2026.03.13
飛行ルール・法律
2026.03.13
ドローンの国家資格制度が始まり、「登録講習機関」の監査担当者になったものの、「ドローン監査実施団体とは何なのか?」「具体的に監査で何が行われるのか?」と不安を感じていませんか。
本記事では、監査実施団体の役割、監査の具体的な流れや厳しくチェックされる項目、さらには監査実施団体の選び方について解説します。法令に基づいた適切な監査対策を進め、登録講習機関の信頼性を維持・向上させるための一助となれば幸いです。
目次
2022年12月からドローンの国家資格制度がスタートしました。
これに伴い、国家資格の講習を行う国土交通省の「登録講習機関」には、毎事業年度ごとに外部監査を受けることが義務付けられています。
この監査の主な目的は、登録講習機関が提供する講習や修了審査の質をしっかりと確保することです。
全国に多数存在する登録講習機関の運営レベルを一定の高い水準で均一に保ち、信頼できる操縦士を育成する体制を維持するために監査が行われます。
この重要な監査業務を、国から正式に確認を受けた第三者機関として実施するのが「登録講習機関等監査実施団体」です。
監査実施団体は、監査対象となる登録講習機関から独立した外部の組織です。
国土交通省のWebサイトでは、国の確認を受けた監査実施団体の一覧が公式に公開されています。
登録講習機関は、この一覧の中から監査を依頼する団体を自分たちで選ばなければなりません。
各監査実施団体には、それぞれ異なる特色があります。
例えば、監査にかかる費用や、ペーパーレス監査への対応、運営に関するコンサルティングの有無など、サービス内容も様々です。
そのため、どの団体に依頼するかは、自社の運営状況に合わせて慎重に選定することが重要になります。
監査実施団体の最も重要な役割は、国土交通省が定めた「登録講習機関等監査実施要領」というルールに基づいて監査を行うことです。
具体的には、登録講習機関の組織運営や講習の実施方法が、法令や各機関が定めた事務規程(運営マニュアル)や登録講習機関が収録した動画で正しく適合しているかを客観的に確認します。
監査の過程で、もし運営に不適切な点や改善すべき事項を発見した場合、監査実施団体は登録講習機関に対して是正(間違いを直すこと)を指示します。
そして、その問題点がきちんと改善されたかどうかを確認するまでが責任範囲です。
監査が完了したら、その結果を詳細な報告書にまとめ、国土交通省へ報告することも、監査実施団体が担う重要な責務の一つです。
監査を依頼する団体は、国土交通省の公式Webサイトに掲載されている「登録講習機関等監査実施団体一覧」から選ぶ必要があります。
この一覧には、国が認めた団体の名称や連絡先が掲載されています。団体を選ぶ際は、いくつかの団体を比較検討することが非常に重要です。
確認すべきポイントには、以下のようなものがあります。
自スクールの規模や運営形態、かけられる予算などを総合的に考慮し、最も適したパートナーとなる監査実施団体を選びましょう。
登録講習機関が監査を受けるまでには、一連の決まったプロセスがあります。
まず登録講習機関が監査実施団体を選んで監査を依頼するところからスタートし、その後、日程調整、監査の実施、そして監査結果がまとめられた報告書の受領という流れで進みます。
最終的に、登録講習機関は監査結果を航空局へ報告しなければなりません。
また、監査には大きく分けて2つの種類が存在します。一つは、毎事業年度に必ず行われる「計画的監査」で、もう一つは、特定の状況下で必要に応じて実施される「随時監査」です。
計画的監査は、毎事業年度ごとに1回、必ず実施される定期的な監査です。
この監査は、組織運営を管理する本社(本校)と、実際に講習を行うすべての事務所(スクール)が対象となります。
監査の方法は、監査員が現地を訪れる「実地監査」、またはビデオ会議システムなどを使う「オンライン監査」が認められています。
ただし、登録講習機関の有効登録期間(3年間)のうち、1事業年度(1回)は、必ず実地監査を受けなければなりません。
監査依頼から報告までの一般的な流れは、以下の表の通りです。
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ステップ |
内容 |
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1. 監査実施団体の選定と監査依頼 |
国土交通省の公式一覧または監査実施団体のHPから監査実施団体を選定し、監査を正式に依頼します。 |
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2. 監査日程の調整と監査計画の通知 |
監査実施団体と連絡を取り合い、実地またはオンライン監査の具体的な日程を調整します。日程確定後、団体から監査計画書が通知されます。 |
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3. 監査資料の事前提出 |
監査実施団体から求められた、事務規程や各種管理台帳、講師の研修記録などの必要書類を、監査日より前にデータ等で提出します。 |
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4. 監査の実施 |
事前に通知された監査計画に基づき、実地またはオンラインで監査が実施されます。担当者は監査員のヒアリングや資料確認に対応します。 |
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5. 監査報告書の作成と受領 |
監査終了後、監査実施団体が監査結果をまとめた「監査報告書」を作成します。登録講習機関はこれを受領し、内容を確認します。 |
