2023.08.07
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2024.06.28
2024年6月10日に、国土交通省航空局より「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」が改正されました。
この「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」は、実は2015年12月の改正航空法によりドローンを飛行する際に許可・承認が必要になったのとほぼ同時に制定されたもので、これまで何度か改定されてきましたが、今回は特に大きな改正となったことにより注目されています。
この「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」は、ドローン飛行許可申請の審査等の行政事務を行う際に航空局としての統一した考え方を示しているもので、今回の改正でも行政書士やドローン運航者と航空局との間で明文化されていなかった”最新の共通認識”が追記されました。つまり、飛行許可申請や飛行に必要な法律ルールについての専門用語を正しく解釈するためにまとめたものになります。
バウンダリ行政書士法人では、より安心・安全な運航を行っていただくために、この「無人航空機に係る規制の運用における解釈」の全文を読んでいただき、あらためてドローン飛行の運用ルールについておさらいしていただくことおすすめしています。
そこで今回は、多くのドローン飛行に該当するルールや、とくに重要な項目をピックアップしてわかりやすく解説していきます。
風速5m/s以上の空域では飛行させないことは航空局が作成した「無人航空機 標準飛行マニュアル」にも記載されていることは、日ころから飛行許可申請手続きを行い、飛行マニュアルに基づいて安全運航を行なっている操縦者や安全管理者であればご存知でしょう。
なお、バウンダリ行政書士法人が提供するオリジナルの「飛行マニュアル」では、各メーカーが定める機体ごとの耐風性能の限界(最大風圧抵抗)まで飛行させることができるように作成されています。
例)最大風圧抵抗:DJI Mini 4 Pro は10.7 m/s、DJI Mavic 3 Pro/DJI Air 3 は12 m/s
今回の解釈文では
「風速においては、離着陸場所の地上風及び飛行経路上の各高度帯に おける風向風速変動を確認すること」航空法第 132 条の 86 関係【飛行の方法】 (2)③
と記載があるように、風速や風向においては地上だけではなく高度変化にも注意して飛ばす必要があります。
地表面の風速については、市販されている風速計/風量計で計測することができますが、明文にある「各高度帯」で確認するにはどうすればよいでしょうか。
まずは気象アプリ「Windy.com」を活用する方法があります。アプリ内では、地表面だけでなく標高も設定してリアルタイムの風速環境を検索できます。
またDJIの機体 の場合、おおよそ風速13.6m/sになるとアプリに強風警告が表示されるため、警告が出たら速やかに飛行高度を下げたり着陸したりするなどの対処ができます。
さらに、アプリに搭載されている「姿勢インジケータ」機能を活用し、機体の水平飛行速度が表示されている場合は、強風の環境下にあるため機体がふらついている指標として確認するのもおすすめです。
目視外での飛行は特定飛行に含まれるため、事前に飛行許可申請が必要になります。今回の解釈ではこの「目視」の範囲内はどこまでなのか具体的な状況が記載されました。
「目視」とは、操縦者本人が自分の目で見ることをいうものとする。このため、補助者による目視は該当せず、また、飛行状況を専らモニターを用いて見ること、また双眼鏡やカメラ等を用いて見ることは、視野が限定されるため「目視」 にはあたらない。 なお、安全な飛行を行うためにバッテリー残量を確認する目的等で無人航空機から一時的に目を離し、モニターを確認する等は目視飛行の範囲内とする。 (航空法第 132 条の 86 第2項第2号)
上記のとおり、双眼鏡やカメラ等を用いて機体を見ることは「目視外」になります。また、モニター上でバッテリー残量をはじめ飛行距離や高度、各種エラーの有無など、安全な飛行を行うためにモニターを一時的に確認することは「目視内」になります。
ただし、自動車のカーナビを一般道路よりも高速道路で “チラ見”すると事故リスクが高まるのと同じように、ドローンの飛行スピードが速い状態でモニターを確認すると衝突・墜落する危険があるため注意が必要です。
催し場所上空での飛行も特定飛行となり、飛行承認申請が必要になります。イベントなど多数の人が集まる場所でドローンを飛行すると、万が一墜落した時に大惨事となるリスクが高いということは皆さんも想像できるでしょう。
それでは、どんな状況が「催しもの・イベント」申請が必要な飛行に該当するのか、今回は具体的なシーンが明記されました。まずは「催しもの・イベント」になる例を確認していきましょう。
