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ドローン許可申請に必要な「10時間の飛行経歴」とは?

2022.12.23

ドローン許可申請に必要な「10時間の飛行経歴」とは?

ドローンの飛行許可を申請するには「10時間の飛行実績」が必要

ドローンの飛行許可申請をするには、いくつかの条件が定められており、その一つに操縦者の「飛行経歴」があります。

飛行経歴とは、これまで飛行(操縦)した合計時間数のことで、この時間数が10時間以上であることが申請の条件となっています。10時間に満たない飛行経験(ドローンの操縦経験)では申請できません。

「10時間」の基準は改正航空法で決められている

この10時間という基準は令和4年6月に改正された改正航空法で明確に決められており、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」に明記されています。

4-2
【無人航空機の飛行経歴並びに無人航空機を飛行させるために必要な知識及び能力】
無人航空機を飛行させる者の飛行経歴、知識及び能力について、次に掲げる基準に適合すること。
(1)飛行を予定している無人航空機の種類(飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船のいずれか)別に、10時間以上の飛行経歴を有すること。

飛行経験の浅い初心者などが直面する高いハードルとなりますが、この基準をクリアしていなければ申請することはできず、許可を得て飛ばすことはできません。

10時間の飛行経験をクリアするための"3つの方法"

では、飛行許可を受けて飛ばした経験のない初めて申請する人は、どのようにしたらこの10時間基準をクリアできるのでしょうか。結論から言えば、航空法の適用外の方法で飛行させるということです。これには3つの方法があるのでご紹介します。

屋外で飛ばす

ドローン許可申請に必要な「10時間の飛行経歴」とは?

屋外で飛ばす場合は、航空法のルールに違反しない場所を見つけて飛ばすという方法があります。航空法では「人口集中地区(DID)」では飛行許可申請がなければ飛ばせないルールとなっています。従って、DIDではないエリアを見つけて飛ばせば違反飛行にはなりません。

また、この人口集中地区は5年に一度見直されます。長い間禁止エリアではなかった場所が今回から禁止エリアとなっていたというケースがあり、最近では都市部だけでなく地方でも人口集中地区が多くなっているので要注意です。飛行禁止エリアが判るアプリなどを使って、今現在完全に法律の適用外となる場所を探し出してから飛行するようにしましょう。

外で飛ばす場合のもう一つの注意点は、人や物との距離が30m未満になる飛行を行わないということです。この30mルールも航空法で定められている禁止飛行に該当し、そこが人口集中地区でない場合でも違反行為となります。

飛行の当事者や関係者、関係する物件については対象外となりますが、それ以外の第三者や飛行に関係のない物件などからは30m以上離れて飛ばすことが定められています。広々とした田舎で周囲に誰もいなかったとしても、例えば電信柱は「物」に該当しますから、周囲には十分に気をつけることが必要です。

このように、外で飛ばす場合は、禁止エリアかどうか、禁止された飛行方法になっていないかどうかに気を付けることがとても大事です。

屋内で飛ばす

ドローン許可申請に必要な「10時間の飛行経歴」とは?

同様に、航空法が適用されない場所として「屋内」があります。航空法は「空」の法律ですから屋内は治外法権のエリアとなります。狭い部屋でも小型のドローンなどを使えば練習できるので、この時間も飛行経歴に加えることができます。

在宅時の隙間時間を活用できるので毎日のルーティンとして飛行時間を積み重ねていけばそれなりの累積時間となります。

※ただし、100g未満のトイドローンは飛行経歴として認められませんので注意しましょう。

スクールを受講する

ドローン許可申請に必要な「10時間の飛行経歴」とは?

そしてもう一つは、ドローンスクールを受講する方法です。スクールは体育館やネット付きの屋外練習場など施設が充実していますし、常にインストラクターもいるので安心して飛ばすことができます。

相応の費用はかかりますが、飛行訓練10時間が確保できるコースを選べば、飛行経歴のハードルもクリアできる上に、一通りの基本知識や操縦の基礎も学べます。

10時間未満でも承認された例外もある?

このように、航空法を順守し10時間の飛行経歴を作っていくのが基本的な申請方法ですが、例外的に10時間未満でも許可された事例があります。 国交省がホームページ上で公表している次のような事例です。

【事例1】
飛行経歴4時間の者が、四方がネットで囲まれている敷地において第三者の立入が制限され、ジオ・フェンス機能を設定し飛行範囲の制限を行い、十分な飛行経験を有する者の監督の下で飛行させる。

【事例2】
飛行経歴2時間の者が、飛行させる者が管理する敷地内において第三者の立入が制限され、ジオ・フェンス機能を設定し飛行範囲の制限を行い、十分な飛行経験を有する者の監督の下で飛行させる。

【事例3】
飛行経歴1時間の者が、補助者を配置して注意喚起をすることにより、飛行範囲内に第三者が立ち入らないようにし、機体をロープで係留し飛行の範囲の制限を行い、十分な飛行経験を有する者の監督の下で飛行させる。“

事例ごとに飛行時間の違いはありますが「第三者の立ち入り制限、飛行範囲の制限、十分な飛行経験ある者の監督」という条件が整う場合、10時間未満でも申請可能ということを国交省が示しているわけです。

これも解決策の一つといえます。

10時間の飛行経歴は自己申告

最後に押さえておくべきことは、この飛行経歴ルールは「自己申告」制という点です。つまり自身で10時間の飛行を行ない、それを自分で申告すればよいというわけです。飛行履歴を証明するデータの提出する義務もありません。

しかし本当に10時間をクリアしていなければ安全飛行に大きな不安が残りますし、万が一事故を招いてしまった場合の調査などで虚偽申告が発覚した場合は罰せられます。また保険の適用にも支障が出る可能性もあります。

自己申告であればこそ、虚偽のない飛行経歴でなければなりません。そのためにもお勧めするのがフライトログ(飛行記録)の作成です。1日に飛行できる時間は限られおり、また、ドローンの飛行時間は1回あたり数分や数十分と細切れになってしまうので、その都度フライトログをつけておき根拠のある正しい申告をすることをお勧めします。

改正航空法では「飛行日誌の作成」が義務付けられ、国交省が飛行日誌の様式を公開しているのでこれを参考にすると良いでしょう。

尚、ドローンスクールを受講した場合は受講の証明書を発行してもらえるので、申請時にこの証明書を提出すれば、10時間飛行をはじめ一定の技能があると認められ、飛行許可申請をスムーズに進めることができます。これもスクールに通う利点といえます。

まとめ

10時間という時間はドローンの基本的な操作が出来るレベルとして設定された基準です。あくまでも許可申請上の基準であり、個人差もありますので10時間を費やしても不安定な飛行からレベルアップできない場合は、更にしっかりと訓練を積んだ上で実際の飛行に臨みましょう。

  • 航空法上、飛行経歴10時間未満は飛行許可申請することができない
  • 許可なしで10時間飛ばすには航空法適用外で飛ばすかスクールを活用する
  • 10時間未満で許可された事例にならって申請する方法も
  • 自己申告に備えてフライトログ(飛行記録)を作成しておく
  • スクールが発行する証明書の提出は飛行許可申請がスムーズになる

 

SUPERVISOR

監修者

代表行政書士 佐々木 慎太郎

バウンダリ行政書士法人

代表行政書士 佐々木 慎太郎

(Shintaro Sasaki)

日本屈指のサポート実績を誇る、ドローン法務のプロフェッショナル

行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。