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6. 是正措置の実施と完了報告 (不適切事項があった場合) |
監査報告書で「不適切」と指摘された事項があった場合、期限までに改善(是正措置)を行います。完了後、その内容を監査実施団体に報告します。 |
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7. 航空局への監査結果の提出 |
監査が終了した日から1ヶ月以内に、登録講習機関が国土交通省航空局に対し、受領した「監査報告書」を提出します。(是正措置があった場合は、その内容も含む) |
随時監査は、毎年行われる計画的監査とは別に、特別な理由が発生した場合に実施される監査です。
この監査の大きな特徴は、登録講習機関の日常のありのままの業務実態を把握するため、事前の通知なしに「抜き打ち」で行われる可能性がある点です。
日頃から適切な運営を心がけておく必要があります。
随時監査が行われる具体的なケースとしては、主に以下のような状況が挙げられます。
ただし、監査実施団体も民間企業なので、よほどのことが無い限り実際に行うことはありません。
監査では、国土交通省が定めている「登録講習機関等監査実施細則」に記載された詳細なチェックリストが用いられます。
このリストに基づき、組織全体の運営体制と、講習や審査の現場における実務の両面から、非常に厳しく確認作業が行われます。
監査の結果、判定は「適切」「重大な不適切」「不適切」などの区分で下され、もし「不適切」と判定された項目があれば、期限までに必ず是正しなければなりません。
特に、修了審査の基準が守られていなかったり、必要な人員配置がされていなかったりするケースは、指摘されやすい「不適切事例」です。
日頃からの法令遵守と、事務規程に沿った確実な運営が求められます。
本社機能(本校など)に対する監査では、主に組織全体の管理体制が正しく機能しているかが問われます。講習現場の運営を支えるバックオフィスの体制が、国の基準や自ら定めた事務規程通りに整備・運用されているかを確認します。
主なチェック項目は以下の通りです。
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監査カテゴリー |
主な監査項目 |
確認内容 |
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各種資料の管理状況 |
無人航空機講習事務規程 |
・規程が適切に管理されているか。 ・航空局へ届け出た内容と一致しており、変更届出が確実に行われているか。 |
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受講者の記録 |
・入学申請の受理や料金収納の記録が確実に作成され、3年間保管されているか。 ・規程に記載された通りの手数料を徴収しているか。 |
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修了審査・修了証明書の記録 |
・修了審査の結果や証明書交付の記録が管理台帳で管理され、3年間保管されているか。 |
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財務諸表等 |
・毎事業年度経過後3ヶ月以内に作成され、5年間保管されているか。 |
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その他記録 |
・実地講習実施計画書が四半期(3ヶ月)ごとに作成され、3年間保管されているか。 ・講習の実施実績記録が作成され、3年間保管されているか。 |
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修了証明書の発行と管理 |
様式・内容 |
・証明書の様式が規定項目を網羅し、記載内容が受講実績と一致し、表記が正しいか。 |
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DIPSへのアップロード |
・講習修了者情報をドローン情報基盤システム(DIPS)にCSV形式で正しくアップロードしているか。 |
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管理者・講師等の体制 |
管理者及び副管理者 |
・航空局への届出どおりの者であり、講習等を統括的に管理しているか。 ・所定の管理者研修を修了し、有効な修了証明書を保持しているか。 |
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講師及び修了審査員 |
・届出のない者が講習を行っていないか。 ・全ての講師が規定の研修を修了しているか。 ・全ての修了審査員が、担当区分に応じた修了審査員研修を修了し、有効な証明書を保持しているか。 |
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監査 |
外部監査の受検 |
・毎事業年度、外部の者(監査実施団体)による監査を受検し、監査報告書を適切に保管しているか。 |
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航空局への報告 |
・監査結果を、監査終了日から1ヶ月以内に航空局へ報告しているか。 |
このほか、管理者や講師、修了審査員が国の定める要件を満たしているか、必要な研修を修了しているかといった、人的資源に関する管理記録も重要な監査ポイントです。
事務所(スクール)に対する監査では、講習や修了審査が、航空局に届け出た事務規程や国の基準通りに、適切かつ安全に実施されているかが厳しく確認されます。受講生が直接サービスを受ける現場の品質が担保されているかをチェックする、非常に重要な監査です。
