ABOUT DRONE

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改正航空法は、ドローンが特定飛行を行う場合、あらかじめ飛行の日時・経路等を記載した飛行計画を、国土交通大臣(国交省航空局)に提出する義務を課しました。これが「飛行計画の通報」と呼ばれるものです。

ドローン飛行計画の通報とは?

「通報」というと、まるで緊急連絡のような印象がありますが、これは行政言葉を用いたに過ぎず、実際は飛行の前にあらかじめ所定のシステムにデータを登録することを通じて行う報告行為のことです。

通報(=登録)を受けた国交省航空局は、その飛行計画の変更その他必要な措置を指示することができ、また操縦者側が他のドローンの計画を知ることができるようになっています。

飛行計画の通報【国土交通省航空局】

発足の背景・経緯

ドローンの普及に伴い、航空機(有人機)とドローン、或いはドローン同士のニアミスとなる事案が増加しています。

飛行許可承認さえ取得すればあとは自由な飛行ができる、そんな野放し状態のままでは、今後ますます増加するドローン飛行は間違いなく空の安全を脅かすことになり、いずれ大惨事を招いてしまい、ドローン産業の健全な発展にも支障が生じます。

このような状況を踏まえ国交省航空局では、航空機とドローン及びドローン間の安全確保のためには、双方で必要となる飛行情報の共有が不可欠と判断しました。

そこで、飛行計画や航空機の位置情報が共有できるシステムを構築し、ドローンの操縦者がこのシステムに自身の飛行に関する情報を登録することを義務付けました。これが飛行計画通報ルール発足の経緯です。

目的は衝突の未然防止

飛行計画通報の目的を一言で云うと「衝突の未然防止」です。

  1. 各々の操縦者が特定飛行を行うにあたって
  2. 自分の飛行計画を他のドローンと重複させないために
  3. 事前に飛行に関する情報を登録し互いに共有し
  4. 他のドローンの飛行の状況等を把握する
  5. これによってドローン同士の衝突を未然に防止する

これが目的です。

この目的に照らせば、操縦者側に確実に通報してもらうことが不可欠となります。これを担保するために、通報を怠った場合の罰則も設けられました。(飛行計画の通報をせずに特定飛行を行った場合、30万円以下の罰金)

前身の同類システムであるFISS(エフ・アイ・エス・エス)時代にはなかった罰則を新たに設け厳格化したのも、より確実なレベルで衝突の未然防止を図るという目的があるからと言えます。

航空法第百五十七条の十(無人航空機の飛行等に関する罪)

ドローン飛行計画の通報が必要がない場合もありますが、ご自身が飛行する場所によっては通報が必要になるので調べる手間が掛かったり、通報が必要が分からない場合もあるかもしれません。
バウンダリ行政書士法人は、全国対応で飛行場所の調査をしております。通報の仕方が場合は代理でも対応可能です。
初回無料相談を行なっておりますので、お気軽にお問合せください。

通報が必要なケースは「特定飛行」

この飛行計画の通報については、改正航空法で次のように明記されています。

無人航空機を飛行させる者は、特定飛行を行う場合には、あらかじめ、当該特定飛行の日時、経路その他国土交通大臣省令で定める事項を記載した飛行計画を国土交通大臣に通報しなければならない。

引用元:航空法第百三十二条の八十八(飛行計画)

つまり、飛行計画を通報しなければならないのは「特定飛行を行う場合」としています。

「特定飛行」とは、国土交通大臣の許可・承認が必要な空域・飛行方法での飛行のことで、判りやすく言えば包括申請や個別申請で許可をもらう「空港周辺・高度150m以上・人口集中地区・催し上空・目視外飛行・夜間飛行・人や物から30m以上・物件投下・危険物搭載」での飛行のことです。

更に、特定飛行ならば、飛行の許可・承認を受けるか否かにかかわらず通報する義務があるとまで云っています。これは、新たに発足した操縦ライセンス制度(操縦者技能証明制度)の資格保有者に許される「許可承認申請が不要となる特定飛行※」の場合でも、それが特定飛行である以上は必ず通報しなければならないということです。(※人口集中地区・目視外・夜間・人や物から30m以上)

特定飛行に該当する飛行【国土交通省航空局】

通報が不要なケース

裏を返せば、特定飛行に該当しない飛行については通報の義務はないということになります。ただし国交省側では、空の安全確保という趣旨から、特定飛行に該当しない飛行についても通報を行うことを奨励しています。

特定飛行に該当しても通報が免れるケースがあります。公的な要請により災害時等で飛行させるようなケースです。

国もしくは地方公共団体またはこれらの者の依頼により捜索もしくは救助を行う者が、捜索または救助の目的のために行う飛行については、飛行計画通報は要しない。

引用元:無人航空機の飛行計画の通報要領(4-(2)―b))

通報は国交省のシステムを使う

このような背景と目的を持つ飛行計画の通報は、電磁的方法(オンライン)で行うことと定められました。通報についての具体的な方法については国交省のHPに掲載されていますので一読をお勧めします。

無人航空機の飛行計画の通報要領

DIPS2.0

電磁的方法として使うシステムは、「ドローン情報基盤システム(DIPS) 2.0」と呼ばれるシステムです。
この「DIPSドローン情報基盤システム(DIPS) 2.0」は、ドローンに関して必要となる国交省への手続きについて、これまでバラバラだったシステムを統合したシステムです。

