同様に、一等資格と二等資格で内容が異なります。また国土交通省が作成した教材(テキスト・動画)を、各登録更新講習機関で利用します。
また、国土交通省が作成した教材の内容自体が減じられない限りにおいては、各々の登録更新講習機関によってオリジナル教材(テキスト・動画)を制作して活用することも可能になっています。
● 学科講習
学科講習の科目や時間数など詳細な内容について、2024年11月時点ではまだ明らかになっていませんが、これから発令される告示において明らかとなることが推測されます。
登録更新講習機関によっては、学科講習をオンラインで受講することが可能です。その場合はカリキュラムを視聴後に対面での効果測定として修了演習を受ける必要があります。
● 修了演習
修了演習は、講師が無人航空機に関する飛行計画(模擬)を提示し、飛行計画の作成において留意が必要な事項について質問を行い受講者の理解度を判定するものです。新規で国家資格を取得する際の「机上試験」のような問題形式がイメージされます。
受講者の回答に誤りがある場合は、講師から指導を行い不足知識の補完を行います。したがって修了演習は合否を決める試験ではなく、あくまでも理解度を測るための確認テストになるでしょう。
前述したとおり、違反や停止処分がない人や、第1号・第2号(本人の意思とは関係なくやむを得ない事項)による停止処分が該当する更新講習や失効再交付講習を受ける人は、学科講習のみで実地講習を受ける必要はありません。
いっぽう、第3号・第4号・第5号に該当する停止処分者の更新講習や、第3号・第4号・第5号に該当する失効再交付講習については、技能証明保持者に自身の操縦能力の現状を認識させ “最新の操縦能力”の習得を補うことを目的として、対面で実機やシミュレーターを活用した実地講習を受講します。
更新講習や失効再交付講習での実地講習は、新規で国家資格を取得したときの実地試験の科目をベースにコースが組まれて、講習時間は10~20分程度となります。
● シミュレーターについて
先日のパブリックコメントにて公開された「登録更新講習機関の登録等に関する取扱要領」によると、シミュレーターによる実地講習を行う際の申請にあたり、シミュレーターの要件を証明する書類の提出が求められます。したがって登録講習機関で用いるシミュレーターとは異なり、厳格な要件が求められるものと推測されます。
前述した失効再交付講習を受講する必要があるかを確認するために、まずドローン国家資格「無人航空機操縦者技能証明」の特徴を理解しておきましょう。
ドローンの国家資格である無人航空機操縦者技能証明は、技能証明👤自体に3年間の有効期間が定められています。
また何らかの違反をした場合、無人航空機の停止規定は技能証明👤に対して科されるため技能証明👤の有効期間が停止するが、すでに交付されている技能証明書🪪は停止の影響を受けない。この点が、免許👤と免許証🪪が等しく停止の影響と期限が定められている自動車免許とは異なるルールといえる。
前述した無人航空機操縦者技能証明のルールをふまえて、技能証明の停止と失効再交付講習の関係を説明すると…
例) 2023年1月23日に技能証明書を交付された人が(失効日2026年1月22日)、更新前に6ヶ月停止処分を受けると…
結論…
6ヶ月以上の停止期間があると技能証明書🪪 の有効期間内に技能証明👤の更新可能期間が重ならいため、技能証明書🪪が失効し、技能証明に基づいた飛行ができません。よって技能証明👤に基づいた飛行を行いたい人は、失効再交付講習を受けることになります。
停止期間と関わる違反事項について、具体的にはどんな違反があるのでしょうか。
無人航空機の違反事項については、航空法132条の53第1項に明記されています。ただし2024年11月時点では、あくまでも”想定内容”として国土交通省より公開されているため、今後一部改変される可能性もあります。あくまでも目安として把握しておきましょう。
【航空法132条の53第1項】
第1号:次に掲げる病気にかかつている者であることが判明したとき。
イ)幻覚の症状を伴う精神病であつて国土交通省令で定めるもの
ロ)発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であつて国土交通省令で定めるもの
ハ)イ又はロに掲げるもののほか、無人航空機の飛行に支障を及ぼすおそれがある病気として国土交通省令で定めるもの第2号:無人航空機の安全な飛行に支障を及ぼすおそれがある身体の障害として国土交通省令で定めるものが生じている者であることが判明したとき。
第3号:アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者であることが判明したとき。
第4号:この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらに基づく処分に違反したとき。