学科講習、実地講習、修了審査の各段階で、以下のような点が確認されます。
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監査カテゴリー |
主な監査項目 |
確認内容 |
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学科講習 |
講師・カリキュラム |
・航空局へ届け出た講師が、事務規程に沿った内容で講習を行っているか。 ・講習に必要な教材が適切に使用されているか。 |
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講習時間・記録 |
・講習時間が適切に管理・記録されているか。 ・受講者の出欠が管理・記録されているか。 |
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運営体制 |
・講習中の受講者からの質問に対し、講師が適切に対応しているか。 |
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実地講習 |
講師・カリキュラム |
・航空局へ届け出た講師が、事務規程に沿った内容で講習を行っているか。 |
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安全対策 |
・ヘルメット、目の保護具や補助員の配置など、講習を安全に行うための体制が構築されているか。 ・特定飛行に該当する講習を行う場合、受講者・講師ともに必要な飛行許可・承認を得ているか。 |
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設備・機材 |
・実地講習を滞りなく実施できる十分な数のバッテリー等が用意されているか。 ・シミュレーターを使用する場合、規定された上限時間(履修科目の最低時間数の4割)を超えていないか。 |
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修了審査 |
机上審査 |
・制限時間を規定通り計測し、事前に問題が開示されることなく、適切な方法で実施されているか。 ・解答が不適切な場合、減点適用基準どおりに採点が行われているか。 |
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飛行前/後点検 |
・受講者が確認の点呼を行いながら、適切に点検を実施しているか。 ・日常点検記録簿への記録が適切に行われ、記載に問題がある場合は基準どおり減点されているか。 |
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実技審査の環境 |
・航空局へ申請した通りの空域、飛行経路、機体を使用して審査を実施しているか。 ・風速や照度(夜間飛行の審査時)などの環境条件が、定められた基準内であるか。 |
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実技審査の実施 |
・細則に定められた手順・内容通りに審査が実施されているか。 ・飛行経路の逸脱や危険な飛行などに対し、減点適用基準どおりの採点が行われているか。 ・審査時間が計測され、制限時間が守られているか。 |
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口述審査 |
・事故・重大インシデントの報告に関する口述審査が、適切に実施されているか。 ・審査時間が計測され、制限時間が守られているか。 |
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審査の連続性 |
・1つの修了審査が、日をまたいで断続的に実施されていないか。 |
修了審査に使用する空域や機体が、航空局へ届け出た内容と一致しているか、といった物理的な環境整備状況も厳しくチェックされる項目です。
監査実施団体になるには、監査を行うにふさわしい高い専門性と、いかなる登録講習機関からも影響を受けない公正中立な立場が求められます。
そのため、誰でも簡単になれるわけではなく、国土交通省による厳格な審査をクリアしなければなりません。
申請にあたっては、詳細な監査方法を定めた「監査事務規程」の作成や、過去の監査実績を証明する書類の提出などが重要なポイントとなります。
監査実施団体として国の確認を受けるためには、まず組織としての体制が基準を満たしている必要があります。
具体的には、監査業務全体を統括する「管理者」や、実際に監査を行う「監査員」を、国の定める要件に従って適切に配置しなければなりません。
また、組織としての信頼性を示すために、監査事務(ドローンに限らず、ISO監査や会計監査なども含む)を3年以上継続しており、かつ有効と認められる監査を毎年1件以上行った実績が求められます。
監査という重要な事務を適正に遂行するため、組織内での役割分担や責任体制が明確に定められていることも必須の基準です。
監査実施団体に所属し、実際に監査を行う「監査員」にも、厳格な資格要件が定められています。監査の品質を担保するため、ドローンの知識・技能と、監査の専門知識の両方が求められるのが特徴です。主な要件は以下の表の通りです。
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要件区分 |
具体的な内容 |
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年齢 |
18歳以上であること。 |
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欠格事由 |