航空法第 132 条の 86 第2項第4号に明示されている祭礼、縁日、展示会 のほか、プロスポーツの試合、スポーツ大会、運動会、屋外で開催される コンサート等のイベント、ドローンショー(自社敷地内、無人の競技場内 等、第三者の立入管理措置が行われていることが明白である場所での事前 練習や企業向けの配信用撮影等を除く)、花火大会、盆踊り大会、マラソン、 街頭パレード、選挙等における屋外演説会、デモ(示威行為) 等
挙げられている事例から、ドローンの法規制上の「催しもの・イベント」の定義は、特定の場所や日時に開催され「多数の者(第三者)の集合する催し」 であることがポイントになります。
また実例に「ドローンショー」が追加されたのが印象的で、近年ドローンショーの実施が増えており社会的にも注目されていることが反映されているのかもしれません。
いっぽう「催しもの・イベント」にあてはまらない事例として、以下が記載されています。
第三者に関することに示す関与者のみが参加する催し場所上空の飛行、自然発生的なもの(例えば、混雑による人混み、信号待ち) 等
「関与者のみ」であれば該当しないことが明記されているため、例えばプライベートな集会もドローン法規制の「催しもの・イベント」にはならないと解釈できます。
例えば…
だだし、日常の情報源になっているSNSやプレスリリースで事前に場所や開催時間などを投稿し、イベントや集会の内容を一般公開することによって関係者ではない人も見物に来る可能性があります。その場合は”後天的に” 「催しもの・イベント」になってしまうため注意が必要です。
なかには「催しもの・イベント」を定義するのに難しい飛行状況もあります。その際は独自で判断せずに航空局をはじめ専門の行政書士に事前に相談することをおすすめします。
なお、ここで説明している「催しもの・イベント」の事例は、あくまでもドローンに関する航空法上の定義に基づいているものであり、ドローン以外の事例については定義が異なることも理解しておきましょう。
「物件の投下」も特定飛行にあたります。下記の明文に記載しているように、物を積んでドローンを飛ばして投下した場合、地上の人や建物に危険がともない、機体自体もバランスを崩して墜落してしまうリスクが高いため「物件の投下」をする際は、安全性を担保するための飛行承認申請が必要となります。
飛行中に無人航空機から物件を投下した場合には、地上の人等に危害をもたらすおそれがあるとともに、物件投下により機体のバランスを崩すなど無人航空機の適切な制御に支障をきたすおそれもあるため、航空法第 132 条の 86 第2項第6号により、物件投下を禁止することとしたものである。
ここで、水や農薬等の液体を散布する行為は物件投下に該当し、対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為や輸送した物件を地表に置く行為は「物件の投下」には該当しません。
ただし、飛行中のドローンから地上にいる人に対して直接物件を渡す場合と、ドローンから投下するのではなく地表に物件を置く場合は「物件の投下」にならないことが追記されました。
ドローンの飛行においては、機体自体の安全性だけでなく万が一落下した際に、人やモノへの損害を最小限に抑えられるよう対策をとっておくことも重要となります。
そのひとつとして、飛行エリアの地上に第三者が侵入しないよう「立入管理措置」を設定しておくことが義務付けられています。飛行許可申請(DIPS2.0)のシステム上でも、どのような「立入管理措置」を講じるかを申告するようになっているのはご存知の方も多いとおもいます。
「補助者の配置、立入りを制限する区画の設定その他の適切な措置」としている。補助者の役割については、例として監視及び口頭警告などがあり、また、第三者の立入りを制限する区画(立入管理区画)の設定については、飛行させる無人航空機の落下分散範囲も考慮しなければならないところ、当該区画の範囲を明示するために必要な標識の設置等が必要となるが、関係者以外の立入りを制限する旨の看板、コーン等による表示などの措置が必要となる。
補助者を適切な場所へ配置し、看板やコーン等によって立入管理区画を設定する際は「落下分散距離」も考慮する必要があると明記されています。
この「落下分散距離」は、機体の重量をはじめ進行方向や速度など機体の作動状況、風速など、さまざまな環境要因によっても異なります。操縦者や安全管理者は、ドローンが墜落した状況を充分にシミュレーションし、第三者に接触しないよう予測しながら適宜設定する必要があります。機体メーカーが落下分散距離を示している場合は、それに従いましょう
また、レベル3,5飛行で補助者を配置せずに目視外飛行を行う場合は、機体に搭載されたカメラを活用し、進行方向の飛行経路の直下とその周辺への第三者の立ち入りがないことを確認することで、立入管理措置が行われているものとみなされます。
それでは「第三者」とは、具体的にはどんな人が当てはまるのか?
