
2025.08.21
ドローン基礎知識
2025.08.21
ドローンを安全に運用するうえで、今や「飛行日誌」は欠かせません。
2022年12月の航空法改正により、「特定飛行」を行うすべての操縦者に作成と携行について罰則規定が追加され、違反した場合には10万円以下の罰金が科されます。
しかし、いざ飛行日誌をつけようとしても「具体的に何を書けばよいのか」「どこまで記録すれば法律の要件を満たせるのか」といった疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ドローンの飛行日誌の重要性から、国土交通省が定める「飛行記録」「日常点検記録」「点検整備記録」の具体的な書き方までを、記入例を交えて徹底解説します。
法令を遵守し、自信を持ってドローンを運用するために、ぜひ最後までご覧ください。
ドローンの飛行日誌は、安全な運航を証明するための重要な書類です。
どのような飛行を行い、機体がどんな状態であったかを記録することで、万が一の事故発生時や法令順守確認の際に、自らの正当性や安全管理体制を示す証拠となります。
飛行日誌は、決してすべての飛行で義務とされているわけではありません。
2022年12月5日に施行された改正航空法により、法律で作成と携行に罰則規定ができ、現在義務付けられているのは「特定飛行」に該当する場合のみです。
特定飛行とは、ドローンの飛行においてリスクが高いとされる空域での飛行と飛行させる方法を指します。
具体的には、以下のようなケースが該当します。
【飛行する空域】
【飛行させる方法】
これらに該当しない場合、法律上の飛行日誌を作成・携行する義務はありません。
しかし、安全管理の観点から、あらゆる飛行で記録を残しておくことが推奨されます。
飛行日誌は、機体の登録が有効な間は継続的な記録・保管が必要です。
機体の登録は3年間有効で、期限が切れる前に登録の更新を行う必要があります。
登録を抹消するまで、または機体を廃棄するまで飛行日誌を保持することが求められます。
登録抹消後に法的義務はなくなりますが、事故原因の特定や過去の運航実績証明のため、一定期間の保管が望ましいでしょう。
特定飛行に該当するにもかかわらず、飛行日誌を作成・携行しなかった場合は、航空法に基づき10万円以下の罰金が科される可能性があります。
この内容は航空法第157条の11で定められているため、違反しないように注意しましょう。
飛行日誌には、飛行内容や機体の点検・整備状況を正確に記録する必要があります。
ここでは、飛行記録・日常点検記録・点検整備記録の具体的な記載方法を順に見ていきましょう。
飛行記録は、いつ、誰が、どこで、どのような内容でドローンを飛ばしたのかを証明する、日誌の中核となる記録です。
飛行のたびに、以下の項目を正確に記録します。
飛行記録の記入例は、以下を参考にしてください。
「総飛行時間」は機体の積算飛行時間を記入しましょう。
日常点検記録は、飛行の直前に機体の安全性を確認し、その結果を記録するためのものです。
飛行させる日ごとに、操縦者自身の目で見て、手で触れて機体の状態を確認します。
主な点検項目は以下の通りです。
各項目について「異常なし」または「異常あり」を記録し、異常があった場合は備考欄に詳細を記します。
日常点検記録の記入例は、以下の通りです。
点検整備記録は、日常点検ではカバーしきれない、定期的なメンテナンスや部品交換、修理などの履歴を残すための記録です。
日常点検が「飛行後の安全確認」であるのに対し、点検整備は「機体の中長期的な健全性維持」を目的とします。
具体的に記録するのは、以下の内容です。
これらの記録は、機体の信頼性を証明する重要な資料となります。
点検整備記録では、以下のような内容を記入しましょう。
こうした記録は、機体の信頼性証明や保険請求時の重要資料となり、売却時にも付加価値をもたらします。
飛行日誌を運用するにあたり、媒体の形式や携行方法について、いくつかの共通ルールがあります。
まず、記録媒体は紙のノートでも、PCで作成したExcelファイルでも、スマートフォンのアプリでも、形式は問われません。
重要なのは、法律で定められた項目が正確に記録されており、特定飛行の現場ですぐに提示できる状態であることです。
PC上のファイルで管理している場合は、該当部分を印刷して持参するか、タブレットなどの端末にデータを保存して現場で表示できるようにしておく必要があります。
警察や航空局の職員などから提示を求められた際に、速やかに応じられるように準備しておきましょう。
なお、記載言語は日本語または英語と定められています。
ここでは、飛行日誌に関して多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
ドローンの飛行日誌は、国土交通省が公式に「無人航空機の飛行日誌の様式」としてテンプレートを提供しています。
この様式を使えば、法的に必要な項目を漏れなく記載できるため、何を使えばよいか迷った場合は、まず公式テンプレートを利用しましょう。
ダウンロードについては、国土交通省のウェブサイトから誰でも無料で行えます。
飛行日誌の作成と携行に罰則規定が追加されたのは、2022年12月5日です。
レベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)の解禁などを含む、ドローンの安全利用を促進するための制度改正の一環として導入されました。
無料アプリでも、ドローンの飛行記録は問題なく付けられます。
多くのドローン飛行日誌アプリは、飛行場所や経路、時間などを自動で記録してくれるため、手書きに比べて手間を大幅に削減できるでしょう。
ただし、利用する際は「国土交通省が定める必須記載事項をすべて満たしているか」を必ず確認してください。
行政書士等の専門家が監修しているアプリが望ましいでしょう。
「自分の飛行が特定飛行にあたるか自信がない」
「複数の機体や操縦者を管理しており、効率的な運用方法を知りたい」
もし飛行日誌の作成や運用方法に不安があるなら、ドローン関連法務の専門家へ相談するのも一つの手段です。
バウンダリ行政書士法人は、航空法に基づく飛行許可・承認申請から、日々の飛行日誌の作成支援、組織内の運用ルール整備まで、幅広いサポートを提供しています。
特にドローンの飛行日誌の作成や携行には、細かなルールが設けられています。
対応方法や処理方法に悩んだら、ぜひ一度お問い合わせください。
飛行日誌は、単なる作業記録ではなく、安全運航と法令遵守を両立させるためのツールです。
特定飛行を行う場合は、作成と携行が法律で定められた義務であり、違反すれば罰則の対象となります。
また義務のない飛行であっても、機体の状態を継続的に記録しておくことは、事故原因の究明や自身の運航実績の証明などの場面で役立つでしょう。
まずは国土交通省の公式テンプレートなどを参考に、自分の運用スタイルに合った記録方法を見つけることから始めましょう。
そして、特定飛行の際には、その日誌を必ず現場へ携行してください。
日々の着実な記録の積み重ねが、安全で信頼されるドローン活用への第一歩です。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
YouTubeで日々ドローン法務に関する情報を発信中!「ドローン教育チャンネル」はこちら