過去2年以内に、無人航空機講習事務に関する不正や、航空法違反による罰金以上の刑に処せられていないこと。 |
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監査経験 |
過去3年以内に監査員または監査補助員として3回以上の監査実績があること。 └ ISO9001監査、会計監査、または類似の監査経験が認められます。 |
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操縦技能・経験 |
技能証明保有者:一等または二等無人航空機操縦士の技能証明を取得後、6ヶ月以上の飛行経験がある。 |
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専門研修 |
担当する監査の資格区分および機体の種類について、指定試験機関が実施する「修了審査員研修」を受講し、修了していること。 |
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養成訓練 |
初回の監査を行う前までに、監査実施団体が定める所定の養成訓練(基礎課程および専門課程)を修了していること。 |
このように、原則として一等または二等の技能証明を持ち、一定の飛行経験があるなどの能力が必要です。
さらに、過去3年以内に3回以上の監査実績(監査補助員も含む)も求められるなど、経験と技能の両面で高いハードルが設定されています。
監査実施団体として国の確認を受けるためには、国土交通省航空局に対して所定の願出手続きを行う必要があります。
まず、「登録講習機関等監査実施団体にかかる確認について(願出書)」という正式な申請書類を提出します。
この願出書には、団体の概要や監査体制などを記載します。
あわせて、監査の具体的な方法、手順、判定基準などを詳細に定めた「監査事務規程」を作成し、提出しなければなりません。
その他にも、過去の監査実績を証明する書類(監査計画書や報告書など)や、法人の登記事項証明書、役員全員の住民票の写しなど、非常に多くの添付書類の準備が必要です。
登録講習機関を新たに設立する手続き、日々の適正な運営、そして毎事業年度に待ち受ける外部監査への対策には、航空法や関連法令に関する専門的な知識が不可欠です。
また、事務規程の管理や各種記録の作成・保管など、非常に煩雑な事務作業も伴います。
監査団体の選定が、登録講習機関と受講生の将来を左右するといっても過言ではありません。
登録講習機関が不適切な運営が行われていた場合、その責任は講習機関だけにとどまりません。
監査団体が不適切な運営を見逃していた場合には、監査体制そのものが問題視され、国土交通省から行政指導や業務改善を求められる可能性があります。
実際に、監査の不十分さが指摘された事例も確認されており、「監査を受けていれば安心」という時代ではなくなっています。
こうした不適切な運営や監査の不備は、最終的に受講生に直接的な影響を及ぼします。
補講や再審査が必要となるケース、場合によっては取得済みの国家資格の有効性が問題となる可能性も否定できません。
登録講習機関の監査は、単なる形式的なチェックではなく、講習機関と受講生の双方を守るための重要な制度です。
そのため、登録講習機関にとって監査団体の選定は、価格や手軽さのみで判断すべきものではありません。
監査項目を十分に網羅しているか、制度や実務への理解があるか、公正中立な立場で実効性のある監査が行われているかどうかが、将来的なリスクを大きく左右します。
バウンダリ行政書士法人では、航空局の考え方や立入を見据えた実務レベルでの監査を実施しています。
すべての監査項目を網羅したチェックに加え、指摘で終わらせることなく、現実的かつ継続可能な改善提案、必要に応じた変更届等の手続きまで一貫してサポートします。
登録講習機関が長期的に安定した運営を続けられること、そして受講生が安心して国家資格を取得できる環境を維持することを最優先に考えた監査を行っています。
登録講習機関の運営リスクを最小限に抑え、将来にわたって適正な事業を継続していくためには、監査団体選びが極めて重要です。監査品質と実務対応力を重視される登録講習機関様は、ぜひ一度バウンダリ行政書士法人の監査をご検討ください。
登録講習機関の監査体制や具体的な監査内容、業務範囲については、「登録講習機関向け監査サービスのページ」にて詳しくご案内しています。
現在の監査体制に不安がある場合や、監査団体の見直しを検討されている場合は、お気軽にお問い合わせください。
また、バウンダリ行政書士法人では、監査だけではなく登録講習機関の設立申請手続きから、監査対策を含めた日々の運営における法令遵守のアドバイスまで、ワンストップで支援を提供しています。詳細は「登録講習機関設立・支援サービスのページ」をご覧ください。
運営体制のチェックも無料で行っていますので「監査で何を準備すればいいかわからない」「日々の運営事務が煩雑で手が回らない」「監査団体に不安・不満があるので変更を検討している」といったお悩みをお持ちの担当者様は、ぜひ一度、無料相談をご利用ください。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
ドローンに関する許認可申請、許認可管理、法務顧問を専門とするバウンダリ行政書士法人の代表。飛行許可申請をはじめメーカー支援、登録講習機関の開設やスクール運営、事業コンサルティング、空飛ぶクルマなど支援の幅を広げ日本屈指のサポート実績を誇る。2025年のドローン許認可対応案件は10,000件以上、登録講習機関のサポート数は200社を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」や公式LINEを開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信している。