この頻出する「第三者」についても明記されており、「第三者」か否かは、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与しているかどうかがポイントになります。
「第三者」とは、無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与していない人のことです。ただし、以下の①や②に当てはまる場合、つまり無人航空機の飛行に直接的又は間接的に関与している人は「第三者」にはなりません。
①無人航空機の飛行に直接的に関与している者
操縦者、現に操縦はしていないが操縦する可能性のある者、補助者等無人航空機の飛行の安全確保に必要な要員
②無人航空機の飛行に間接的に関与している者
飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち、次のいずれにも該当する者
a)操縦者が、間接関与者について無人航空機の飛行の目的の全部又は一部に関与していると判断している。
b)間接関与者が、操縦者から、無人航空機が計画外の挙動を示した場合に従うべき
明確な指示と安全上の注意を受けている。なお、間接関与者は当該指示と安全上の
注意に従うことが期待され、操縦者は、指示と安全上の注意が適切に理解されていることを確認する必要がある。
c)間接関与者が、無人航空機の飛行目的の全部又は一部に関与するかどうかを自ら決定することができる。
以上の「第三者」の定義をふまえて「第三者上空」ついても明記されています。
「第三者上空」とは、「第三者」の上空をいい、第三者が乗り込んでいる移動中の車両等の上空を含むものとする。
したがって自転車、自動車やバスなど移動する乗り物の上空も「第三者上空」に含まれます。
ただし「レべル 3.5飛行」として一時的に移動中の車両等の上空を飛行するときは、「第三者上空」にならないという例外もあります。
「第三者」が、移動中の車両等(無人航空機が当該車両等に衝突した際に当該第三者が保護される状況にある場合に限る。)の中にある場合であって、無人航空機が必要な要件を満たした上で審査要領5-4(3)c)カ)(iii)に規定される レベル 3.5 飛行として一時的に当該移動中の車両等の上空を飛行するとき。
「第三者」が遮蔽物に覆われず、無人航空機の衝突から保護されていない状況になった場合には、無人航空機が「第三者上空」にあるとみなされる点に留意すること。
自動車やバスに乗車している人(第三者)は、ルーフ(天井)に覆われており、ドローンが落下しても保護される状態のため、レべル 3.5飛行の場合は「第三者上空」から除外されるということになります。もちろんルーフがないオープンカーの上空は「第三者上空」となるでしょう。
またバウンダリ行政書士法人では、DJI製無人航空機の確認書提示開始にともない、DJI製品を使用したレベル3および3.5飛行の許可申請サービスを強化しドローン利活用を促進しています。ご興味ある方はぜひお問い合わせください。
以上、重要な項目はここでピックアップしましたが、あらためてご自身で特定飛行をはじめとする航空法やドローンに関わる各法規制をおさらいして安心・安全な運航を行なっていただき、さらなるドローンの利活用が発展することを願っています。
ドローンの飛行許可申請や法務についてお困り事や不明点がある際は、ぜひバウンダリ行政書士法人にご相談ください。ドローン法務のプロフェッショナルが、ドローン運用や事業をサポートいたします。
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。