2022年11月にリリースされ「機体登録・飛行許可承認申請・飛行計画通報・事故報告・機体認証・技能証明」等のメニューで構成されています。

飛行計画の共有機能については、これまで「FISS」という独立したシステムがありましたがこのDIPS 2.0に置き換わっていて、その前にFISSで登録された飛行計画は無効となっているため、ご注意ください。

このように、ドローンに関する登録や申請の手続きは、今後このDIPS 2.0内にメニューの一つとしてオンライン化されていきます。飛行計画通報では、システム障害等で飛行開始前に登録できなかった場合の代替措置(エクセルシートの提出)は用意されてはいるものの、システム障害時は飛行開始後であってもオンライン登録するよう義務付けています。

飛行計画通報の頻度が高くなる操縦者などは特にDIPS2.0の操作に慣れておく必要があります。

ドローン情報基盤システム2.0

通報事項について

飛行計画で明らかにしなければならない「通報事項」とは次のようなものです。

特定飛行の日時、経路

  • 無人航空機の登録記号及び種類
  • 無人航空機の型式
  • 操縦者の氏名
  • 操縦者の無人航空機操縦者技能証明書番号
  • 許可又は承認
  • 飛行の目的、高度及び速度
  • 飛行させる飛行禁止空域及び飛行の方法
  • 出発地
  • 目的地
  • 目的地に到着するまでの所要時間
  • 立入管理措置の有無及びその内容
  • 事故等により支払うことのある損害賠償のための保険契約の有無及びその内容
  • その他参考となる事項

これらをひとまとめにして「飛行計画」と呼び、これを登録するためにDIPSの入力要領に沿って入力していくという作業になります。

飛行計画通報時の決まり事

前述の通り、飛行計画の通報の目的は衝突事故の未然防止です。この目的を果たすために、いくつかの運用上の決まり事が設けられています。

他の飛行計画との重複禁止

自らの飛行計画が他のドローンの飛行計画の情報(飛行日時、経路、高度の全て)と重複する場合は、飛行の中止又は当事者間で調整し、重複のない飛行計画の通報を行わなければなりません。従って、通報者は他のドローンの飛行計画の情報をこのシステムで確認しなければなりません。

この場合、他の飛行計画と近接・重複する場合は飛行計画の調整先がシステムの画面に表示され、他のドローンの操縦者との調整が可能となっています。

24時間以上は別途通報

目的地に到着するまでの所要時間は最大24 時間を登録の上限とし、これを超える部分については別の飛行計画として追加して通報しなければなりません。

同一団体で複数機を飛ばす場合は一括登録する

同一団体で同一空域の飛行を行う場合は、既に飛行計画を登録したユーザーによる一括登録を行います。飛行計画作成画面右下にある「その他情報」の欄を使い、同一空域で飛行させる機体の登録番号や操縦者情報を追加登録することで可能です。

「その他情報」欄を活用して補足説明する

一括登録だけでなく、「その他情報」欄は定型入力では満たせない補足説明に活用できます。正確な飛行計画情報や不具合などの事情説明等、コンプライアンス徹底の面から周知したい場合などはこの欄を活用し入力するようにします。

変更が生じた場合もこのシステムを使う

一旦通報した飛行計画を変更する場合には、変更しようとする通報事項について、通報システムを用いて通報すること。DIPSを使っての変更となります。

飛行計画変更の指示

通報された飛行計画での飛行が航空機の航行の安全や地上・水上の人や物件の安全を損なう恐れがあると判断された場合、国交省は、飛行計画の通報者または操縦者対して飛行計画の日時や経路の変更やその他の措置を講じることを指示し、操縦者はこれに従わなければなりません。

通報した計画通りの飛行

飛行計画の変更を指示された場合を除いて、操縦者は通報した飛行計画に従って飛行を行わなければなりません。ドローンの飛行中に航空機の接近を検知した場合に、画面上で航空機の位置情報等を表示し、注意喚起が行われるシステムになっています。

まとめ

機体登録やリモートIDの義務化も、機体認証や技能証明の制度化も、その狙いはドローンが社会の担い手として空を飛び交えるようになるための「安全飛行」の実現です。

これらの新ルール同様に飛行計画の通報にも、FISSの時代にはなかった罰則規定が設けられ、今後一段高いレベルの安全飛行を目指します。飛行計画の通報が一連の新ルールの中でも異色なのは、他のドローン(操縦者)との兼ね合い・調和を飛行計画の段階から求めている点です。

安全な空を飛行者共同で実現しようとしていく法律と手続きになります。 
   

監修者
バウンダリ行政書士法人
代表行政書士 佐々木慎太郎(Shintaro Sasaki)

日本屈指のサポート実績を誇る、ドローン法務のプロフェッショナル

飛行許可申請をはじめ登録講習機関の開設やスクール運営、監査実施、法務顧問、事業コンサルティングなど、ドローン事業を幅広く支援している。
2022年の年間ドローン許認可案件は5,300件、登録講習機関のサポート数は100社を突破。

ドローン安全飛行の啓蒙活動として、YouTube「ドローン教育チャンネル」を開設するなどSNSで最新の法律ルールを積極的に発信している。著書に『ドローン飛行許可の取得・維持管理の基礎がよくわかる本』(セルバ出版)がある。