第5号:無人航空機を飛行させるに当たり、非行又は重大な過失があつたとき。
参考:無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準(国土交通省航空局安全部)
この航空法132条の53第1項の明文を簡単にまとめると、第1号〜第5号まで大きく5種類の違反事項に分離されます。
第1号、第2号に該当する場合は、本人の意思とは関係なくやむを得ない事項のため、更新講習や失効再交付講習では学科講習のみの受講になります。
いっぽう、第3号、第4号、第5号は、自らの行いが招いたものであり有責性が認められるため、更新講習や失効再交付講習では学科講習に加えて実地講習が必要になります。
つぎに具体的にどんな違反をしたら、どれくらいの点数になるのかを把握するために点数表(※2024年11月時点で想定される内容)を確認してみましょう。
たとえば、技能証明書の不携帯で特定飛行を行った場合は1点、飛行計画の通報をしないで特定飛行を行った場合は14点、アルコールや薬物の影響下で飛行した場合は15点と、危険度の高さに比例して高点数が設定されていることがわかります。
さらに上記の点数表に記載された合計点数をもとに、処分等区分表(※2024年11月時点で想定される内容)によって処分等の内容が分類されます。
わずか1〜2点であれば口頭注意で済みますが、6点以上は停止処分になり、15点以上は技能証明が取り消されるという重い処分を受けることになります。
さらに過去に処分等を受けている人がさらに違反してしまった場合、反省や再発防止対策がなされていないとみなされ加重や技能証明の取り消し処分になる可能性があります。(※2024年11月時点で想定される内容)
資格取得者が技能証明(二等/一等)を更新するために必要な更新講習や身体適性検査を実施する登録更新講習機関は、技能証明の新規取得に必要な講習を実施する登録講習機関とは異なる機関です。
したがって、登録更新講習機関として運営するためには、新たに国土交通省への開設手続きが必要になります。
具体的には、DIPS2.0での登録申請をはじめ、添付書類をメールで送付したり登録免許税の納付、事務規程の届出などの書類手続きや、運営をになう管理者や講習を行う講師に対する研修も必要になり、行政手続きの専門知識や日数がかかります。
したがって、すでに登録講習機関として運営している国家資格スクールは、講習を修了した資格取得者が技能証明の更新可能時期を迎える前に、登録更新講習機関を開設したほうが資格取得時と同じ教育環境で更新講習を受けられるため、早めに開設の手続きを行なったほうがよいということになります。また登録講習機関として運営していない法人や団体でも、登録更新講習機関のみ開設することも可能です。
つぎに、ドローンに該当する回転翼航空機(マルチローター)の講習を扱う登録更新講習機関になるためには、おもに講師・機体・空域の3つの要件があります。※回転翼航空機(ヘリコプター)や飛行機については、申請要件が異なります。
登録更新講習機関で実際に学科や実地の講習をになう講師に関する要件は、登録講習機関とほとんど同じです。ただし、民間の講習団体でのインストラクター経験を講師経験として提示することができないのが、登録講習機関の講師と異なる点です。
登録更新講習機関の講師になるためには、開設の申請時に技能証明を取得していること、さらに下記のとおり一定期間を経過していることが条件になります。
たとえば、2024年12月に一等の登録更新講習機関の開設申請をする場合は、少なくとも2023年12月までに一等の技能証明を取得している講師を登録する必要があります(登録講習機関の講師と異なり、限定変更の有無は問わない)。
実地講習で使用するドローン機体の要件については、2024年11月時点では不明ですが、近々国土交通省から発令される告示において定められます。
実地講習でドローンを操縦する空域の要件については、登録講習機関と同様に一等資格と二等資格で異なる条件が規定されています。
※ 安全確保のため、バッファー(余白)として空域の+2メートル必要なので、実質的な左右縦の空域は10メートル確保する必要があります。
ドローンの国家資格、無人航空機操縦者技能証明は、日本国内におけるドローンの安心・安全な利活用と、業界の発展のために作られたため、今後さらに必要性が高まる操縦資格といえます。
すでに二等や一等資格を取得している方は、更新せずに失効してしまうと学科試験/修了審査(実地試験)を再受験し技能証明書を新規で発行する必要があるため、今から更新について準備しておくことをおすすめします。
またバウンダリ行政書士法人では、 登録更新講習機関の開設手続きから運営の維持・管理まで、登録更新講習機関の開講や運営をスムーズに進めるサポートを行なっていますのでぜひお気軽にお問い合わせください!
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。