2025.11.14
ドローン基礎知識
2025.12.19
ドローン業界の成長とともに、航空法をはじめとするドローンに関する法律やルールもアップデートされています。
また型式認証・機体認証制度や、操縦者の技能を認める国家資格「無人航空機操縦者技能証明」制度が始まって以来、ドローン飛行の許可・承認申請に関する手続の一部を簡略化する制度が約3年が経過しています。この2つの制度により、型式認証機として認可された機体も増えてきており、また国家資格取得者も着々と増加しています。
それらをふまえて、国土交通省でもドローンの飛行許可・承認の審査要領改正(2025年3月)によって申請手続の簡素化等を進めてきたことから、これまでの審査要領で許可・承認の申請手続の一部が省略可能になっていた「ホームページ掲載無人航空機」と「ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証」に係る運用が廃止されることになりました。
そこで、この記事では今回の改正についてドローン法務の専門家が詳しく解説していきます。
上述したとおり、今回の改正はDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)で行う飛行許可申請の手続き方法の一部が変更になることが主な内容になります。
したがって、本改正について理解を深めるためには、ドローン(無人航空機)に関するルールや飛行許可・承認の際に行われる審査内容を知っておく必要があります。ドローンの基本的な法律については、みなさんご存知の方も多いと思いますが、念のためここでおさらいしておきましょう。
航空法に基づき、ドローン(無人航空機)の飛行が規制されている空域や方法は「特定飛行」に該当します。
したがって「特定飛行」にあてはまる空域や方法でドローンを飛ばしたい場合は、あらかじめDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)を利用して飛行申請を行い、国土交通大臣の許可・承認を受ける必要があります。
特定飛行に該当する空域は4つあります。
これらの空域では、有人機との衝突リスク(エアリスク)と第三者が多く地上への影響が大きい場所(グランドリスク)の2つの観点から飛行を規制されており、ドローンを飛行させたい場合は、事前に許可申請をする必要があります。
また、空港等周辺は場所ごとに飛行可能な高さが異なり、飛行させる高さにより特定飛行に該当するかが変わります。空港等周辺でドローンを飛行させる場合は、空港等の管理者に「制限高さ」を確認し、必要に応じて申請手続きを行ないましょう。
特定飛行に該当する飛行方法は6つあります。
これらの空域でドローンを飛行させたい場合は、事前に承認申請をする必要があります。
特定飛行については、ほかのコラム記事でも詳しく解説していますので、知識を深めたい方はぜひご参考ください。
無人航空機の飛行は、そのリスクに応じて3つのカテゴリーに分類されます。
「特定飛行」に該当し飛行の許可承認・申請が必要となる飛行は、カテゴリーⅡ〜Ⅲに分類されます。本改正は、主にカテゴリーⅡにあてはまる無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じた上で行う飛行に関わっている内容になっています。
前述したカテゴリーⅡにあてはまる飛行許可・承認申請をDIPSで行った場合、国土交通大臣が審査要領に従って審査を行います。
審査の対象となる事項 は、おもに以下の4つになります。審査要領に定められたそれぞれの審査基準に適合するか否かを審査しています。言い換えると、申請する際に提示する事項も同じく以下の4つになるということになります。
この4つを審査した上で、航空機の航行の安全や、地上/水上の人・物件の安全が損なわれるリスクがないと認められると、国土交通大臣から許可・承認書が発行されます。
ここまででおさらいした特定飛行や飛行申請の許可・承認の審査のしくみをふまえて、今回の「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)」の改正(2025年12月18日施行)をわかりやすく解説していきます。
2022年(令和4年)に無人航空機の型式認証制度と技能証明制度が始まったと同時に、それらの制度に関連する既存の制度を3年後に終了するという旨が宣言されていたことが今回の改正の背景にあります。
それから3年後の2025年(令和7年)12月、国土交通省の宣言どおり審査要領の改正が施行されたことになります。本改正では、許可・承認の申請に関する3つの運用が廃止されました。
つまり、飛行許可・承認申請の審査基準となる「機体」「操縦者」「安全対策」の3つの事項について、審査で求められる資料の一部が対象外となることが、今回の改正のポイントになります。
それでは、この「機体」「操縦者」「安全対策」の3つの事項について、審査で必要な資料や申請方法がどのように変更されたのか、より具体的に解説していきます。
今回の審査要領改正により、飛行許可及び承認申請で資料の一部を省略することを可能としていた「ホームページ掲載無人航空機」の運用が廃止されます。型式認証機や機体認証機の場合はこれまでと同様に一部省略が可能です。

DIPS2.0での申請時には「無人航空機情報の登録・変更」画面で、機体の基準適合追加情報の入力が必要になります。
操縦者の技能を証明する保有資格として、これまでは「無人航空機の講習団体一覧及び講習団体を管理する団体一覧」に記載された講習団体等の講習修了者(民間資格取得者など)は、飛行申請時に求めている「申請書様式3及び無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性資料」の提出が不要でした。
しかし今回の審査要領改正により、前述した「ホームページ掲載講習団体等が行う技能認証」による一部資料の提出が省略される運用は廃止されます。つまり一部資料の提出が省略されるのは、無人航空機操縦者技能証明(国家資格)を保有する場合のみ有効となります。

DIPS2.0システムでは、申請時に「操縦者情報の登録・変更」画面で操縦者情報から民間技能認証の項目が削除されます。
今回の審査要領改正により、飛行許可・承認申請で安全体制を示す飛行マニュアルに関しては、「航空局ホームページに掲載されている団体等が定める飛行マニュアル」の使用が廃止され、今後は航空局が作成した「標準マニュアル」や自身で作成したオリジナルの飛行マニュアル等を使用することになります。
飛行マニュアルは、ドローンの安全飛行を確保するために必要な手順や遵守事項が記載されているガイドラインです。飛行許可申請の際に添付し、許可取得後もこのマニュアルを遵守しながら飛行する必要があります。例えば、ドローン運用の制約事項、点検 整備、操縦者の訓練、安全確保体制や緊急時の対応などが記載されています。
飛行マニュアルの記載内容を把握せずにドローンを運航し、気づかないうちに航空法違反になってしまわないよう気をつけましょう。
ドローン業界の発展と利活用の拡大とともに、飛行許可申請は「申請の簡素化」と「審査の短期化」が進められ、申請しやすいDIPS2.0システムにアップデートされています。
申請しやすくなったいっぽうで、申請者自身が機体と操縦者の基本基準(追加基準)への適合性を確認する必要があります。したがって飛行許可申請手続きは、航空法はじめドローンの規制や機体の仕様について正しく理解していることが前提となります。
また申請者は、安全・適合性を証明する各種資料を用意し具備する義務があるため、充分な運用管理も求められます。
理解不足のまま申請してしまうと、知らないうちに航空法違反で罰則を受けるリスクが高まりますので注意しましょう!
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木 慎太郎
(Shintaro Sasaki)
行政書士として建設業などの根幹産業と関わり、ドローンに特化したバウンダリ行政書士法人を創設。ドローン運航に必要な包括申請から高難度な飛行許可申請、国家資格スクール(登録講習機関)の開設・維持管理・監査まで幅広く対応し、2023年のドローン許認可件数は10,000件以上を突破。
無人航空機事業化アドバイザリーボード参加事業者および内閣府規制改革推進会議メンバーとして、ドローン業界の発展を推進している。またドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。
YouTubeで日々ドローン法務に関する情報を発信中!「ドローン教育チャンネル」はこちら